「誘拐」04/街外れの駐車場

何時間寝たのか、ふと気付くと妙に静かだった。虫の鳴き声も聞こえる。 外を見ると駐車場に止まっているらしい。二人はいない。
僕が寝ていたので安心してトイレにでもいったのだろうか? そうだ、今のうちに逃げよう。もし見つかったらどんな目に合うか分からない、 そう思うと心臓がドキドキしてきた。でも今逃げないともう逃げる機会はないかもしれない。
ドアのロックを外して、ゆっくりとドアを開ける。車外に下りて、ゆっくりドアを閉める。 ゆっくりだからドアはちゃんと閉まらない。しばらくドアをきちんと閉めようと努力したけど、 寝起きすぐの上に、はきなれない靴のせいもあって力が入らない。 とにかく逃げることが先だと思ってドアはほうっておく事にした。 とにかくこの車を離れて、20mほど離れたところにあるトラックの陰まで行った。
これでとりあえず逃げられた。でもあの二人が探し始めたらすぐに見つかってしまう。 もっと遠くにいかないと。では、どっちに逃げよう。建物の方に行くとあの二人がいるかもしれない。 道路の方を見る。歩道らしきものはあるけど、こんな所歩いてたらすぐに見つかっちゃう。 駐車場の反対側に、下に降りる階段がある。あそこを降りてみよう。 きっとほかの所へ行ける道があるはず。周りを見回し誰もいないことを確認して、 駐車場を駆けていく。かかとの高い靴で走りにくい。足音が聞こえてないだろうか。 階段までたどりついた。一応扉がついていたけど、よじ登れる程度だった。 スカートをはいた足でよじ登りにくかったものの、なんとか乗り越えた。
下に降りると確かに道があった。とりあえず戻る方向に歩くことにした。 もしかして追いかけてくるかもしれないと思って、急ぎ足で歩いた。 スカートに高いヒールの靴で歩きにくいけど、とにかく早足であるいた。 十分以上歩いたと思える頃、どうやら誰も追ってこないらしいと分かり、周りを見まわすと、 周りは道路の高架と工場しかない、人の気配が全然感じられない場所だった。


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