8月24日 −アルデンヌ・サイクリング−

 ゆったりと朝朝食をゆっくり取って、カシオペア開けて金銭管理を確認してみたり、記録を付けてみたり。同室の自転車旅。行中のオランダ人おじさんは前日200km近い走行(しかもヒルクライム付き)だったにもかかわらず、本日も180kmの道のりを走るとか。方向的には何日か後のちんたも距離は別として同じような方向に向かうので、いろいろとルートを聞き出して参考にさせてもらった。
 今日は移動は無いのである。なんてったって前日の23日から27日まで5泊分の宿をここリエージュで確保してしまったのだから。 


 しかし、旅行もそろそろ終盤にさしかかってきたせいもあって、ここで自転車に乗らずぼけぼけと過ごすのはもったいない(この「もったいない」という思いが動機になるところがそもそも旅に貧乏性(^^;))。とりあえずリエージュの街の周辺をサイクリングと行きましょう。何が良いって、本日は重い重い荷物を縛り付けたり、それを載せたままヒルクライムをしなくって済むということです。さらに今夜の宿探しにやきもきすることもありません。これはこれでなんとなく楽しそうではありませんか。
 後ろに何も積まない空身で走るのはもう3週間ぶりのことか。やはり明らかに軽い、軽い。自転車を立てかけたりするときに手で扱うととくに軽く感じてなんだか不意に軽く感じてぶんぶん振り回しちゃうような感じだ。
 さて、本日のルートはだ。とりあえずリエージュの街を出てぐるっと走ってリエージュに戻ってくればいいや、くらいの気分でほとんど考えていません。ま、なんとかなるでしょ。
 リエージュの街は盆地なので川に沿っていく他はちょっとどこかに出かけるにもまずヒルクライムから始まります。もうどこから始めても坂。坂。おまけに斜度はそんなでも無いけどゆるゆるとなにげに長い坂。漫画「シャカリキ!」にあった「坂の街」のような坂がほぼ全部そろっていたり、眺めなんかがそっくりで、作者、実はリエージュをモデルにしたのではないか、等と思ってしまう。
 土地勘がないのは相変わらず。別に今日はどこを目指していくというわけではないのだけれども、変に交差点をあさっての方角に行ってしまいリエージュに帰還できなくなったら悲しすぎます。しかし標識に現れる地名と自分の頭の中のベルギー地図がどうやっても一致しないので何度も何度も止まっては地図を見、止まっては地図を見、ということを繰り返す。
 それにしてものどかだベルギー。どこまで行っても森と牧場・・・なのは相変わらずですが、やはりドイツの農村とはひと味違う眺め。全体的にドイツは黄色っぽい農地のイメージがあったし(ちょうど小麦の収穫期だった?)、ベルギーはやたら牧草地が多いせいか緑色の農地のイメージ。農地というか高原のイメージですね。そんな高原の田舎道。北海道でもこんなに大きな景色は無いぞ!?と思うような緑色の雄大な景色がどこまでも続きます。丘の真ん中を通る一本道をひたすら走る。 


 景色が絶品な一方で、ベルギーは・・・おそらくベルギーはと大きくくくっちゃって良いと思うけど・・・ベルギーはやたらに道が悪い。特に路肩が悪いので自転車なちんた、さらにロードで走るちんたにはとても走りにくい道になっている。とにかく路肩の痛みが激しく、ドイツなんかで見た踏みしめられた未舗装路なんかよりずっとでこぼこしている。道路補修とかしないのか?路肩だから別にどうでもいいのか?という感じ。ガラスの破片なんかも結構落ちてるし。もちろんベルギーでは自転車道などないので、とにかく路肩を走るしかありません。ガレているだけでなく狭い路肩、そして田舎なはずなのにやたらに多い交通量(しかも大型車が多い)。とにかく自転車にはめっちゃきっつい環境。もういつパンクしてもしょうがないと腹くくるしかない。だが一方で、そんな過酷な環境にもかかわらずやたらロードレーサーが多い。どういうこっちゃ?ドイツやオランダで見た(すれ違った)のより遙かにロードレーサーが多い。というか他に趣味で走ってそうな自転車を見ない。ちんたのように後ろに荷物キャリアなどを付けたエセロードレーサーなどいなくて、ほとんどすべてきっちりレーパン+ジャージで固めた練習仕様。確かにベルギーは偉大なレーサーも生み出した土地柄ではあるけれど、いくらなんでもこの環境で練習というのもマゾっ気満点という気がしないでも無い。
 お昼頃にナミュール着。ここまでだいたい70kmといったところ。ナミュール市街に入る直前がやたらに登り坂、下り坂が多くてこれを戻るのかと思うとぞっとする。できれば帰りは避けたいところだ。・・・とか思っていたのに、地図を見ながら帰り道を進むと、行きに通った坂をそのまま逆行する羽目になるちんた。なんでなんだー、どこで間違えたんだー、と頭を抱える。
 昼食はナミュール市街で。手近に最初に見つけたレストランに飛び込んだ。そういえば昼食をレストランに入って取るのは久しぶりかも。久しぶりなせいでやっぱりやたらに高く感じる。自転車に乗ってきた身としてはたとえ水でもなんでもかんでもお金がかかるのは辛い。本来、1リットルくらいがぶ飲みしてやりたいところだが、そんなことするとあっという間に7〜800円近く消費することになってしまう。へたれなちんたにはそんな勇気のいることはできない。ちなみにフランス語圏であるベルギーのこの辺り(他にドイツ語圏な地方もあるそうで)、レストランに入るとメニューはフランス料理でした。メニューが何がなんやらわからないので適当に「本日のランチ」を注文。旅慣れたようで一向に旅慣れないちんた。ちなみにフランス料理は今回の旅では始めて。運ばれてきたお皿はチキンとポテトのクリーム煮?まぁホワイトシチューのようなものでした。食べてみるとそれほどでは無いにしてもちょっとくどい。いかにもバターとクリームがたっぷりといったお味。これまで、旅行中「日本食が食べたい」とはかけらも思わなかったちんただけれども、仮にこういった料理を毎日食べていたらそりゃ旅行中に「お茶漬け食べたい〜」と思うのも無理ないかもしれん。 


 ナミュールからの帰り、上り坂の繰り返しに嫌気がさしたちんたは進路変更。脇道に入って活路を見いだそうとするが、思った通りには行かないもの。なんだかよくわからない小さな村に出てしまった。アップダウンはさらに激しくなり、伝家の宝刀リア28T登場となる。さすがにこんなところを自転車で走る日本人が珍しいのか、あまり多くはないけれども表に居る人たちがじろじろとこちらを見ている。むー、平らなところはないのかいなー?川沿いに足を向ける。川沿いならアップダウンは無いでしょうという目論見。川っぺりにたどり着いてみるとちょっとした自転車道もあるようだ。自転車道らしきものがあっても誰一人人の気配がないので果たして自転車で走ってしまって良いものかどうか迷うのだけれども、まぁいいや、だめならだめで、並行して一般道路も鉄道もあるようだし、行き詰まったら日和ればいいや(←よわぞう)。 


 結局、リエージュにたどり着いたのは夕方5時過ぎ。途中、いきなり道が自動車専用道になってみたり、歩道を走るとやたらにでかい段差に辟易したりと、ベルギーサイクリングにはあまり良い印象は得られなかったのだけれど、じゃあ、楽しくなかったかというとこれはこれでばりばりに楽しかったわけで、とにかく風景だけは絶品。んじゃ、もう一回行くか?と言われると、う〜ん・・・と唸ってしまうけれども(どっちやねん)。
 YHに戻ると、自分の部屋に今夜の宿泊者がすでに到着していた。肩の後ろまで髪を伸ばしたお兄さん・・・というかほぼちんたと同じくらいの年齢に見えるバックパッカー。日焼けした顔色と彫りの深い顔立ちからスペイン人かな?と思って「どこからきたんですか?(←英語)」と訪ねると「フロム、ジャパン」と答えられてしまった。「なんだ日本人なんですか(←ここから日本語)。」どこでもそうだったけど、いちおう日本人ぽくてもとりあえず最初は英語かなんかで聞いちゃうんだよな。しかしこの人の場合は8:2で日本人よりもスペイン人に見える。口には出しはしないが、心の中でセニョールと名付ける。

 とりあえずお近づきの印に・・・的にセニョールと飯を食いに出かける。昨日、あまりりーずなぼーなレストランが見つからなくてどうしたものか、と思っていたのだけど、セニョールとふらふら歩いていたら、実にYHに近いところにドネルケバブ屋を発見。ドイツ以来のドネルケバブ大好き君なちんたは異存無し。ベルギーくんだりでドイツ名物のトルコ料理食べるってのも無粋に過ぎないかとも思うのだけど、安いんだもん、ケバブ。ピタの形とソースと中に積めるサラダの種類をチョイスできる。ビールは缶ビールを売っていて、店の奥にいくつかテーブルがあるのでそこでうだうだと食べながら飲みながら・・・という感じの店らしい。
 そんなわけで、食べきれないほどの大きさのドネルケバブ、ちょうど山盛りにしたかき氷を崩落を恐れてどこから食べて良いのかわからない・・・みたいな感じで同じようにどこから食べて良いのかわからない大きさのドネルケバブをつまみながら、いろいろ聞いてみた。
 実はセニョールも会社を辞めてヨーロッパを放浪している口。が、ちんたのように3週間前からとかいうケチくさい放浪ではなく、もう年の初めから8ヶ月うろうろしているんだそうな。ベルギー、ドイツなどメジャーなところはおろか、「え?そこって紛争の真っ最中じゃないの?」と思うような旧東欧圏の国々まで、あとヨーロッパで立ち寄っていない国は2つか3つ・・・というところまで回っているらしい。ちんたから見ればうらやましいほどにベテラン。さすがに話を聞いているとおもしろいって言うか、参考になる。セニョールは移動は基本的にはバスなんだそうで、確かにいろいろなところで目にしたバスの広告を見ると桁違いに安い。で、彼はいろいろかけづり回りながら主としてサッカーとモータースポーツを追いかけているらしい。そう、要は彼も今日、ここ、リエージュに居るのはF1ベルギーGPをにらんでのことである。仲間仲間。しかし、ちんたが一ヶ月の旅の渾身の一発、唯一の散財としてF1をとらえているのに対して、セニョールはそこら辺手加減しません。サッカーとレースには惜しげも無く投資しているようです。当然のようにユーロ2000も何試合か観戦したとのこと。基本的にそういったスポーツイベントに併せてあっちをふらふらこっちをふらふらとしているようで、ベルギーGP以降の足取りは3日後くらいに発表されるチャンピオンズリーグの組み合わせによって決めるのだとか。なんともうらやましい旅である。ま、とりあえずは共通の話題として明日からのベルギーGP、そしてF1の話となるわけで、たった一つのドネルケバブと一缶のビール(しめて500円くらい)で4時間近く粘っていた私たちなのでありました。  さ〜て明日はベルギーGPだぁ。 


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