8月26日 −ベルギーGP二日目公式予選−



 朝。さすがに早寝しただけあって早起き。とりあえず昨晩からの続き、未だできていないリコンファームのためにセニョールとは駅で落ち合うことにし、一足先にリエージュ・ガルミン駅へ。駅に行けばクレジットカードの使える電話がある。セニョールは今日でチェックアウト、そして今夜はサーキットで野宿なので準備が大変なのだ。
 


 7時頃に駅に着く。いろいろと電話をかけてみるがアウト。全世界どこの中華航空の事務所も空いていない。どうなるんだリコンファーム。ちょっと発見だったのは、ベルギーからだと台湾に国際電話をかけるよりも、グアムにかけた方が安いということ。もちろん日本にかけるよりも安い。やっぱりグアムはアメリカ扱いだからなのか。   国際電話
ベルギー→台北:140BF/分
ベルギー→グアム:40BF/分


 結局、リコンファームはとれず。だいじょうぶなのか。不安で頭がいっぱい。こんなんではせっかくのベルギーGP観戦がぁぁぁ。
 そうこうする内にセニョールも駅に到着。セニョールは今日も駅の売店でイタリアのスポーツ紙「ガゼッタ」を購入。F1のページにはどうにも渋い表情のシューマッハ。よくもまぁこんな写真を撮っていたものだ。結局、昨日の結果はこのガゼッタを見て初めて知ることとなる。なんの為の生観戦なんだか
 昨日よりも1本早い8時10分発の鈍行列車で出発。要は1時間に1本なのであるが、本日から、7時台の10分発も増発したのだとか・・・って、1本だけかい(^^;)。噂によると、昨日の悪夢を招いた、スパ駅〜フランコルシャンサーキット(を経由してどっかに行く)バスも土曜日からは列車にあわせて1時間に1本発になる大増発ということらしい。これでとりあえず今日の足は安心だ。


 ペピンスター駅で乗り換えてスパへ。お客さんは昨日よりはまぁ増えたかな?という程度。1時間に1本のバスに全員が乗れてしまうくらいの人出しか居ない。じゃあ、ベルギーGP、客は入っていないのか?というとこれでもかの人入り。
 ・・・こちらの人間はグランプリサーキットに来るのに列車とバスでちんたらやってきたりはしないのである。おそらくは9割の人が自家用車で来ているようだ。
 サーキットに着いてみると、昨日は公式価格よりも安かったダフ屋価格は一気に公式価格の1.5倍に跳ね上がっていた。なんでも、オフィシャルチケットは売り切れているのだとか。うひゃ〜、昨日買っておいて良かった〜、セニョールに大感謝である
リエージュ〜スパ(往復):190BF

スパ〜フランコルシャン(バス):63BF


 とりあえずサーキットに入ってほぼすぐくらいの時間に予選前のフリープラクティスが始まるらしい。折しもちょうどオールージュへと向かう道すがらだったちんたとセニョール。とりあえず、フリープラクティスはオールージュまで見渡せる、パドック裏の金網にへばりついて立ち見観戦といういかにもブロンズチケット(自由席券)と言わんばかりの席(?)で観戦。
 相変わらずホンダの音は良いでんな、とビルヌーブの走りにほれぼれ。そして、聖地オー・ルージュをかけ登るF1にほれぼれ。壁と言っても過言ではない登り坂にへばりつくようにかけ登っていく車、車。車。ああ、これが、ずっと焦がれていたオー・ルージュなのだな・・・・。もう思い残すことは・・・無い(’あるけど)。
 フリープラクティスが終了すると、リコンファームが気になってできればゲート近くに居たいちんたは、この場に居残って観戦し、セニョールはセニョールで今晩の寝床確保という重大な課題があるので奥の方のコーナー・スタブロの方に行きたいという。そんなわけで、2泊3日に渡って一緒だったセニョールともここでお別れ。・・・つーか、こっちがかなりお世話になっちゃいました。感謝の言葉をいくら言っても言い切れないのだけど、「それじゃ」「じゃあ」とあっさりお別れ。


 さて、次は予選です。ちんたさんは先ほどと同じくオールージュまで見渡せる金網前なのです。周りには同じように立ち見の人、あるいは用意のいい人はビニールシートを広げていたり、ディレクターチェアで優雅に観戦している人まで居ます。ふと見ると、足下に実に具合の良い岩があります。これをマイ指定席とイタしましょう。一人になって不便なのは席取りができないこと。いったん離れたら、もう二度とその「席」が手にはいることは無いでしょう。そんなわけで、何十分後かわからないけど、腹が減ってもトイレに行きたくなっても我慢の子でこの席だけは死守しなくてはなりません。
 いつまで待つんじゃろう・・・?
 そう思って、斜め前でディレクターチェアに座っている老紳士に「次のセッションは何時からすか?」と聞いてみました。すると老紳士も退屈していたのか「1時間後だよ」と教えてくれ、次いで「お前はどこから来たんだ?」と聞かれました。

 「日本から来たんです」
 「日本か、私も日本に住んでいたことがあるんだ。」

 おや、まぁ。このボブさんというイギリス人の老紳士、横浜に20年ほども住んでいて、こちらに戻ってきたのは5年前なんだとか。じゃ、日本語はぺらぺら・・?と聞いてみると、彼は横浜にあるインターナショナルスクールの英語の先生だったため、日本語はそれほど喋れないのだとか。「こんにちわ」「ありがとう」とかその程度。だがしかし、彼の奥様は日本人なんだとか。

 「私のワイフの名前は『かじこ』って言うんだ」
 「かじこ・・さん?」
 「そう、そう、かじこ”さん”、かじこ”さん”」


 やるじゃん、おやじ。さすが20年住んでいただけあるな。
 話をしている内に、老紳士の連れ(孫?)が「サーキットを散歩してくる」といってディレクターチェアを残して出ていってしまった。老紳士はちんたに空いた席を勧めてくれる。大ラッキー、石の上にも三年の我慢の子の観戦から金網リングサイドのディレクターチェアでの極楽観戦に二階級特進です。ありがとうありがとう。何度もお礼を言って極楽極楽。
 それからも老紳士との会話は続きます。

 「私はクルサードが好きなんだけどねぇ・・・勝つのはハッキネンだろうなぁ、ポールもきっとハッキネンだよ。」
 「僕はアーバインかなぁ。彼は日本のF3000に参戦していたこともあったから日本では結構人気あるんすよ。おじさん、ジャガーの帽子かぶってますけど、アーバインは?」
 「いや、彼はアイルランドの人間だからね、やっぱり地元のクルサードだよ。でも、勝つのはハッキネンだろうね。」
 「でも、ここ数戦、クルサードはいい仕事してますよ?」
 「でも、ハッキネンだろうなぁ。」

 まるで、阪神ファンのように謙虚な老紳士。さらに聞いてみた。

 「スパ・フランコルシャンは毎年来てるんですか?」
 「いや、初めてだよ。シルバーストーン(イギリスGP)は毎年行ってるんだけどな。お前は日本GPは行ったことあるのか?なんて言うサーキットだっけ?」
 「あ、鈴鹿サーキットね。うーん、行ったことはあるけどもう8年前だなぁ。鈴鹿にはあのオールージュに負けないくらい面白いコーナーがあるんだぜ」
 「ほー、そうなのか。そりゃいい。シルバーストーンはこのスパに比べると、全然つまらないサーキットなんだよ」

 そうこう話をするうちに公式予選が始まる。予選が始まっても老紳士はマイペース。バッグから食べものを出してクッキーやらオランダパイ(中にソーセージのような詰め物)をわけてくれる。わーい、腹減ってたんですよ〜。


 公式予選が始まると周囲にはいきなり人が増え、金網にへばりつく人も出てきた。あ、こら、そこのデブ二人、そこに立つんじゃない、オールージュが見えないだろうが・・・もちろんそう言いたくても言えないちんた。

 「Hey,Ken,Ken・・・・」

そのとき、ちんたの肩をちょんちょんとつついて老紳士、なにやらひそひそ話の体勢。視界をふさぐ二人のデブを指さして、

 「SUMOU、SUMOU」

 ぶわっはっはははは、そのとおりだぁ。親父、だてに20年日本に住んでないな、特に右の方はヨコヅナ・アケボノにそっくりだ。二人でけらけら笑い合う。
 目の前をF1マシンがばんばん走る。場内アナウンスはあるのだけどさっぱりわからないちんた、とりあえずおやじさんに聞いてみよう。

 「今、誰がポール?」
 「いや、この放送、フランス語でさっぱりわかんねぇ

 二人ともだめだめ君である。おかげで二人ともさっぱり予選の展開がわかりません。そんなわけで、結局雑談。

 「うちにはさぁ、日本のグッズがたくさん飾ってあるんだぜ、刀とか甲とか・・・」
 「そ、そんなものうちにはないっす・・・・(^^;)」
 「日本のなんだっけ・・?『キモノ』か?あれはとにかくうちのワイフが20着近く持ってるんだ」
 「って、それめっちゃめちゃ金かかってるじゃん、かじこさんすげ〜」

 予選見ながらそんなことばっか話す二人。しまいには老紳士、

 「え〜と、ハシカミナサイ・・?なんていうだっけな?そうそう『オヤスミナサイ』」

 とかいって居眠りまでし始める始末。。。って、このV10エンジンが目の前を全開で駆け抜けている中、よく眠れるな。
 ・・・・そんなわけで、ポールは老紳士の予言通りハッキネン(だったらしい、後刻知る)。結局、ちんたさん、この予選の順位、何一つ知りません。・・・・何の為に生観戦に来て居るんだ(^^;)。これが、サーキットビジョンも無いブロンズ席(だから席じゃないって(^^;))の現実か。


 予選もおわったということで、とりあえずリコンファームが気になっちゃうちんたは(本当は居残ってても何も変わらないけど)、断腸の思いで国際F3000の決勝レースを踏んで、見ないまま変えることにする。帰り際に、さんざん世話になったボブさんにお礼。

 「Thank you,Thank you very much,Bob」
 「NO,No,No・・・・」

 ん?なに?

 「Bob-"SAN"」

 あはは、そうだった、サンキュー、ボブサン。カジコサンにもよろしく。


 さて、リエージュに戻るとしませうか。バスの時間知らないから、何分待つことになるかわかんないけど。しっかしまぁ、あっついねぇ、今日も。んでもって、やっぱりゲートからバス停までが遠いのなんの。おまけに登り坂なのである。
 15分ほど歩いてバス停に着くと、すでに10人くらいの待ち客。そのうち3人が日本人。聞いてみるとスパ行きのバスは40分待ちだとか。うえ〜、この暑い中?うえ〜。ちなみに予選の結果はこの日本人に聞きました。
 しかし、しばらく待っているとバスが。おや?よく見るとベルビエ行きと書いてある。う〜ん、まぁいいか、のっちまえ。暑さに負けて日本人共々バスに乗り込む。





フランコルシャン〜ベルビエ駅:104BF


 しかし、まぁ、自分も日本人なのでなんなのだけど、今回のベルギーGP、実にたくさんの日本人を見かける。セニョールにしても、昨日の新婚さんにしてもそう。声はかけていないけどリエージュのYHに他にもGPっぽい日本人が男女2人ずつくらい見かけた。んでもって、ここで一緒になった3人。別に日本人に会うのは嫌いじゃない、つーか、むしろウェルカムなので良いのだけど。
 聞いてみると、3人はそれぞれ別々の1人旅同士がたまたまあのバス停にいただけとのこと。が、3人とも今日はブリュッセルまで帰り、また明日、フランコルシャンまで来るのだとか。大変だねぇ・・・。鈴鹿で言うと豊橋のあたりから毎日通う感じ?ちんたは名古屋から通っている感じ。しかし、昨日の新婚さんといい、日本人はブリュッセル泊まりがわりと一般的なんだろうか。セニョールみたいに野宿という豪の者もいるけど。リエージュのホテルなんかはどこもいっぱいなんだとか。この週末にリエージュのYHを5泊も取れたちんたは超ラッキーとでも言うべきか。


 YHには4時半頃帰着。この夜から部屋チェンジなので新しい部屋の鍵をもらう・・・つーか、このYHのキーはカード式なので、持っているカードキーに新しい部屋番号をインプットしてもらう。
 とにかく、今夜は夜の内になにがなんでもリコンファームを取らなければならない。すでに駅でこれでもかと言うくらいにテレホンカードも購入してある。とりあえず、夜の決戦に備えて、シャワーを浴びて寝る(なかなか不安で寝付けないけど無理矢理、寝る)
ベルギーのテレカは200BFと500BF。他に暗証番号式のプリペイドカードもある。


 夜9時頃に起きる。すでに同宿者も部屋に入っている。おや?女性もいる?なぜ?
 ま、いいや、そんなことよりリコンファーム。果たしてつながるのか。

 1回目。「ただいま混み合っております、そのままお待ちください」
 国際電話で待てるか、あほたれ〜
 2回目。つながるも料金不足で途中で切れる。うっそ〜。
 3回目にしてやっとちゃんと繋がる。もう、とにかくお願いするように、拝み倒すようにリコンファーム。最初、どこからかけてきてるのかわからなかったらしく、ベルギーからと聞いてびっくりしていた。しょうがないじゃん、在欧の事務所は全部お休みなんだからよ。しかし、アムステルダム発の飛行機のリコンファームをグアムでというのもなかなか妙な話。

 二日に渡る懸念事項であったリコンファームが取れ、一気に肩の荷が下りる。あ〜航空券ぱぁになるかと思ったぜ。
 喜び気分でスキップで部屋に戻る。改めて見ると、今夜の同宿者はオーストラリア人若夫婦二人と石川県から来た日本人大学生一人。オージーは明日、ブロンズながらも良い席を取るために朝一番の列車で行くという。懸案事項もなくなったちんたさんもこれにのっかり一緒についていくことにする。オージーも快く、「OK、一緒に行こうぜ」とのこと。
 とにかく心配事が無くなったちんた、リコンファーム祝い(普通祝うか、そんなこと)に、大学生君を連れて一杯ひっかけようということで本日で三日連ちゃんとなるケバブ屋へ。もう店員に顔を覚えられてしまったので「お前、今日も来たのか!?」と笑われる。今日はビールだけね。缶ビールをもらう。

 はぁ、明日は決勝だぁ。


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