8月11日 車輪よあれがベルリンの灯だ・・なんちて

朝。前日夜から干していた靴下の乾きが良くない。とは言っても、もともと靴下はこれ一足しかない(故に毎日洗濯)のでちょっと生乾きのまま履いてしまうしかない。
 前日、悪戦苦闘で確認した「朝食は8時までに部屋に持ってくる」は、その通りになりました(当たり前といえば当たり前)。暖めたドイツパンにハムとチーズとポットに入れたコーヒー、ヨーグルト。正直なところ、ここまでYHの食事でも毎朝毎朝ドイツパンで、なんかの本で「ドイツパンちょーうめー」というような記述があったり、そういえばハイジはクララの家に連れて行かれたときに「おばあさんに持っていってあげるの」と白パンを抱えていたりしてたのを思い出し、ドイツパンとはそんなにおいしいものなのか?と期待していたりしたのだけど、ここまで、実はなんだかたいしたことがなく、ドイツパンには少々飽きてきた頃だったのだけれども、暖めると実はおいしいということに初めて気がつく。あれを書いた人は毎日温かいパンを食べていたわけだ。部屋に持ってきてくれているのでTVなんか見ながら朝食。いや、何を言っているのかはほとんどは理解できないのだけどれども(なんか5日目に遭遇したTostedtのネオナチデモのことがまたニュースになっていた)、なんとなく優雅なキモチ。スポーツニュースは常にシューマッハの兄貴の方かサッカーの話。  


 9時にチェックアウト。ちょー快適だったので少し多めにチップを置いて出る。いつもの朝の儀式…とばかりに、納屋に行きタイヤに空気を入れていると、主人のアルムおんじがやってくる。「今日はどこまで行くんだ?」みたいなことを聞かれたので(ドイツ語なのでいまいちわからず)、「ベルリンだよ」と答える。そう、ここノイシュタットはベルリンまで約90km、いよいよ本日はベルリン入りである。横で興味深そうに覗いているアルムおんじ、なにやら自転車で旅行しているというのがいたく気に入ったよう。納屋にとって返し、奥でごそごそやっていたかと思うと洋梨を4つほど持ってきて「持って行け」と差し出してくれる。洋梨もさることながら、おやじのニコニコっぷりになんだかこちらまでうれしくなってしまう。出発してからも姿が見えなくなるまでずっとずっと手を振ってくれていた。  


 さぁ、一路、ベルリンへ。

 3日目となるB5線。とにかくこれをまっすぐ行けばいいのである。首都から90km離れるというと首都圏では小田原とかそのあたりか。周囲を見渡せば相変わらず農地に農地に農地しか見えないのだけれども、心なしか脇を通る車が増えている。10km、20kmと進ほどに少しずつ少しずつ行き交う車は増えてくる。ベルリンへの距離が近づくたびに「あ〜ここは東京で言えば大磯だよな」とか「平塚だよな」とかいちいち首都圏で換算してしまうわたくし。んでもって、「あ〜平塚くらいだったら、さくっと電車に乗っけちゃってもいいよなぁ」なんて考えも思い浮かぶ。おそらく平塚〜東京よりは安いんだろうし、自転車もそのまま乗せられるし、首都中心部直行だし…。
 まぁ、結局はそのまま自転車を漕ぎ続けるのだけれども、後から考えてみると、どうもこの「どうしても自転車で」というメンタリティが今回の旅をじわじわと苦しい方に追いつめていたような気がしてならない。でも、普通のチャリンカーならたいてい思っちゃうよな〜「いやいや、あそこまでは自転車で」って。実はもっと柔軟に鉄道を使えば行動範囲も広く、容易にいろいろなところに行けたのではないか、そう思ったりもする。  
で、結局こんな農地がまた続いたりして。この日、午前中はどうも天気がすぐれません。


 お昼頃にベルリンに入る。中心部まではまだ10km以上残っているのだけれども、いちおうベルリンらしい。東京で言うと(またかい)、23区に入った…みたいなもんだろうか。さすがにベルリンはでかい。もう、この時点になると鬼のように車の通りが多い。ここにいたって改めて自分が今まで走ってきたドイツはドイツの田舎だったのだな、と理解する。道もぐっと広くなり、周囲には高層の建物も建ち並び始める。しかし、「ああ、ベルリンなんだな」と一番感じたのは自転車道が復活したこと。なんだか自転車道に乗ると「ああ、西側に戻ってきたんだなぁ」と思う・・・というのは大げさか。自動車からのプレッシャーを受けずに走れるのはとてもしあわせしあわせ。しかしながら、ベルリンも中心部に近づくにつれ、自転車道はアスファルト舗装からタイル張り、そして石畳へ。む〜、ロードレーサーに乗っている自分としては妙にしゃれっ気を出さずにアスファルト舗装にしておいてほしいなぁ、なんて思うわけだ。石畳なのでとりあえず8km/h。   ベルリン入りした直後。なんとなく日本でいうところのニュータウンという感じの団地が続く。ベルリンに入ると同時に自転車道が現れ”西規格”に。


 ベルリンに入ってしばらく経った頃、雨に降られる。かなり激しい降りだ。ちょうどお腹も減っていた頃だし、目に入ったインビス(なんかハンバーガーとかホットドッグとか売っている屋台みたいなものの総称)に入り、ソーセージとパンとコーラの昼食。占めて300円くらい。とてもお手軽なジャンクフードなのにソーセージは日本ではほとんど見ることの無いような本格的なぶっとい大きなソーセージ。正確にはソーセージだけを売っていて、パンはおまけについてくる・・みたいな扱いらしい。「これくれ」とソーセージを指差すと「パンはいるか?」と聞いてくる。これだけでだいたいお腹いっぱいになってしまう。安くておいしくて。これがジャンクフードなのだからドイツとは食べ物に関してはつくづく幸せな国だと思った。
 30分ほどインビスでぼけーっとしていると雨が上がった。おお、どうやらインビス逃げ込み作戦はあたったようだ。ここまでたいていの目論見が裏目裏目に出ていたので、なんとなくこういう細かいことでもほっとする。  


 さぁ再び、ベルリン中心部へ。ドイツ語でZuntrumとかCentrumとか書いてある標識に従って走れば中心部につくらしい。もともとB5線をまっすぐ行けばブランデンブルグ門なのであるが、手持ちの20万分の1では大雑把過ぎてわからず、かといって「地球の歩き方」のベルリン市街図でカバーされている範囲にはまだ入っていない。要するに自分の位置をロストしてしまっているわけで、まっすぐ進めばいいとわかっていてもマイルドに迷子になっているような感じでもある。すでにベルリンのSバーン(郊外電車)の区域には入っており、これに乗っちゃえば・・・という部分もあるのだけど。
 とりあえず、通りがかりの人何人かに「中心はどっち?」と聞いてみる。やっぱりなんだかんだ言っても結局は人に聞いてしまうのが楽なのである。何人目かのおじいさんに聞いたときに「まっすぐ行けばいいんだよ、あと少しさ」と教えてもらう。おお、あと少しか。いよいよベルリン市街である。オペラ劇場の前を通り過ぎるといよいよ「歩き方」でもカバーされているエリアに入る。  
20万分の1の地図ではさっぱりわからないけど今更ベルリンの地図を買うのも何だかなぁ・・とかいうケチっぷりが迷子になる一番の原因


 さて、ベルリンにはほぼ着いた。さらなる難関は宿の確保である。

 渡欧して10日も立つのに、いまだ宿の確保に慣れないちんたさん。相変わらず宿の確保となると憂鬱です。とりあえず地図に従って進んでもYHは見つからず・・・ということで、もうめんどくさくなって、ベルリンの大都市ならではサービスの恩恵を受けましょう・・・ということで、中心部ZOO駅(動物園駅)のそばにあるツーリストインフォメーションで宿を紹介してもらうことにした。
 ツーリストインフォメーションに着いてみると、これがまぁ、さすが大都市、観光都市ベルリン、バックパッカーの長蛇の列である。誰も彼もが大きな荷物を背負ったり、荷物の上に座ったり。インフォメーションのカウンターは3つか4つあるのだけれども、お客の方もあまりに多くて20人くらいが待っている。後ろについて並んでみると、全てが個人客というわけでもなく、2,3人のグループも多かったりするのだけれども、1グループあたりの応対に結構時間がかかるらしく(5〜10分)、なかなか列は進まない。ツーリストインフォメーション初体験なので、こういうものなのか、と列の進むのを待つ。  
この(i)も「歩き方」でいの一番に紹介されていました


 自分の番が回ってきたのは30〜40分ほど並び待ちした後のことだった。こういうところが安心なのはまず確実に英語で会話させてもらえるだろうということ。実際その通りでとりあえず「宿を探している」「とにかく安いの」「自転車なので少しくらい離れていてもいい」と告げて探してもらう。カウンターのお姉さんがぱこぱことパソコンを操作すると7、8軒分のホテルがヒット。

 「この中で一番安いのは80DM(約4000円)ね」

 ・・・・う〜ん80DMかぁ、ぎりぎりだなぁ。前日変に安く快適な宿に泊まっていたので妙に渋ちんになっているわたくし。でも、まぁ、しょうがねぇか、ベルリンだし。東京のビジネスホテルに比べたら安いよ、と思い直し、ここでOK、と予約してもらう。3泊。ベルリンには少々滞在。予約を代行してくれるのは楽チンだな。6DM(約300円)とられるけど。予約確認書をもらって、地図(これも有料、70円くらい)の上に場所をマークしてもらってOKOK。  
ちなみにこの会話、全部英語でOK。もちろん相手の方が数段英語がうまい。


 さぁって、宿が取れると心のつかえもとれたような感じだね。インフォメーションから2kmくらいのところにある宿へGO。2kmくらい自転車で行くなら、なんてことない距離、ものの10分である。・・・・ところがインフォメーションのねーちゃんにマーキングしてもらった場所に行ってもホテルらしきものがまったく無い。なんだか普通のスーパーマーケットとアパートメントがあるだけだ。どういうこったい。ぐるぐるとその街区を回ってみるがそれらしきものは無し。ここで結局またこれかい、という感じで道行く人に聞いてみるが、ホテル?知らない、という感じでこれもだめ。もう一度確認とばかりに地図だけでなく予約確認書を取り出してホテルの住所と照らし合わせてみると・・・おい、これ住所とマーキングが食い違ってないかい?確証は持てないがそんな気がする。まだ、住所から目的地へのたどり方は良くわかってないんだけど、こっちだよな、こっちだよな、と歩いていくとやはり、そこにあった。って、通り3本分間違えて印つけてんじゃねー!  


 とりあえずホテルにつきました。
 今晩から3泊、ベルリンでお世話になるのはホテルセイフェルト。ウーランド通りにあるちょっと古く、でも古いからこそのいかにもヨーロッパのホテル、という雰囲気を漂わせたホテル。あとでよくみたら「歩き方」にも紹介されてるんでやんの。ちなみに宿泊料金は「歩き方」の方が20DMほど高い値段で紹介されていた。情報提供者はグレードの高い部屋に泊まったのか?フロントは2階に。大きな吹き抜けの玄関脇の階段を上るとある。ここでチェックイン。自分は5階の部屋、ここが3夜分の根城になるわけだ。たずねてみたら自転車を置くようなガレージは無いということなので、自分の部屋まで自転車を引っ張り上げてOKということになった。これがなにより安全な方法であることには違いない。トイレとバスはフロアごとにひとつずつの共同。結構しっかりした作り(いやそれでも古いので床が傾いたりはしているけど)のホテルなのだけれども、バストイレ共同とは自分から見ると非常に違和感があるのだけれども、こうだからこそ安くなるのだから、ちんたさん低価格最優先ということでまったくこれで十分でございます、という感じ。
 ところで、ヨーロッパを旅歩いた人なら経験あるのではないかとも思うし、現に向こうで会った日本人の誰もが口にしていたのだけれども、こちらの部屋のキーはいまいち使い慣れない。キーを差し込んでロックを開けようと思っても右にも左にも回るし、1回まわしてもまだ回ったりする、さらにそれでロックは開かない。いったいどうすれば開くんじゃ−とがちゃがちゃやっているうちになんとなく開いちゃう・・・という感じ。しばらくがちゃやって「一定方向に2回回すと開く」ということに気がつく。変にがちゃがちゃやっているとどっちに回せば開くのかがさっぱりわからなくなってしまう。  
HOTEL SEIFERT:80DM×3泊=240DM(約12000円)


 ま、とりあえずシャワーもあびてさっぱりしたし・・・ゆっくりとぶらぶらするのは明日からにして、さくっとメシ食って寝ちゃいましょう。ということで、本日の夕食も、ホテルのある通りの並びにあったドネルケバブ屋でケバブとポテトとビール(またかい)。どうやら、ちんたさん、このトルコ料理に魅了されてしまったようである(正確にはコストパフォーマンスに魅了されてしまっている)。とりあえず、ポテトとかビールくらいならなんの苦労もなしに注文できるようになってきた。ささやかな成長。って、それくらいでいいのかい。
 そうそう、今日は夕食に加えてデザートがあるんだった。朝、ペンションのおじいさんからもらった洋梨。・・・・甘〜い。口一杯に広がる梨の果汁。ニコニコといつまでも手を振っていた髭面のおじいさんを思い出す。
 さて、明日から2日間、ベルリン暮らしだ。  




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