作者別一覧
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東雅夫
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東野圭吾
MASAO HIGASHI
東雅夫
「新訂クトゥルー神話辞典」
形態
文庫
種別
辞典
部門
−
出版
学研M文庫
値段
¥820
初版
2001-02-21
総合
☆
ストーリィ
☆☆
技術
☆
東雅夫がまとめた、クトゥルー神話に関する辞典。新訂という言葉が示すように、本書には旧版が存在する。1995年に同社より出版された「クトゥルー神話辞典」がそうで、これに加筆訂正したのが本書ということになる。
クトゥルー(クトゥルフ)神話とは、H・P・ラヴクラフト(H.P.Lovecraft 1890-1937)を創始者とする神話体系で、その独自の世界観や斬新な設定などが後進の作家たちの支持を受けて世界中に広がった、一種のホラー小説でありオカルト文学である。
本書はそのクトゥルー神話に登場する様々な語句や作家、その著作、歴史などを辞典の体裁をとって紹介している。上手く整理されていて利用しやすく、多くの辞典がそうであるようにパラパラと眺めているだけで面白い。クトゥルー神話の入門書、手引書としても最適だろう。
序文でクトゥルー神話の成立から現代に至るまでの変遷と歴史をざっと紹介し、続く「禁断の大百科」を謳う用語辞典で、古今東西のクトゥルー神話に関係する用語・固有名詞を辞典形式で解説。他にも「暗黒の文学館(作品案内)」「探奇の紳士録(作家名鑑)」「恐怖の年代記(歴史年表)」などが収録されている。巻末には索引も用意されていて辞典としての利用価値を高めている。
文庫サイズで約450ページ。もちろん限界もあるが、これ一冊を持っているといないとではクトゥルー神話を紐解く上で随分と違ってくると思われる。クトゥルー神話に興味があるならお勧め。否、所有していなければなるまい1冊。
2004/01/11
KEIGO HIGASHINO
東野圭吾
「ある閉ざされた雪の山荘で」
形態
文庫
種別
ノヴェル
部門
長編
出版
講談社
値段
¥533
初版
1996-01-15
総合
−
ストーリィ
−
技術
−
東野圭吾は江戸川乱歩賞を受賞した著名なミステリ作家であるらしいのだが、そのあたりの事情に精通しない者として、氏の著作に初めて触れることとなった。
内容に関しては「ある閉ざされた雪の山荘で」というタイトルが既に全てを語っている感があるが、一応ながら簡単に説明しておくと、予想外の大雪で外部との接触(即ち陸海空いずれもの交通手段、電話・無線などの連絡手段)が絶たれた山奥のペンションにある旅の一団が閉じこめられ、その閉鎖された空間の中で次々と殺人が繰り返されていく――というコンセプトの中繰り広げられる物語だと言える。
こうした、外部から隔離された空間内で起こる連続殺人を描いたミステリは古くからあり、その代表作としては本著の中でも紹介されているがアガサ・クリスティの古典的名作
「そして誰もいなくなった」(原題:TEN LITTLE NIGGERS)
などが挙げられる。閉鎖空間を造るシチュエーションとしては無人の孤島に閉じ込められたり、雪で山荘に閉じ込められたりするパターンが目立って多いため、本格ミステリファンの間では『雪の山荘もの』などと呼ばれることも多い。
つまり本書は、そのあたりの事情に精通した本格ミステリファンである著者が、全てを承知・計算の上で書き上げたミステリだということになる。
内容だが――評価されるべきポイントは幾つかある。たとえば、過去の作品と一線を画して語られるべき本書だけがもつ個性、特徴というようなものがきちんと付与されていること。
確かに典型的な「雪の山荘もの」ではあるのだが、だがそれに終始しているというわけではない。登場人物たちは、ある劇団のオーディションに合格した役者の卵たち男女7名で、舞台稽古の名目で山奥にあるペンションに集められた。
普通ならここで大雪が降り出すところであるが、この作品ではそうならない。舞台を取り仕切る演出家から、「大雪が降り出し、そこに閉じ込められたものと過程して演技を行え」と指示されたために、ペンションが擬似的に閉鎖されるだけなのだ。
子供地味た話だと半ば呆れながらも、劇団員たちは「指示に従わなかったり、山荘から出た場合はオーディションの合格を取り消す」という条件付けがされているため、しぶしぶ雪によって閉じ込められたものと仮定して、各々の役割を演じていく。
そして殺人が起こるわけだが……、これもやはりパッとしない。「殺人が行われた」と書かれた紙が残されているだけで、肝心の死体が見つからないからだ。劇団員たちは、これも舞台稽古の一環なのだと信じこみ殺人に遭遇した人間の役割を演じ、これに対処していく。
だが、連続して事件が発生し、細かい点で奇妙な矛盾が見つかっていくごとに、「これは本当に演劇の稽古なのか、起こっている殺人は本当にフェイクなのだろうか?」という疑念が彼らの間で膨らんでいくのである。
――これは、かつてなかったタイプの盛り上げ方なのではないだろうか。少なくとも個人的には初めて見るパターンの演出だ。
こうして見てきたように、本作を個性ある作品にしようという努力や工夫の痕跡は随所に見受けられる。そこは当然、評価されて良い。だが本書には、同じくらい評価を落として然るべきポイントが内包されていたりする。
たとえば、登場人物たちが作中で以下のような会話を交わすシーンがある。
「人間描写もできない作家が名探偵なんかつくろうとするな」「よくありますからね。個性も魅力もないのに、名探偵だという冠だけ与えてあるケースが。描写力がないので、この男は頭脳明晰、博学多才、行動力抜群なんて地の文で書いてあったりする」
――作中のキャラクターが台詞として口走るこれらの台詞は、明らかに古今東西の凡作本格ミステリを批判するものである。そして少なからず、著者本人の本音と関係するものなのだろう。
だが、どうだろうか。『地の文章で直接的に語るのではなく、描写で語れ』と偉そうに豪語している割に、東野圭吾はこれらの批判をキャラクターの口を借りて直接やってしまっているように見える。
何故こんな幼稚な真似をする必要があるのだろう。人間が描写できていない本格ミステリが多いと思うのなら、そうでない作品を書き、それをもってアンチテーゼを示せば良いのだ。それで充分なはずである。
主張はご立派だが、自らがそれに反する行いを見せていては説得力など生まれない。このあたり、プロとしては非常に不用意かつお粗末だし、鼻につく。これだけで嫌われるには充分過ぎる要素であると言わざるを得ない(技術に「1つ星」をつけようかと思ったのだが、これで帳消しだ)。
しかも、少しでも冷静かつ自己批評の出来る眼を持っているなら、このことは著者にも理解できているはずなのだ。にも関わらず、敢えてこれを断行しなければいけない理由――。
本編の犯人探しより、俄然興味深い謎だ。
2004/07/06
「タイトル」
形態
文庫
種別
ノヴェル
部門
長編
出版
講談社
値段
¥648
初版
2003-08-15
総合
☆
ストーリィ
☆☆
技術
−
「タイトル」
形態
文庫
種別
ノヴェル
部門
長編
出版
講談社
値段
¥648
初版
2003-08-15
総合
☆
ストーリィ
☆☆
技術
−
「タイトル」
形態
文庫
種別
ノヴェル
部門
長編
出版
講談社
値段
¥648
初版
2003-08-15
総合
☆
ストーリィ
☆☆
技術
−
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