8月4日 すんなりとはいかない日々・・・

■多国籍朝食会議
 朝7時起床。部屋の電気点けっ放し。こうこうと灯りがともった部屋で起きる。日本ではというか関東ではこういう時、でんこちゃんが降臨する。いい気分で部屋に戻ってきてそのまま泥のように寝てしまったらしい。そのまま相部屋となる人もいなくて6人部屋を占拠状態だったようで、誰も出入りがないまま朝になってしまいました。  
 朝食に出てみると、全部で4人しか宿泊者がいなかったようです。ドイツ人とオランダ人の若者、そしてイギリス人のおばあさん。みんなで一つのテーブルを囲んで朝食。お、ここの朝食はシリアルが出るぜ、ラッキー。聞いてみるとドイツ人は自転車で旅行しているらしい。ちんたが一昨日からアムステルダムから走ってるんだ〜、と言ったら、そりゃすげえ距離だと驚いていた。ウルリッヒの国でもこういう反応が帰ってくるものなのか。ちょっと意外。いつのまにかテーブル上の公用語が英語になっておりしばらく歓談。その後、おばあさんがちょっと付いて来てくれというので行ってみると、二階に大きな荷物があり、これを下まで降ろしてくれという。ああ、そんなことね、楽勝っすよと持っていってあげる。  


■ルーチンワーク
  さて、本日も出発・・・ですが、その前に朝の儀式があります。空気圧、そして荷物の縛り付けです。そしてこの日からいよいよ3本体制になった空のペットボトルに水(水道水)を詰める作業が加わります。前日、水道水でもぜんぜん何とも無かったので、いよいよ本格的に補給は水道水で・・・ということになります。この朝の儀式だけでたっぷり30分近くかかり、序盤のうちはやたらに出発が遅れました。  つーか、ここまで思ったほど距離が出ないのはどうやら朝の遅さにも原因がありそうです。宿でしっかり朝食を食べてそれから準備して・・・となると軽く10時は回ってしまいます。それからだとどうしても一日に動ける距離は短くなってしまいます。日本で休日に朝5時に出ている時のようにはいきません。


■この近くの自転車屋は・・・
 さて、出発。とにかくリアホイールが心配なので、自転車屋を見つけ次第、飛び込むことにします。ま、とりあえずだましだまし走り切れてしまいそうでもあるけれど。ちょうどRheineの街を出ようとするあたりで自転車屋があったので自転車ごと入り込んで後輪のスポークが失われた跡を指差すと一発でわかってくれたようです。さすが万国共通の仕組みを持つ自転車。が、なにやら言っているので、聞いてみると「うちは、ほら、こういうママチャリしか扱っていない店なんで、こういうスポークは扱ってないんだ、ここをまっすぐ行ったオスナブルクの街にはちゃんとした店があるはずだから行ってみな」とのこと。行ってみなっつったって、そこまで20km近く離れているんですけど・・・これも一つのヨーロッパスケールの感覚なのか?しかも、今日進みたい方向の反対方向。さすがにそっちに向かうことは出来ません。とりあえず走れちゃうのをいいことに、本来の目的どおり北に進むことにしました。途中で自転車屋があればそちらに寄ればいいでしょう。


■ヨーロッパは農地でできている
 ドイツに入っても自転車道はよく整備されています。が、たま〜に自転車道が切れることもあります。自転車道の標識に「Ende」という標識が出てくるとそこが途切れるところなのですけれど、これが実に唐突に出てきて、また、道が狭くてつらいようなところに限って出てきたりします。「Endeじゃねぇよ〜」と心の中で毒づくのですが、まぁ、それでも自転車道があるだけまし・・・という感じでしょうか。実際、ドイツは車が思いっきり速く走っていくので(一般道でも制限速度が100km以上なんだもの・・・)、車道を走らなくてはならない時は鬼怖いです。
 本日も周囲はひたすら農地ばかり。だんだんこの辺りから「ヨーロッパは農地で出来ている」という事実に気が付き始めました。どこまでも広がる農地。視界に入る先の方、先の方、どこまでも続く麦畑、あるいは牧場。枯れ穂の色だったり、あるいは牧草の緑だったり。それらをびろーんと絨毯のように敷き詰められた丘が幾重にも連なります。丘を越えるとさらに同じような丘が視界の向こう側に。穀倉地帯とはこういうものなんだ、これくらいあって数々のビール、食べ物が安く、圧倒的な量をもって提供されているのだ、ということを圧倒的なスケールの中で無理矢理にでも納得させられてしまいます。これほど田園があれば、そりゃベートーベンだって交響曲の一つくらいつくりますわいな、と改めて思う。  

川を行く運搬船。ドイツでは川という川でこういう光景を見かけました。


それよりもドイツで見かけた光景はこちら。ずーーっと、ずーーっと、これですわ。


■雨
 本日は距離から考えてSylkの街のYHに泊まる予定だったのですが、なんとなく体力的にも時間的にもまだ余裕があり、こいつはいっちょ行ってやろうという気力も結構沸いていたので、さらに30kmほど行程を延長してブレーメンまで行くことにしました。ブレーメンなら大きな街なのでYHが一杯でもホテルがたくさんあるだろう、という目論見もあります。
 さぁ、そうと決まったらきりきり行きましょう、体力オッケー、やる気十分です。が、一つ、心配事。どうも西の空が怪しくなっています。一目見てこりゃだめだと思うほどの真っ黒な雲がもくもくと。こりゃいかん、ブレーメンに着くが早いか、雨をかぶるのが早いか・・・・・って勝てるわけ無いじゃん。ブレーメンまであと20kmを残したところで土砂降りになってきました。最初のうちは我慢して走っていたのですが、次第に強くなる雨脚にギブアップ。屋根付きのバス停があったのをいいことにここで雨宿りすることにしました。

 日没までに着けるかなぁ・・・・。

 雨のまま日没してしまったら、それこそ悲惨。それだけは勘弁して欲しい。もう既にSylkの街にも戻れないところまで来てしまっています。う〜ん、なんで、こ〜、この旅はすんなりといかないかなぁ・・・。ぼーっと、雨が止むのを待つほかありません。
 少し雨が上がってきたので再スタートしてみました。とにかくあと20kmとはいえ、日没してしまったら動きが取れなくなります。道沿いに街頭などほとんどなく、自転車道の方など皆無です。そんなところで暗い中、自転車道がとぎれて車道を走ることになろうもんなら、あっという間に150km/hで走りまくる車に後ろからゆわされてしまうに決まってます。ちょっとでも行けそうなら行っちゃいましょう。・・・とスタートしたはいいが、1kmも走らないうちに、今度は先ほどを上回る、まさにバケツをひっくり返したような雨、つーか「水が落ちてくる」って感じです(いや、まぁそりゃそうだけど)。慌てて近くのGSに飛び込むちんた。それでももうぐしょぐしょです。

 うーん、こりゃ、だめかなぁ・・・・

 それもあり得るかと、レジのおばちゃんに「近くにホテルはあるか?」と聞いてみると「無い」との答え。む〜、なんだかレストランならたくさんありそうなのに。やっぱりブレーメンまで行くしかないのか。GSのショップの中には同じく雨宿り組みのハーレーに乗ったお兄ちゃんも雨が上がるのを待っています(外だとめったやたらに寒い)。まぁ、この雨宿り中の心細いこと心細いこと。寒いしよ、心細いしよ。
 雨が上がったのは、それから約40分後でした。日本でいうところの夕立みたいなものだったらしく、上がってしまうと見事な晴れっぷりです。さぁ、時刻は午後6時前、いくらヨーロッパの日没は遅いとはいってもボヤボヤしてられません。お互いに同じ気持ちだったのか、ハーレーの兄ちゃんと「良かったな」と目で合図して別れました。  

バケツをひっくり返したような雨。こいつのおかげで荷物中の紙・本類はぼろぼろに・・・


■ブレーメン
さぁ、あとはいけいけどんどんです。恐れているのはこの薄暮時に自転車道が無くなって車道を走る羽目になったらいやじゃのう・・・という感じですが、幸いにして、ブレーメンまで自転車道で一直線でした。

 ブレーメンの街はさすがにこれまで通過したどの街より一回りも二回りも大きな街です。中心街にたどり着くまでにはずいぶん時間がかかりました。ここでも、YHの場所がさっぱりわかりませんので、とにかく「道は人に聞け」です。本日はラッキーなことに、一人目の大学生のお兄さん風の人に聞いただけで一発でYHの半径100m以内にたどり着くことが出来ました(100m以内に・・・というのはちんたが勝手に地図を読み違えていて大通り一つずれたところでうろうろしていたため)。

 今回の旅行中、つくづく思ったのは、やはり「街への入り方」が徒歩&電車のバックパッカーとチャリダーでは根本的に違うなぁ、ということ。チャリダーはどんな街でも、その街の外側から入って中心部に向かうのです。当たり前のことなんですがこれは意外に大変なことでした。まず、どっちが街の中心なのかわからない・・・というところから始まるのですから。その点、鉄道で移動していれば、街へは駅から入るのです、すなわちその街とのつきあいは中心部から始まるわけです。そこにはツーリストインフォメーションも近くにあるだろうし、宿泊する場所も値段はどうあれ、とりあえずあることはあるわけです。地球の歩き方なんかも中心部から街とのつきあいが始まることはもう大前提として編集してあります。チャリダーの場合はまずその中心部までたどり着かなくてはいけない(例えば旅慣れて郊外のYHに直でたどり着けるくらいに器用になればまた話は別ですが、ちんたさん、まだヨーロッパ3日目ですし)。そこに行くまで「中心部はどこですか?」「中心部はどこですか?」と聞きまくらなくては行けないわけです。

 さて、とりあえず見つけたブレーメンのYH。が、ここはあっさり「満員だよ」と断られてしまいました。うえ〜ん、まただぁ。やはり午後8時という到着時間がきついのか。が、ここで引き下がらないのが本日のちんた。とりあえず、一度捕まえた芋づるは離すな、とばかりに他のホテルの紹介をお願いします。すると、こういうことはお願いしてみるもんで、近くのホテル?船員会館?みたいな宿泊所をYH会員証を見せれば安く泊まれるように交渉してくれました。おお、ラッキー。ちなみに2500円。例によってまたその宿泊所を探すのに手間取ったのだけれども、何人かの人に尋ねて無事チェックイン。さすがに日没の遅い夏のドイツでも、もう、辺りはすっかり暗くなっていました。

 その宿泊所は実にきれいなところ。シングルルームです。大きなバスとトイレ。何はともあれシャワーです。はぁぁ、シャワーを浴びるとやっとほっとするねぇ。へとへとだったこと、雨に濡れて心細かったこと、中心部にたどり着くまで大変だったこと、そんなことも含めて全部洗い流してくれます。とにかく本日は大雨で着ているものがすべてびしょびしょになったので同時に洗濯タイムです(って、洗濯タイムはほぼ毎日あるのだけど)。洗濯も終わって、部屋の隅で干して、さぁ本日も食事へGoです。

 YHを探してさまよっていた時に、川沿いにたくさんのレストラン、屋台が出ているのを見かけました。YHのお兄さんは「そこには日本食レストランもあるぜ」とか教えてくれて、実際そこには日本食レストランがあったのだけれども、メニューを一目見てまずベらぼーに高く、また、まだ日本食が食べたいという気分でもないのでパス。他のレストランのメニューを見ながらうろうろ。そのうち一軒に飛び込みます。

 なんだかんだドイツ語はさっぱりわからないので、英語のメニューがあるかと聞くと、あるとのこと。さっそくそれを用意してもらったのだけれども、英語でも結局何が何やらわからないわたくし。かといって今更メニューがわからないと引き下がるわけにもいきません。どうもいまいちわからないところがある・・・なんて恥ずかしくて店員には言えるわけが無い。よーく見てみるとシュニッツェルなる文字が目に入ったので、おお、これはきっとあれだろう(なに?)と目論見をつけて、「ビールとこれ」と注文。ビールはいいよね、どこでもほぼ共通語みたいに通じてさ。
 現われましたるシュニッツェル、これがまたでかいのなんの。毎日ヨーロッパサイズに驚かされているちんた。付け合せのポテトフライなんかどう見たってマックフライポテト(L)より多いぜ。ドイツ、どう見てもあの広大な農地のおかげでイモは余っているとしか思えません。超満腹。

 ご機嫌になって川沿いを歩いて宿に戻るちんた。この日もまた、部屋に戻って即爆睡でした。  


 

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