8月21日 −ライン下り(2)−

 前夜、嵐のような大雨と雷から明けて朝、ウソのように晴れ渡っています。しかし、ライン川沿い、天気は超不安定。今、晴れててもなんの保証も無いんだよな〜。
 朝食、同室のアメリカ人と同じテーブルでもそもそとシリアルをほおばります。このドライフルーツ入りのシリアルっておいしいなぁ。プルーンだっけ?頭が良くなるとかいうやつ。ちんたさん、他の人よりよけいに食べなくちゃいけませんからね、たくさんボウルに放り込みましょう。
 食事をとりながら、アメリカ人に昨日会った女の子先生の話をする。フランクフルトで一緒で、なんかこのYHでも一緒になったみたいなんですよ、彼女は船で旅してるのにね、と話をふると、

 「おお、そりゃ、彼女はお前のライバルだな。どっちが速く着いたんだ?」

 うおお、これだからチャリダーは(^^;)。すみません、わたくしへたれなもので船に負けてしまいました。
 そうこうしているうちにその先生も食堂に来た。同室らしい女の子二人(二人とも日本人)と一緒。やっぱライン川沿岸となると日本人多いのかな〜。この旅の前半ではさっぱり日本人に会うこと無かったのに。女の子と見るとすぐににじりよっていくちんたさん。聞いてみると、その二人は学生。今日まで一緒に動いていたけれども、今日からは別れて単独行動になるのだそうだ。二人とも(ちんた達と同じく)このYHへの丘の登りには参っていたようで「大変だった大変だった」と繰り返していた。 


 さて、本日の最初のお仕事は自転車屋行き。スペアのチューブラータイヤが残り1本とUNOを宣言されてしまったのでなんとか1つ増やさなければ。そして金銭的につらいけどやっぱサイクルコンピュータは買おうかな、と。

 YHのある丘のふもとに自転車屋があるのは昨日のうちに確認済み。結構大きな店。店に入ると、サイクルコンピュータもタイヤもそれほど苦労なく手に入りました。メーターは悩んだ末最も安いもの(25DM)のものを。いえ、高いのを買うかどうかではなく、そもそも新たに買うかどうかというところから悩んでいたのだから、お店の人にとっては失礼な話。
 で、お店でメーターは取り付けてもらうことにしたのだけど、ひと通りメーターをセットしてはぁ終わったね、と思うと、店の親父さんが今度はやおらリアタイヤを外し、スプロケットも外して何やらハブをいじり始めました。どうも、ちんたの自転車、あまりの整備不良っぷりにドイツ人のクラフトマンシップに火が付いてしまったようです。ベアリングを外してグリスアップ。それからふれ取り、ディレイラーの調整・・・。結局いろいろやってもらって、それでも工賃は1pfたりとも請求されません。これで、序盤以来ずっと抱えていた問題が解決・・というかずっとそんなトラブルを抱え続けていたちんたさんの方に問題ありまくり(^^;)。

 さて、あらためてスタート。前日に続いてライン川下り。ケルンまで行こうと幹線道路B9線を使うと80kmくらいで着くみたいなのだけど、川沿いに行くと2,3割距離が増えそうな兆し。地図上ではコブレンツからケルンまでを直線上に結んでいるB9線で行きたい、が、これがちょくちょく自動車専用道になって、自転車がオミットされてしまったりして、そのたびに脇道にそれたり、近隣の村を迂回したりしなくてはならない。そうしてうろうろやっているうちに道を見失って・・・。
 結局、さまざまな迷走の末、やはり川沿いに行くことに。距離はよけいにかかっても、川添いに走っていればケルン。
 行き交う船を眺めながら一路ケルン。ケルンの36km手前がボンなのだけど、そのボンの20kmほど手前からの自転車道は非常にわかりやすく、見事にオーガナイズされていた。ライン川は商用的にも重要な川なので、沿岸のあちこちに工場などが積み出しに使っていて、一般の人は入れない川っぺりも結構あるのだけど、そういうところの迂回路もすべて標識がわかりやすく設置されている。40kmくらい手前から常に「このまま進めばケルンだよ」ということを標識が示しているので、非常に安心感。
 お昼を過ぎた14時頃、ボンを通過。とても気持ちいい、緑に覆われた公園が川沿いに。本来ならベートーベンハウスやら有名な美術館がたくさんあるところのボン。しかし、ちんたさん走るばかりですべて素通り。「なんかいちいち自転車から降りるのがたるくってよ〜」という感じだったりするのだけど、考えてみればこれはかなり大きな本末転倒。
 結局、案内標識に助けられ、午後になってから一度も地図を広げることが無いまま、15時過ぎ。ケルン入り。こりゃいいや。ま、荒川もまっすぐ進めば葛西臨海公園や熊谷に行けるんだけど、たとえば道満近辺の右岸から左岸に移ったりするところの自転車専用の標識が完備されているような感じ。
 もちろん、宿も完璧。すでにボンに入る手前で電話で予約。「歩き方」を見ると夏には結構混んでそうな書きっぷりだったのだけれども、電話で予約するとすんなり。ぶらぼーぶらぼー。
 そんなわけで本日の走行距離は115km。ずっとサイクリングロードを走っていたこともあって穏やかな穏やかな道のり。そうそう、こういうのだよね、というか、前半からこういうのだったらどんなに楽だったことか(遠い目)。  


 YHはケルンの大聖堂を対岸に望む、川の近く。はぁ〜、疲れた、シャワーシャワー・・・とチェックインしようとすると、

 「あれ?」

 目を合わせた両方とも同時に気がついたよう。ロビーには今朝、コブレンツで一緒だった、今日から単独行動の女の子の片割れが座っているではありませんか。あらま〜。あなたも今日、ここなの?なんだかライン川沿岸、移動手段は違えど、だいたい同じようなところに吸い寄せられて来てしまうようです。この子もちょうどこれからチェックインするところなのだとか。ちんたの格好を見て「ホントに自転車なんですね〜」と感心している(このころはチェックインの際に強引にフロントまで自転車も持ち込んでいた)。

 「ここ、何書けば良いんですか?」

 と聞いてくるんで、教えてあげてみたり。おやおやちんたさん、ずいぶん偉くなりましたね、つーか、ちんたの方こそ旅の初心者なんじゃないんですか?という感じもするのだけれども、まぁここは一つ親切の人で行こう。往々にして、チェックインの際に書くシートには住所を書く欄には「Street」とか書いてあるので、よくわかんない人も多いらしい。ちんたさん、めんどくさくなって(日本の住所表記を英語で全部書こうとすると意外にめんどくさい)素直に「桜田通り,東京」とか半分ウソ半分本当のようなこと、つーか、そんな住所ねーよ、みないなことを適当に書いてお茶を濁します。
 とりあえず今日も一緒の宿になったのも何かの縁だねということでちんたさんさっそく飯に誘います。いや、まったくちんたさん余裕ですね、偉くなりましたですね、1週間前の惨めさがウソのようですねという感じ。
 とりあえず19時くらいに飯を食いに行くということにして、それまでシャワー浴びたり、近所をぶらぶらして現金を補充してみたり。
 YHに戻ると、後ろからポンと肩を叩かれる。

 「また同じやねんや・・」

 この、大阪弁。振り返ると・・・そこには先生。うそ?今日もここにお泊まりでございますか?フランクフルトから数えて3日目の同じ宿。なんで、行く所も交通手段も違うのにみんな集まって来ちゃうんだ〜?ケルンのYH、まるで集蛾灯のように日本人旅行者を集めています。
 ちょうど飯に出かける約束をしていた時間だったので、先生改めK子ちゃんも一緒に誘って食事へとケルンの街に繰り出す。ちんたさん本日両手に花。なんだか、旅の前半からは考えられなかったようなジャンピングチャーンスという感じです(意味不明)。 


 ケルンに来たらとりあえずケルシュ・ビールを飲もうというK子ちゃんのこだわりに従って(歩き方でも紹介されているおいしいビールなんだとか)、ケルシュのラベルマークの出ているオープンカフェにとりあえず陣取る。ちんたもちんただけど、とりあえず相手も両方とも関西から来た女の子、話が尽きない。とりあえず、三人とも共通のネタとして「コブレンツの激坂」があるだけに盛り上がってしまう。そういえば、「もうあかんねん」と言っていた靴はコブレンツで新調したらしくオレンジ色のサンダルになっていた。

 「それでもな、古い方の靴を捨てる時は悲しかったで、ごめんな、日本につれて帰れんでごめんな、て思いながら捨ててん。」

 う〜ん、なんだかわかるぞ。パンクしたタイヤ捨てる時、そんな感じだもんな。
 だんだん暗くなってきて、ちゃんと飯を食おうということで、河岸を変える。5分ほど歩いて同じようにオープンテラスの席を陣取る。ここで、ちんた、無性にむらむらとあるものが食いたくなってきた。ベルリンで懲りたはずのあれ。アイスバインである。ベルリンではあまりのボリュームに這々の体と言っても良いくらいの完敗を喫したアイスバイン。あれをどうにか今度は制覇してみたい。17DM程度と安いのを良いことに、女の子(先生じゃない方、名前は知らない、Aちゃんとでもしておこう)もだまくらかしてアイスバインを勧める。
 出てきたアイスバインは期待に違わずでかいのなんの。タダでさえ肉がでかいのに、さらにジャーマンスタンダード(?)として付け合わせのイモや野菜がこれでもかと皿に盛ってある。すでにAちゃんは食べる前から目を白黒。K子ちゃんにも手伝ってもらいながら平らげようとするもあえなくギブアップ。

 「なんか、こう、料理を食べてるって言うより、豚を食べてるって感じで・・・」

 ごめんね〜、女の子にこんなもの勧めるなんて鬼畜ですね〜。とか言ってるちんたも結構あっぷあっぷ。Aちゃんには「私の分も食べてください」と言われるも、そんな方まで手を出す余裕はまるでゼロ。

 「ドイツ人、こんなもの食ってたら大きくなるよ〜」

 とりあえず食後の三人の一致した見解。
 もう食べ過ぎおなかいっぱい過ぎで動けまへんねん・・・という感じなのですが、YHには戻らなくてはいけません。もう夜の11時。三人でライン川に架かる橋を渡りながらふ〜らふ〜ら。振り向くと有名なケルンの大聖堂がライトアップされています。K子ちゃん一生懸命写真に納めていました。うまく撮れたか?(^^;)。 


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