8月16日 プラハの休日

 朝、窓の外を見ると、ちょうど自分の部屋の前がちょっとした広場というかパティオになっていることに気がつく。教会の前の広場に近いことといい、やはり立地も一等地のようだ。結局、チェックインが21時過ぎと遅いこともあって、1泊2日ではやたらに広いスイートルームは使いこなせなかった。キッチンなんかも使ってみたかったんだけどな。新婚旅行なんかだと、この部屋で1週間過ごすなんてのもいいかもな。広さも設備も環境も十分以上のものがあるし。定価でも二人で4000ck(12000円)ならずいぶんお得じゃないだろうか。でもって食事の半分は自炊とかしてみてもいいし。それくらい腰を落ち着けて「住んで」みてこそ、初めてこの部屋の価値がわかるかもしれない。  


 とかなんとか言いつつ、ちんたさんは貧乏なので、早々に退散(もったいないのでチェックアウトリミットの11時までうだうだしていたけど)。まだプラハには滞在するつもりなのでとりあえず宿チェンジ。中央駅の前にあるらしいツーリストインフォメーションを目指す。明るくなってみればよくわかるもので、前日にはさっぱり見当がつかなかった中央駅にも意外とあっさりと到着。中央駅の前というか、駅前の駐車場の真ん中あたりにツーリストインフォメーションはあった。

「とにかく安い宿を紹介してくれ」

 とずいぶん恥ずかしいお願いをして宿を探してもらう。ふつう、日本人は海外に出たらジャパンマネーでプッシュプッシュだろう?と思うのだけど、そんなことする余裕が全くないところが情けない。いや、貧乏したくてしてるんじゃなくって、貧乏をせざるを得ないからしてるんだけれども、もうすぐ30歳みたいなおじさんが、それくらいの甲斐性しかない旅行をしているのが情けない。
 とりあえず、インフォメーションのお兄さんが紹介してくれたのは、1000ck/泊のシングルルーム400ck/泊のドミトリー。大きなつづらと小さなつづら。400ckの方は見ての通り値段が安い、しかし1000ckの方はシングルなのでセキュリティはしっかりしている。どっちにするかかなり悩んだのだけれど、とりあえず、前夜3000ckも使いこんでいるので安さ優先、400ckの部屋にする。インフォメーションから2泊分の予約を取ってもらって場所を教えてもらう。ここでおもしろかったのは、チェックインは宿に入ってからなのだけれども、宿の玄関と部屋の鍵はインフォメーションで受け取ること。どういう意味があるのかはよくわからないけど、とりあえず、今日明日の宿は確保した。やっぱり宿が確定すると一日のお仕事は全部終わったという感じで肩の荷が下りる。この点がやはりツアーなんかは楽ちんでいいな、と思う。  


 しかし、今日は、もう一つ、やっておきたい仕事がある。プラハには2泊するとして、その次の日にはそのまま夜行列車でドイツに戻りたい。そのチケットを中央駅で買うのだ。よくわからないので、とりあえず、英語と絵で紙に「Aug.18 プラハ→フランクフルト 大人1・自転車1」と書いてインフォメーションで旅程表を打ち出してもらう。そして、それを持って出札窓口へ。へへ、もう慣れたもんだね(ちょっと慣れるとすぐでかい口)。出札窓口のお姉さんが18日というところを今日の日付、16日として打ち出すミスもあったけれど、すぐに気がついてセーフ。ヨーロッパの出札窓口、意外に油断ならない。その意味でも乗り放題のユーレイルパスには利点があるということか。
 さて、切符もとれたので、とりあえず、そのまま、宿に向かいチェックイン。  


 12時とかなり早い時間であったのだけれども、インフォメーションから予約したのが良かったのか、とりあえずチェックインはさせてもらえた。自転車を裏庭に置いて、割り当てられた部屋に行く。2階の2号室が今晩から二晩お世話になる部屋。大部屋の中はロフトにがあり下に8個、上に2個のベッドがある。時間が早いためまだ先客はおらず、どのベッドを選ぶかは早い者勝ち。とりあえず下の窓際のベッドを選ぶ。困ったのはこの部屋、荷物置き用のロッカーが無いこと。ホテルの女将に言わせると「うちは入り口が一つだし、常に私が玄関をチェックしているから安全だ」とのこと。う〜ん、なんか違うような気がするんですけど、「安全だ」と言い切られるとそれ以上言い返しようもないので、まぁそうなのかな、と納得することにする。とりあえず、盗まれてまずいものだけはすべて持ち歩くようにする(今、思い返すとエアチケットは鞄の中に入れっぱだった)。あとは自転車用のチェーンを使ってベッドと鞄をくくりつけておく。  


 さて、曲がりなりにも落ち着いたので、ちょっと出歩きましょう。プラハの観光案内をすべて日本に置いてきてしまったので情報がありません。インフォメーションで観光地図も買ったのですが、すべて英語で、何がどうすごいのかさっぱりわかりません。しょうがないので、プラハで唯一知っている名所、カレル橋に向かうことにしました。プラハ中央駅を基点とするとホテルとカレル橋は正反対の方向にあります。とりあえず地下鉄で3駅ほどなので、地下鉄で。プラハには地下鉄もトラムもあって両方とも便利らしいのですが、トラムはいまいちどれに乗るとどこに出られるのかがわからず、結局、プラハ滞在中には1回も乗りませんでした(乗れませんでした)。しかし、町中でのトラムの存在感は大きく、そこここで走っています。それも結構なスピードで走っていて、もちろん踏切などはありませんから、油断して歩いていると結構びびったりする目に遭います。
 地下鉄を降りて、そういえば昼飯を食べていなかったことに気がつき、腹が減っていたこともあって、うろうろしたあげくにイタリアンレストランに飛び込む。パスタとビール。これでちょうど100ck(約300円)なのだから、何という国だ、ここは!という感じ。首都のそれも観光都市と言われるところでこの物価。パスタもビールも大好物なちんたとしてはとてもありがたい街であるとも言えます。  


 カレル橋だ〜と思って渡った橋が実はカレル橋ではなく、目的の橋は1本上流側の橋だと言うことに気がつき、対岸に渡ってからそちらの方に歩いて回る。と、カレル橋のたもとで意外な発見。

 インターネットハウスだ。

 足下にHDDとか置かれるととても踏めない隠れオタクなちんたさん、こういうものにはめざとく、かつ、緊縮財政中でありながらも、よよと吸い寄せられてしまいます。ついにここで世界をまたにかけたオタクへ。薄暗い店内には10台程度のマシンがあり、その半分くらいが埋まっています。特に期待していなかったのですが、日本語を読め、さらに日本語をタイプすることができるマシンもあるようです。ちなみに1時間120ck(約360円)ですので、だいたい日本と同じくらいの価格といえるでしょうか?それでも食事にかかる費用から考えると、チェコではずいぶんいい商売であることがわかります。ちなみにここはインターネットハウスであってインターネットカフェではありませんので飲み物の類は出てきません。とりあえず自分のHPを覗いたり、いつも回っている掲示板を巡回したり。とりあえず、犬が小便をするがごとく諸処に「今、プラハだよ〜ん」とマーキング。いったいなにやってるんだか。  


 カレル橋はとにかくすごい人混みで。そしてずらっと並ぶ土産物屋の列、列、列。なにやらお役所から許可証のような物をもらって営業をしているようです。売っている土産物の多くが「これってプラハ(チェコ)とどう関係あるわけ?」と言いたくなるような物だったりするのはまぁいいとして、わざわざプラハくんだりまで来て似顔絵を描いてもらわなくてもいいでしょうが・・・・と思ったりもするのだけれども、やはり商売は財布の口が緩くなった人を囲うのが基本です・・・ということなんでしょうか?  


 ホテルに戻ったのは夕方5時頃。ドミトリーには3人ほどの客がいた。今夜はこの人達と同室になるらしい・・・・が、この3人組、女の子が二人混じっているえ?いいの?ドミトリー同室で?女の子の方はまったくかまわないと言った様子で、夜になるとシャワーを浴びに行ってそのままTシャツ一枚、パンツまるだし大解放。とてもサービスがよいことこの上ありません。横にじゃまっけな男が一人居るからアレなんだけれども、こいつさえいなければ・・・と思うとか思わないとか。聞いてみると三人はザルツブルグから来たお友達三人組。今年はオーストリアも暑くって・・・なんてことを言っていた。ザルツブルグからプラハなら距離も400〜500km位でお友達と一緒に旅行にはちょうどいいのだろうか?日本人のちんたから見るとザルツブルグもプラハもそんなにかわらんのじゃないかとも思うのだけどそういうもんでもないのか。この男の子の方に欧州入り以来、ずっと懸案であったことをお願いしてみる。

 「爪切り貸してくれない?」

 もう欧州入り以来2週間、のびっぱなしにしているので爪もずいぶん長くなってしまった。いい加減どこかで切りたい切りたいと思っていたのだけれども爪切りを売っているところをついぞ見かけなかったので、延びっぱなしのままここまで来てしまった。男の子は快く貸してくれたのだけれども、これがいわゆるハサミ型のネイルカッター。こういうのがあるということは知っていたけれども、使ってみるのは初めて。さらに利き手じゃない左手でなんか扱えるんかいな?かなりぎごちなく爪をパチリパチリ。そうこうするうちにも女の子達は大解放のままサービス続行中で部屋の中をうろうろ。
 プラハの夜はなんだか落ち着かないままに更けていくのでした。  




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