「鹿鳴館の肖像」:鹿鳴館を設計した英国人建築家のジョサイア・コンドルの物語。
「軽躁の気味あり」:越前藩の最高実力者・松平春獄に蟄居を命ぜられ4年間も
外部との交渉を遮断されてきた三岡八郎のもとに、土佐浪人・坂本龍馬がやってきた。大政奉還を成功させた竜馬は、
三岡に新政府の財政責任者になるよう頼みに来たのだった。
「銀座煉瓦始末」:三岡八郎こと由利公正は東京府知事として、銀座の耐火性を高めるため、
煉瓦街にすることを計画する。しかし、大久保利通の謀略により罷免されてしまう。その後、府知事となった大久保一翁の
物語。
「はたとせのちに」:エリーゼとの恋をモデルにした『舞姫』を書いてから、長い間
軍医として生活した森鴎外が、40代後半になってから再び執筆をはじめることになるまでのいきさつ。
歴史文学賞を受賞した表題作をはじめ計4作からなる短編集。
すべて明治時代の物語である。たった数年の違いでも幕末を明治は大きく社会が変わっているのがよく分かる。
また倒幕を目標に志士が団結していた幕末と違って、維新後は裏切りや権力の奪い合いなどドロドロした部分が顕著になって、
少々がっかりする。
小説としては、現在と過去が前後して書かれていたりして、事件の経過がちょっとわかりにくかった。
しかし、珍しい題材で、非常に興味深かった。
|