「上野文庫」という、その筋の人には有名な古書店がある。 あるとき、そこで本を買ったついでにご主人に、 「なんだかんだいっても、 志ん生・文楽を見たっていう人にはかなわないんですよね」 と言ったことがある。 そうしたら、 「あんたは志ん朝・小三治を見たって言えばいいじゃないか」 と言われた。 それでずいぶん気持ちが楽になったものである。 志ん朝さんは今日亡くなった。 みんながこれからも寄席に通い、 そのときそのときの噺家を楽しむことが、 志ん朝さんがいちばん望んでいることだろう。 とはいえ、 私の記憶の中にある志ん朝さんの高座のひとつひとつは、 とても大事な宝物である。 志ん朝さん、どうもありがとう。 (2001-10-01) |