柳家 権太楼

柳家をベースに、 志ん生や枝雀のエッセンスを加えた権太楼さんの滑稽噺は文句なしに面白い。 それに加えて「子別れ」「文七元結」などの、 いわゆる人情噺も大熱演で堪能させてくれる。 東京の寄席においては、もっとも信頼できる噺家の一人だ。

しかし、権太楼さんはひとっ所に留まることを潔しとしない。 一度お蔵入りしたネタも、練り直してなんとか十八番にしようとする。 同じネタでも聞くたびにアップグレードしている。 ときには、 このネタをなんとかモノにしようとして、 もがいているような高座に出くわすことがある。 そんなの野暮の極みだという人もいるだろう。 そうかもしれない。 しかし、努力する姿を隠そうとしない権太楼さんを、 私はカッコいいと思う。 この人はこれからますますよくなる。 今の権太楼さんを見たことは、 まだ生まれていない落語ファンに、 きっとうらやましがられるだろう。

権太楼さんにひとつだけ注文がある。 どうか長生きしてください。 (2001-11-28)