8月22日 −ライン川を離れて・・・−

 朝7時頃起床。旅に出始めてからすっかり早起きさん体質というか、きっかり6時間睡眠で目覚ましもなく起きるようになってしまっている。旅に出始めてから生活が変わったと言えば朝食を毎朝取るようになったこと。宿代に含まれてるもんな。「日本じゃ絶対、朝食なんか食わないのにね、こっち来てると意地になって食ってるよ」そんな話を何人もの日本人と話した。朝食はホテル・YHに限らずたいていのところはセルフサービスのビュフェなので、なんとなく食べないと損してしまうような気にもなってしまう・・・と言うのもわからないでもない。
 さらにちんたさん、この日から新たな壁をうち破る。フランクフルトのYHで筑波の大学生が「いや、それ、常識っすよ」と主張していた「朝食のパン、昼食用にお持ち帰り」である。なんとなく、これはやってはいけないのではないかとちんたの中の一つの壁であったのだけど、「常識」とまで太鼓判が打たれてしまったのでちんたさんもいよいよ朝食のパンとチーズを紙にくるんでヒップバックの中へ・・・・


   そうこうしているウチに、ロビーでK子ちゃんと会う。これから朝食なんだとか。食堂にもどって少しおつきあい。懸案であったサンダルを買い換えたは良いが、今日になってから問題が起こったのだとか。

「これ、色移りすんねん」

 靴(サンダル?)を脱ぐと足にはくっきりとオレンジ色が。ありゃま。
 


   彼女は今日もライン川沿岸をうろうろしながら、お目当ての美術館巡りを楽しむそうだ。ちんたは今日からライン川を離れて一路ベルギーへ向かう予定。さすがに、もう、一緒になることはないかな?

「長かったなぁ」

 どちらとも無くそんな感想。3日間とはいえ、ちんたも彼女も道中いろいろある濃い3日間だっただけに、そんな感慨は確かにある。コブレンツの大雨とか・・・。

「3日やで、今朝も入れれば4日やん、私の旅の半分にあんたがおったねんで」

 うう、うれしい言い方してくれるじゃん。確かにこちらもフランクフルトに戻ってからの後半戦から毎日顔を合わせているのだから。個人的にプラハがずぶずぶ(正確にはプラハ駅がずぶずぶ)だったので、フランクフルトからの日々がなかったら、どうにも旅が盛り上がらなかったである。
 


 とりあえず、お互いの出発の前に「地球の歩き方(ドイツ版)」を見せてもらったり(ちんた、ヨーロッパ版しか持っていないので大都市しかフォローできていないので)、メールアドレスなどを交換し、お互いのこれからの旅の無事を祈って、YHを出た。どうもね、ありがとね。 BBSを読んでいる人はおわかりだろうけど、このもらったメールアドレスも他の日記ともどもカシオペアの中で昇天されました


 さぁ、走るべ!

 本日は、というかこれから3日間のうちにベルギーはリエージュまで行ければいいだけ。ケルンからリエージュは概ね170kmくらい。一日で行けと言われるとちょっときっついけど、3日間ならば余裕の行程。つーか、二日で着いてしまいそう。とりあえず、40〜50kmくらい走ったところで果ててそこで宿を取っちゃってもぜんぜん支障がない、そんな感じです。
 とりあえずはリエージュの手前のアーヘンあたりを目指して西へ、西へ、です。


 ケルンはベルリンなんかに比べるとそれほど大都会というわけではないので、これまでやってきたように「都市は鉄道で出る」という技を使うほどでは無いのだけれども、自転車で出ようとしたらしたでやっぱり大変です。案の定、西に向かう道を一本間違えてリカバリーするのが大変。日本で言うと環7の外側に甲州街道で出ようとしていたら、間違えてR246を走っていた・・・みたいな感じ、って東京在住の人にしかわからないあまり意味のない例えですね、こりゃ。まぁ、そのリカバリーをはかるのに10数km走らなくてはいけなかった、と言うことです。
 でも、本日は、前述の通り、日程に余裕があるというか、もうどこに泊まることになってもOKOK、Let it be・・・という感じなので、ミスコースもあまりプレッシャーになりません。ああ、最初っからこういうふうに無理をしない日程を立てておけば、前半、あれほど追い立てられたような気持ちで走ることもなかったのだな、と、4週間目にして初めて気が付く・・・が、旅の序盤でそういう日程を立てるのはそれはそれで勇気いりますよね、特に自転車乗りには。
と言いつつも周辺のレバークーゼンなんかを合わせると結構でかい都市圏を形成しています


 ・・・しかし、それは良いにしても、なんだかどんどんへんぴな所に入ってしまいます。西へ向かう国道で行こうとしたら、「自転車通行禁止」の標識があったりして、そんなわけもあってさらに迂回、迂回を重ねていると、どんどん山の中に入っていってしまいます。変なところに出てしまいそうなこと、さらに「坂」、二重の意味でイヤな感じなのですが、一方では、ドイツ西部の森の中は心が洗われると思うほどに豊かな自然をたたえた森。これがケルン市街から20数kmにあるというのだから、やはり恐るべしドイツ。東京にたとえると(またかい(^^;))、ちょうど、国分寺のあたりに青梅があるような感じです。
 青梅を例えに出したので比べてみると、ドイツの森(道路があるくらいの森)は日本のそれに比べて、明るく、あっけらかんとした雰囲気があります。日本の場合はしーんとしているというかある種の荘厳さもあるのですが、今、ここで走っている丘はそれとは対照的な雰囲気。うーん、絵の具で塗るとしたら日本の森はふかみどり、ドイツのそれはきみどり・・・・うーん上手く言えない(^^;)。


 森に入ってしまったので周囲には食べ物屋がありません。しかし。本日はヒップバックの中にYHの昼食が控えています(おいこら)。丘を下った田園でとりあえず昼食。ほら、持ってきていてよかっただろう?と自己弁護。でも考えてみれば、この昼食には費用がかかっていないことになるんだよな。ちょっと嬉しい(せこい)。


 お昼過ぎ。たどり着いたのは、ケルペンという街。朝からどんよりとした天気で、天気がどっちに転ぶかわからないような感じだったのですが、このあたりからどぴーかん、サングラス無しでは目を開けていられないほどに日が照ってきました。
 さて、ケルペンと言えば、そう、ミハエル・シューマッハーの育った街であります(ついでにラルフ・シューマッハーの育った街でもある)。シューマッハーですよシューマッハー。思えば北海道の足寄には松山千春の家には大きな大きな肖像画が掛けられてあり、家の前は駐車場、そしておみやげ屋さんまであって観光バスが出入りしているような観光地になっていました。それを思えば、今や年間640億円、東南アジア諸国のGDPをまとめた額に等しい金額を一人で稼ぎ出すシューマッハー様の生まれ故郷、きっと平壌の金日成像もびっくりの大きな像が立っているのではないでしょうか・・・・
 ・・・と思ったのですが、ケルペンの街にはいるとまったくそんな気配はありません(あたりまえです)。静かに落ち着いた、それでいて活気も感じられる街。教会の鐘がリンゴンと鳴り響いています。うーん、シューマッハ兄弟が礼拝していた教会もこのあたりなんだろうか?どのあたりがシューマッハの家なのかさっぱりわかりません。ケルペンはどうやらこの週末(8月25〜27日)はお祭りがあるようです。折しもこの日は100kmほど西に行ったところでベルギーGP。シューマッハが勝つとさらに盛り上がるんでしょうか?


 ケルペンからアーヘンまでは、ずっと一本道です。相変わらず、両側にはどこまでもどこまでも農地が広がる風景が続いているのですが、長らくつきあってきたこのドイツの大地の長めも実質的には今日が見納めになります。さすがにドイツ西部では農地の連なりの中に工場がもくもくと煙を吐いていたりするところもあるのですが、それがまたたまにしかないために、遙か彼方、10km以上も手前から見えています(最初は何の煙だろうととても不思議だった)。自転車道をたどりながらゆるゆるゆるゆると進みます。日程に余裕があることもあって、てれてれ走るばかり。時速20kmすら出ないまま、たまに地元のママチャリおばさんに抜かされてみたりなんかして。


 アーヘンの街に入ったのは午後4時頃でした。地図で見る印象よりは遙かに大きな街。市街地の中心部にたどり着くまでにはかなりかかりました。アーヘンの街はホテルも比較的多く、多少予算的にも余裕があるので安ホテルならYHで無くてもそこに入っちゃっても良いかな?と何軒か尋ねて見ましたが、どこも80DM(4000円)以上します。さすがにベルリンと同じだけの宿代を払う気にはなりません。見るとアーヘンの街のホテルは軒並み三ツ星以上のホテルで、どこもお高いよう。こんな汚いなりのチャリダーが入って行くには気が引けます。ま、時間には余裕があるのでゆっくりと探しましょう。例によって何人もの町の人に聞きながらツーリストインフォメーションを目指します。ツーリストインフォメーションは街のど真ん中、「歩き方」にも載っているなんちゃら教会の前の広場のそばにありました。比較的しっかりした大きなツーリストインフォメーション。とりあえず、そこにお世話になる前に・・・とダメもとで電話をかけてみるとYHはまだ部屋があるという。それじゃあ、と言うことで本日はYH泊。そのまま電話で予約をとりました。「歩き方」には割と混んでいるふうなことが書いてあったのだけど、取れちゃいました。そんなわけでツーリストインフォメーションではそのYHまでの道を教えてもらい、地図をゲットしました。


いい年した奴が4000円くらいの宿で躊躇してんなよ、とは思うのですが。。。


 アーヘンのYHは町中から自転車で15分ほど。距離はそれほど無いのですが、アップダウンがちょっときつく、もう町中に戻るのはちょっとやだなぁ、と言う感じ。
 「歩き方」には「枯れた感じのYH」と紹介されていたのですが、どうやら改築したのでしょうか?真っ白の真新しい設備も最新のYHでした。部屋はとてもひろーい4人部屋。ロッカーも着いています。何よりも部屋の中にバス・トイレも付いていて、これがまた広いのなんの。汗でべとべとのチャリダーちんた、さっそくシャワー。フランクフルトでF子ちゃんにもらったお風呂セットも大活躍です。そして洗濯タイム、ほとんど着替えを持たないような状態で来ているので、マメに洗濯しないとあっと言う間に薄汚れてしまいます。
 さすがに、もう町中まで戻って飯を食う元気はなかったので、YHで食事。ゆえに本日はビール抜きです。ま、いいか、たまにはそれでも。本日の走行距離は約120km。とにかくトラブルフリーで一日走れたのが何よりの喜びです。

 いよいよ明日は長らくお世話になったドイツを出て、ベルギーに向かいます。


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