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柳家 小さん

柳家 小さん

とある日の池袋演芸場。 出囃子が鳴り始めると客席がざわつき出した。 「何があったのか」と思った人も、 めくりが返るとわかった。 出囃子は「序の舞」、小さんさんの登場である。

しばらく前から寄席のプログラムには名前を載せず、 ときたま予告なしに飛び入り出演していた。 そんなとき客はもちろん大喜びである。 小咄の二つ三つで下りることが多かったようだが、 演目は何でもよかった。 ただいるだけで身体からユーモアと暖かみがにじみ出ていた。 晩年の小さんさんは、 余分な脂やアクがすっかり抜け、 落語が羽織を着て座っているようなものだった。

いつかは来るとわかっていても、 実際に来るとやっぱり驚いてしまう。 仕事中にもかかわらず、 ブラウザに向かって「うそ!」と叫んでしまった。 昨年の正月から何度「うそ!」と言ったことか。 噺家担当の死神は最近働き過ぎである。 (2002-05-16)


寄席芸人似顔絵集