グラボウのYH、森の中の朝。どうやらガキどものまき散らす騒音にも負けず、きっちり眠れたようである。 だがしかし、本日少々小雨模様。 ありゃまぁ。また足止め?また延泊かえ?こんなに何にも無いところで延泊もきつい。 7時頃に食堂に下りてみると自転車で旅行しているドイツ人が二人。朝食を同席させてもらう。 「雨だねぇ」 「雨だなぁ」 なんて話しながら、雨だけどどうすんの?と聞いてみると、やっぱり雨では身動きがとれないとか。が彼によれば「この雨なら、もうすぐ上がるんじゃないか?」とのこと。おおジモティー(といってもドイツ人というだけだけど)がそういうのならそうかもしれないな。少し希望がわく。 同じテーブルについた4人の内、一人が英語がしゃべれるらしい。雨が上がるまでの暇つぶしと長い朝食を兼ねながら雑談。「今日はどこに行くんすか?」みたいな話を。 |
彼が見せてくれたのは青い表紙のドイツサイクリング協会かなんかの公式と銘打った自転車用の地図。開けてみると道路が色分けされている。 「この赤点線の道はサイクリングに適した道ということだ」 とのこと。赤点線が最も良く、次点が赤実線、オレンジ点線、、、黒網掛けと5色くらいにランク付けされているらしい。おおお、この地図は便利だ便利すぎる。彼によれば大きな書店で売ってるよ、とのこと(が、その後、GS、書店に入るたびに探してみるもののついぞ見つからず)。値段もサイズも自動車ドライブ用の地図と変わりない(12.5DM)。どうれどれ、本日の予定、ベルリンへのB5線はどうじゃいな?と探してみたら、最下位ランクの黒網掛け。 「This color means bad for cycling」 横からわざわざ教えてくれるおじさん。どうやら、前日に体験した、狭い道、すぐ脇を抜けていく大型車とやたらにぶっ飛ばすベンツ…という図式がそのまま続くらしい。「俺達は今日はこの道を行くんだ」と教えてくれた道は赤点線(最上級)。ちんたさんもなんだかそっちに心奪われ気味(つーか、B5線の辛さに嫌気がさしていたんですね)。ちょっとばかり悩む。が、彼らに言わせると、「俺達と同じルートをたどるには(毎日100km走る)おまえにはちょっと距離が短いかもしれないよ、ベルリンに向かった方がいいよ」とのこと。そんなもんかなぁ。 |
雨が上がらないので、コーヒーを何杯もお代わりしながら長い朝食は続く。 「日本人から見るとさぁ、ドイツの地名は読み方からわかんなくって」みたいな話をしたら、やおら地名読み方講座になってしまった。地図を指し示しながら「ここは?」と聞くと、読んで正しい発音を教えてくれる。1週間前に泊まったRhaineの街が「ライネ」と発音するのだと言うことも初めて知った。また、ドイツ人はミュンヘンは「ミュニック」だし、プラハは「プラーク」というそうな。さらに、ベルリンはLとRの発音をきっちり分けないと全然通じないということもお勉強。 「ベルリンの後はどうするんだ?」 さらにおじさんに尋ねられる。う〜ん、実はこれを聞かれるのがちょっと辛い。正直なところあまり考えていないからだ。しかし「実はまだ決めてなくって、これから考える」というのがうまく伝えられているのか伝えられていないのかいまいち自信が無く、「たぶん、プラハに行って、ミュンヘンに行って…」なんて半分ホント半分嘘の話をする。YHが使えないミュンヘンはできれば避けたいんだよな…。おじさんに寄ると、チェコに向かうなら国境の手前、ドレスデンまでは平坦な道だという。が、ドイツ・チェコ国境は、 「There are big mountains」 とのこと。ちんたさんの行く気を削るには十分すぎるほどのお言葉。じゃあ、チェコのお隣、ポーランドは?と聞くと、こちらは泥棒が多く、自転車なんかで行くと速攻自転車をやられるぞ、とのこと。うーむ、山以上にこれは辛いへたれなちんたさん…ってどこに行くにもだめじゃん。彼が言うには「チェコに入るときと出るときは鉄道で行ったらどうか?優等列車でなければ自転車も乗せられるはずだし、だいたい50DMくらいだと思うぜ」とのこと。そうしようかなぁ…。水は低きに流れるが如く、ちんたさんも楽な方へ楽な方へと流れ気味。自転車に乗りたくてわざわざロードレーサーを引っ張ってきながら、楽はしたいというかなり矛盾した感情を持つへたれサイクリスト全開である。 |
本日のコースもひたすらB5線。相変わらず自転車道は無く、ヨーロッパ感覚で言えば交通量も多い(日本の感覚だと北海道亜幹線くらい)。路肩なんかこれ以上狭くできるか、くらいに狭く、白線の外側は10cmもあればいい方だ。そうか、そうくるか、旧東ドイツ。日本で鍛えた路肩走行を見せてやる〜。数10cmの幅の中に全神経を集中して走るちんた。 |
ドイツでは自動車がただでさえ高速でかっ飛ばしてって怖い、というのもあるのだけど、もうひとつ、普通の自家用車の後ろにトレーラーを引っ張っている車が多い。キャンピングトレーラーだったり、馬小屋?だったり。図体が大きいこれらの牽引車はあまり対向車線に出ていくこともできないので、どうしても自転車の近くを走らざるを得なくなっている…のでちんたさん、結構怖かったりする。 が、何が怖いって、もっと怖いのはトラクターだ。農地が無駄に広いだけあって、トラクターもべらぼうにでかい。運転席なんて2階にあるような感じで、タイヤも身長を軽く超える位のでかさである。こいつがさらに後ろにトレーラー荷台を引っ張ってこれでもかとばかりに牧草満載で向かってくるから迫力満点。前からでも後ろからでも、こいつが横をすり抜けるときなんて思わず素直に「ごめんなさい〜〜」と謝ってしまう。 ドイツの道も敵が多いのである。 |
お昼ご飯はケバブ。またかい。すっかりドイツのジャンクフードにお世話になりっぱなしのちんたさん。3DM(150円)も出せば超満腹なのだからありがたい。このケバブ、「そんなに入れるの?」というくらい羊肉を削って詰め込んでくれる。これ一つ食べれば、もう他のサイドオーダーなど要らないというか入らない。日本でも渋谷や六本木にケバブの屋台が出ることあるけど、500円くらいでもっと小さいもんな、どれだけぼっているかがよくわかった(でも、ドイツに行くまでは「500円でこんなにボリュームあってうれしいなぁ」とか思っていた)。 |
本日のコースも概ね周囲は農地、農地、農地。ただ、やはりというかなんというか、比べるのもなんなんだろうけど、旧西独圏に比べてあまり手が入っていないところも多く、農地と荒れ地の境界線上にあるようなところも少なくない。沿道にある家などを見ても、旧西独では茶色やオレンジ色を主体としたヨーロッパ風の建物ながらも「ぴしっ」とした感じがあったのだけれども、旧東独圏では「昔の技術で建ってます」と言ったような、いまいちまっすぐのようでまっすぐでは無いラインを持った家が多い。それでもカーテンや調度品は新しそうだったり、庭は綺麗に手入れされていたりするのは、そういう住まい方の文化なのか、それとも統一のささやかな恩恵なのか。 |