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高田崇史



『QED 百人一首の呪』 高田崇史(講談社ノベルス)
笑い0.5点 涙0点 恐怖0点 総合4.5点
 貿易会社社長の真榊は、邸宅中の壁に百人一首の大和絵を飾り、膨大な数の百人一首専門書を所有していた。そんな彼が正月のある日、 何者かに殺害された。そしてその手に一枚の札が握られていた。ダイイング・メッセージとも思えるその札は、果たして何を表しているのか? 事件の真相とともに、百人一首に秘められた謎が解き明かされる。

 第9回メフィスト賞受賞作。これは「小説現代増刊号 メフィスト」という年3回発刊されている辞書ほど厚みのあるミステリ雑誌が 主宰する賞である。どれほど知名度があるか分からないが、ミステリファンならほとんど知っていると思う。
 誰もが一度はやったことがあるであろう百人一首に、これほど大がかりでそして興味深い謎が秘められているとは思わなかった。 仮説の一つにすぎないとはいえ、正直、事件の真相よりも、百人一首の謎の方に驚いた。藤原定家が残した仕掛けに比べたら、 殺人事件なんて非常に些細なことに思えた。とはいえ、事件の真相の方も「そんなのあり?」と思わないではないが、非常にうまくできていて 面白かった。百人一首に興味ない人でも、長めのうんちくに我慢できれば、充分にこの面白さを堪能できると思う。


『QED 六歌仙の暗号』 高田崇史(講談社ノベルス)
笑い0.5点 涙1.5点 恐怖0点 総合4.5点
 明邦大学のある学生が卒論のテーマに「七福神」を選んだ。自分の妹に「七福神は呪われている」と言い残し、 取材に出かけた彼は取材先で事故死する。その後、明邦大学の関係者が連続して死亡した。そんな中、その学生の妹が、 事件以来タブーとされていた「七福神」をテーマに卒論を書くことを決めた。そして、その手伝いを頼まれたのが、 桑原祟と奈々であった。取材を続けるうち、七福神と六歌仙に隠された歴史の闇が明らかになっていく。

 『百人一首の呪』に続く歴史ミステリ。
 ほとんどが七福神と六歌仙の歴史と、そこに隠された闇や暗号などにページがさかれていて、殺人事件とその真相は、 おまけぐらいにしか感じなかった。それでも、密室やダイイングメッセージなど本格ミステリらしさも持っている。 ただ、日本史それも平安時代あたりの歴史に興味がないと、面白さは半減するかもしれない。逆に、そのへんの歴史に 詳しい人には、お薦めの一冊である。


『QED ベイカー街の問題』 高田崇史(講談社ノベルス)
笑い0点 涙0.5点 恐怖0点 総合4.0点
 シャーロキアンの組織「ベイカー・ストリート・スモーカーズ」の会合にさそわれた棚旗奈々と桑原崇。しかし、その会合でシャーロキアンの 一人がダイイング・メッセージを残し惨殺される。正典(ドイルの小説)の解釈を巡る意見の相違が動機なのか?そして、その正典である 「ホームズ譚」に隠された秘密とは何か?

 「百人一首」「六歌仙」の次は「シャーロック・ホームズ」。何とも意表をついたテーマだ。しかし、巻末を読むと、著者は中学生の頃に ホームズ研究家(?)に手紙を出しているそうなので、このテーマは、長年あたためてきたものなのかもしれない。
 前2作と比べると、身近でわかりやすいテーマだが、スケールが小さいというか、壮大さに欠けるというか、神秘的でないというか、 とにかくそれほど魅力的ではなかった。それにしても、本格的なシャーロキアンというのは、本当に本書のようなホームズ教の信者みたいなのだろうか。


『QED 東照宮の怨』 高田崇史(講談社ノベルス)
笑い0.5点 涙0点 恐怖0点 総合4.0点
 学校薬剤師の親睦旅行で日光に来ていた棚旗奈々は、東照宮で偶然、桑原・小松崎のコンビと出会う。彼らは、ある殺人事件について 調べるために来ていたのだ。その事件とは、リゾートホテルの経営者が、メッタ刺しにされ、所有していた「三十六歌仙絵」を盗まれ、 『かごめ』と言いのこして死亡した事件だった。

 例によって、大半が蘊蓄で占められている。今回の蘊蓄は、「東照宮」と「天海」などが中心で、興味のない人にとっては、全く 面白くない小説だろう。しかし、今回はいつにも増して蘊蓄が多かった気がする。怪僧・天海を中心にした歴史ミステリーを解明するには、 これだけの蘊蓄が必要なのかもしれないけど、もう少し推理小説の部分にもチカラを入れてほしかった。
 それにしても天海という坊さんは、ほんとに何者だったのだろう。本書を読んで改めてそう思った。時代小説を読むと、実は 明智光秀が生き残っていて天海になった、という設定のものがあるくらい謎めいた人物として扱われている。
 日光東照宮のディープなガイドブックとしても使えそうな一冊だった。  →天海


『QED 式の密室』高田崇史(講談社ノベルス)
笑い0点 涙0.5点 恐怖0点 総合3.5点
 学部も性格も全く違う桑原と小松崎がどうやって知り合ったのか気になった奈々は、二人にその経緯を聞いた。 すると二人は、知り合うキッカケになったある奇妙な事件について語り始めた。それは、「陰陽師の末裔」という男が 完全な密室で遺体となって発見され、疑わしいところはあったものの”自殺”と片付けられた事件だった。しかし、 「式神」を信じる孫の弓削和哉は、「式神」を使った他殺だと主張した。

 毎度のことといったら失礼かもしれないが、今回も推理小説としてはいまいちだ。 まあ僕は、QEDシリーズは推理小説としてではなく、(それが真実かどうかは別にして)歴史の闇や歴史の背後に 何があったのかを知るために読んでいるので、推理小説として面白くなくても別に構わないのだけど。
 今回、桑原崇は、陰陽師・安倍晴明にまつわる伝説を解き明かし、式神や鬼が実在したと語っている。 こじつけのようにも思えるが、説得力はあった。これを読むと、ここ数年ブームになっている安倍晴明に対する 見方が変わるかもしれない。


『QED 竹取伝説』 高田崇史(講談社ノベルス)
笑い0.5点 涙0.5点 恐怖0点 総合3.0点
 奥多摩の山の中に位置する織部村。そこには死亡事故が相次ぐ「魔のカーヴ」がある。運転手の多くは、カーブ近くに群生している 竹が光ったと証言していた。その織部村では、笹姫様と呼ばれる神様が信仰されており、「笹姫手毬唄」という唄が存在する。そして、 織部村でこの唄に見立てたかのような殺人事件が発生。桑原祟は、事件の本質を解き明かすべく、「竹取物語」の真実から 「かぐや姫」の正体にまで迫る。

 日本人なら誰もが知っている作者不詳の昔話「竹取物語」。今回はそれを徹底的に読み解き、作者の正体やかぐや姫の正体、 そしてこの物語に秘められた語られぬ歴史を解明している。いつものごとく、「言葉」に着目して、強引とも思える論が展開していく。 まあ、「言霊」という信仰に近いような思想が広まっていた時代に書かれた物だから、何か裏の意味が隠されているというのも 納得はできる。
 毎回、歴史の謎解きがメインで、殺人事件がおまけのようなこのシリーズだが、今回もそれは同じ。ミステリの部分に、 面白さや驚きの結末を求めて読んでいるわけではなく、祟のうんちくと歴史の謎解きを期待して読んでいるので、 僕としてはミステリとして平凡でも構わないけど。


『QED 龍馬暗殺』 高田崇史(講談社ノベルス)
笑い0.5点 涙1.5点 恐怖0点 総合4.0点
 幕末フリークの妹を連れて、仕事のために高知県を訪れた棚橋奈々は、後輩の全家美鳥に招待されて、高知の山奥にある蝶ヶ谷村を 訪れた。そこには、同じく美鳥に招待されていた桑原祟が先に到着していた。しかし、折からの嵐による土砂崩れのため、 麓への一本道が塞がれ、祟らは人家が四軒しかないその村から出られなくなってしまう。そんな嵐の中、殺人事件が 起こってしまう。

 坂本龍馬の暗殺の真相に迫るというテーマがとても良かった。でも、今までのシリーズと違って、結構知っている ことが多かったので、あまり新鮮味や驚きはなかった。
 それにしても今回は、かなり登場人物が薄かった気がする。蝶ヶ谷村に住む人はみんな、珍しい名前なのに、 全然、人物像が浮かばないし、関係図も思い描けなかった。まあ、ミステリとしてはあまり意識して読んでないせいも ある。それにしても、犯人が明かされたときに、これってどんな人だっけ?という状態になってしまったのは さすがにまずい。次回は、もう少しミステリとしてちゃんと読まねば。
 嵐で外界と断絶され陸の孤島となった村で起こる殺人事件というよくある設定で、しかもラストも よくあるパターンだった。でも、歴史の謎解きの部分が面白かったから、まあいいかという感じだった。


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