賢治と鉱物、宝石は切っても切れない縁で結ばれています。
本書を読めば、そのことがようく分かります。
本書の特徴は、とにかく美麗な写真が多いこと。
そして、鉱物の登場する賢治の物語や詩などが紹介されていることです。
物語などの引用に合わせてきれいな写真がすぐに見られるようになっているので、地の文を読んでいるだけよりも、ずっとずっと想像力をかきたてられます。
この本を読んでいると…こんなにきれいな言葉をたくさん知っていて、こんなにきれいな石たちをステキな物語に昇華させている作家はそうはいないだろうなとつくづく感じます…。
賢治がどんなにたくさんの石を物語に取り入れ、印象的に描いているか、一目で分かる索引も付いているので、とても参考になるし、興味深い本です。
もちろん、読み物としても、写真集としても楽しめるので、一粒で二度…以上おいしい!
私が驚いたのは、この本に記されている「賢治は蒐集欲というものを持っていなかったようだ」という一文でした。
賢治はきれいな鉱物との出会いを心にきちんと書き留めて、それをいつでも取り出せる人…だから敢えて集めようとは思わないのかもしれません。
賢治はこんなにきれいな言葉で表現できるのですから、それも納得してしまいます。
私などは…欲張りなので、ついつい気に入ったものは何個も蒐集したくなってしまうし、いつもそれらを眺めているのに、きれいな言葉に置き換えて表現することはできませんが……。
うう、まだまだ未熟だなぁ。
何はともあれ、鉱物ファンにも、賢治ファンにもこの本はお勧めの一冊ですよ。
2002-05-20