垂直落下式妹
Hiroki Maki
広木真紀




29




 ――約1週間後、6月26日。
 その日、祐一は自宅としている水瀬家のリヴィング・ルームで事件の終結を知った。朝起きてTVをつけると、レポーターが興奮した様子でしきりに何かを叫び続けている。どうやらそれはライヴ(生中継)らしく、しかもブラウン管の向こう側には、見慣れた建物の外観が映し出されていた。
 見慣れているのも当然、それは祐一たちの高校の旧校舎であった。
 5分ほどレポーターの熱っぽい話を聞いていると、前年度の生徒会長である『吉田卓郎』の死が報じられていることが分かった。しかも、他殺体で発見されたらしい。つまり、真実を知る者にとっては、武田玲子、竹下啓太、小田桐兄弟、そして21日に死体で発見された澤田武士に続く、第6の殺人の発生である。
 だが、祐一はTVのレポーターやワイドショウの司会の様に驚くことも、興奮することもなかった。吉田卓郎が殺されることなら、既に知っていたからである。
 祐一は20日の夜、名雪を除くAMSのメンバーと犯人の後を追跡し、そして犯人と話し、この事件の大方の真相を知った。その時、犯人があと1人、吉田卓郎を殺すつもりであるということも聞いていた。だから、吉田が殺されたと聞いても、「ああ、遂にやったんだな」という感想を抱くだけだ。驚愕も、戦慄もない。ただ、微かな物悲しさと虚しさだけがあった。

 それから1時間ほどして、電話が掛かってきた。既に家主の秋子は出勤していたし、名雪とあゆはまだ眠っていたので、自動的に祐一が受話器を取ることになる。
「――はい、水瀬です」
 最近では、「相沢です」と名乗るミスも犯さなくなった。この家に居座ることに、馴染んできた証拠だろう。祐一は感慨深くそう思った。
「あ、祐一さんですか〜。倉田佐祐理です」
 受話器の向こうから、相変わらず快活なお嬢様の声が聞こえてくる。まだヴィデオ・フォン(TV電話)が普及するまで十年はかかるであろうが、そのシステムが確立されていなくても、彼女が口元にいつもの微笑を浮かべているであろうことは明らかだった。
「ああ、佐祐理さんか。おはよう」
「あはは〜。おはようござすいます。朝早く、ごめんなさい」
「早いって言っても、もう10時ですよ? ま、名雪にとっては早朝だろうけどね」
 本人が聞いたら頬を膨らませて抗議しそうなことを、祐一はサラリと言う。
「それで、今朝は?」祐一は口調を変えて切り出した。
「ええ、そのことなんですが……祐一さん、今朝のニュースはご覧になりました?」
「ああ」祐一は軽く頷く。この時点で、佐祐理が電話をかけてきた理由に確信を持ったのだ。「吉田卓郎のことだろう? 知ってますよ。殺されたそうで」
「そうなんです。それで、今日また私のおうちに皆で集まることになりました。名雪さんやあゆさんにも伝えてください。祐一さん、都合のほうはよろしいですか?」
「ええ、勿論。で、時間は?」
「はい、ランチを用意して待ってます。今日はシェフさんたちに来ていただきましたから、ご馳走ですよー」
「そいつは、楽しみだな」世辞や社交辞令などではなく、祐一は本心から言った。「それじゃ、名雪とあゆを連れて昼に伺いますよ」
「あはは〜、お待ちしてます」




30




「さて、えーと。みんな、ちゃんと画面は表示されてるかしら? ……って、相沢君。ネットに接続してイカガワしい写真見るのやめて頂戴」
「えっ、分かるのか?」
 香里の突っ込みに、祐一は意外そうな顔をした。
「分かるわよ!」香里は柳眉を吊り上げる。元が美人なだけに、なかなかの迫力だ。「こっちからは、皆がどんな画面を表示して、どんな情報をやりとりしてるかが把握できるの」
「ほ〜、そりゃ凄いな。パソコンってのも、なかなか侮れないもんだ」
 祐一は感心したように頷いて見せる。
「分かったら、さっさとオフラインにして。まったく、これだから男って嫌いよ」
「へいへい」
 ――午後2時。呼びかけに応じ、佐祐理と舞のマンションに終結したAMSのメンバーは、昼食を揃って済ませた後、4階にあるパソコン・ルームに集まっていた。祐一、名雪、あゆ、香里、栞、美汐、そしてホストである佐祐理と舞。1人の欠席者もない。彼らは全30台もある新型の高性能パソコンの前にそれぞれ腰を落とし、モニタを睨み付けていた。
 仮に、これがパソコン教室であったとするなら、教師が座るであろう位置に、香里はいた。生徒の席と教壇の位置関係である。彼女は皆と向かい合わせる端末を操り、メンバーたちのパソコンを操る。講師役というわけだ。
「じゃあ、はじめましょう。名雪、これは貴女のためにやっているようなものなんだから、寝ちゃだめよ」
「うん。分かってるよ」名雪は罪のない笑顔で頷いた。
 20日の深夜、犯人を追ってAMSが出動した時、名雪だけが惰眠を貪って居残った。そのため、彼女は1人だけ事件の真相を知りそびれたのである。今回の会合は、名雪にその真相を説明するのと同時に、皆でこの事件を復習しようという試みだった。
「OK、それじゃ説明をはじめるわ」
 そう言って、香里は再び口を開いた。彼女の座る席は、TV局の編集室のように様々な機器と、ズラリと並んだ小型の画面から成り立っていた。この無数の小型画面には、それぞれに番号が打ってあって、それに対応する席のモニタがそのまま映し出されている。監視カメラの制御室のような光景を想像すれば、近いイメージが得られるだろう。
「――さて。じゃあ、まず画面に注目して頂戴。上下にスクロールさせてみると分かるように、全部で3つの表が表示されている筈よ(別表)
「うぐぅ……みしおちゃん。これをクリクリすれば動くの?」
「そうです。マウスと呼んでください。ネズミに似ているからそういう名がついたのです」
「うぐ、わかった! ミッキー・マウスのマウスなんだね?」
「その通り、正解です。そうやって、身近な何かに関連付けて記憶すると、記憶連鎖を起こしやすくなりますから、忘れ難くなるのです。記憶術の初歩ですね」
「うぐぅ……みしおちゃんの言うことは、難しくて良く分からないよ」
 マウスをぎこちない手付きで扱うあゆに、隣席の美汐が優しく教授する。ボタンが3つ以上ある機械を前にすると、途端に原始人のようになってしまうあゆには、美汐のような専属のアシスタントが必要だった。
「さて、まずこの事件の死亡者――つまり、被害者を確認してみましょう。同表の図1を見て頂戴。これは、事件の関係者と前年・今年の生徒会役員を一覧表にして纏めたものよ。前に、相沢君が作ったものと同じね」
「えぅ〜!」
 室内の右奥から、栞の声が聞こえてきた。香里の席からでは、顔までは確認できない。
「ええと、1、2、3……7……。全部で、7人も亡くなったんですね」
 表に挙げられているのは、合計9人の男女である。その内の7人が死んでいるわけだ。パーセンテージにして、78%。死亡率と考えれば、凄まじい高率である。
「はぇ〜。去年と今年の3役だけに限って見れば、生き残ったのは今年の会長の久瀬さんだけですね。6人中、実に5人の方が亡くなっています。しかも、全てが殺人で」
 1番前の席に座っている佐祐理が、顔色を微かに蒼白に変えて呟いた。生徒会3役に就任したものは、2年以上生きられない――そんなジンクスさえ生まれそうだ。
「久瀬なんか、別にどうでもいいキャラクターだからなぁ。あいつも、犯人に殺されそうになったりすれば、ちょっとはあのヒネくれた性格も矯正されるかな?」
「祐一、不謹慎」舞がボソリとつっこんだ。
「なんでよ。――舞、久瀬のヤツはお前を退学にしようとした腐れ外道だぜ? 権力の維持拡大にしか興味を示さない挙句、そのためには他人を傷付けることなんか、何とも思わないような奴なんだぞ。死ななきゃ治らないくらいのバカ野郎だぜ。もしあいつが死んだって、悲しむ人間より、喜ぶ人間の方が絶対多いと思うがな」
「まあ、久瀬君程度の存在価値云々にムキになっても、エネルギーの無駄よ。本題に入りましょう」
 香里はそう言って、脱線しかけた話題の軌道を修正した。
「亡くなった人物を確認したら、次は図の3を見てみて。これは、今回起こった事件を日付順に並べたものよ。これで、事件が起こった順番と、誰がいつ殺されたのかが分かるわ」
「あ、そう言えば武田さんが亡くなったのとかは随分前に感じるけど……今回の一連の事件って、みんな今月に入ってから連続して起きてるんだね」
 表を一瞥すると、名雪は悲しげに眉を顰めて言った。確かに彼女の言う通り、1999年9月に起こった澤田紀子の自殺を除いて、『連続猟奇殺人事件』は全て今年の6月に入ってから20日以内に連続して繰り返されていることが分かる。
「この内、武田玲子・竹下啓太・小田桐兄弟の計4人の殺害に関しては、これまで何度も話題に上ったし語り尽くした感があるから敢えて繰り返さないわ。よって、今回は20日深夜に行なわれた澤田武士の殺害。そして、今朝死体が発見された吉田卓郎殺害に重点を絞って進めていくことにしましょう。名雪も、それで構わない?」
「うん。オッケーだよ」名雪はニコリと笑った。
「じゃあ、まず澤田武士殺害から。この澤田武士という人物――名前からも分かるように、去年の9月、ウチの学校の屋上から飛び降り自殺をした澤田紀子の実の弟よ」
「ええと、確か紀子さんとは1歳違いでしたから……香里さんや祐一さん、それに名雪さんの同級生ですよね?」
 佐祐理が顎にチョコンと人差し指を当てて言った。
「その通りです。工学科の生徒だったから名雪や相沢君は知らないでしょうけど、去年は風紀委員の1人として生徒会でも活躍していた人物よ」
「うぐぅ。僕たちが、20日の夜に会った男の子だよね。とっても怖かったよ」
 あゆがその時の光景を思い出したのか、ブルリと体を震わせる。
「彼の死体は、川澄先輩と倉田先輩が通う大学の、工学部が使っていた旧校舎の屋上で見つかったわ。死因は刺殺による大量出血。胸部をナイフで刺されたのが直接的な死因ね。勿論、他殺よ。そして死後に、その死体にガソリンが蒔かれ下半身を燃やされているわ。これは言うまでもないけど、小田桐兄弟と全く同じやり方ね」
「そして象徴的であったのは――」美汐が静かに口を開いた。「象徴的であったのは、彼の右腕が、完全に切断されていたことです。竹下啓太の場合は、右の手首から下が切断されていましたが、今回は右肩から下の『腕全体』が切り取られて無くなっていました」
 こういう話が苦手なあゆは、すでに「ごめんなさい、ごめんなさい」と呪文のように呟きながら、両耳を塞ぎ、丸くなって怯えている。美汐はそれが完全に眼中にないらしく、ズイッと身を乗り出すと、スプラッタ嫌いの人間を苛めているとしか思えない口調で、イキイキと続けた。
「しかも、さらに凄いのは、切断を殺害現場の屋上でやった痕跡が見つかっていることです。きっと犯人は、殺した後、誰もいない屋上で死体と2人きりの状態で、血に塗れながら腕を切断したんでしょうね。ノコギリで、筋肉や腱や骨を削り落とすように時間をかけて、ゆっくりと――」
「う〜。気分がわるくなるような、話だね。でも香里たちは、その澤田君と話をしたんでしょ? それに、犯人にも会ったって聞いたよ」
 名雪は、仲間ハズレにされたことが未だに気に入らないらしく、微かに頬を膨らませながら言う。
「ええ」香里は頷く。「私たちが駆けつけた時、既に澤田武士は腹部を刺されていたけれど、幸いと言うべきかしら。急所は外れていたから、まだ息があったの。ちなみにその時、彼にはまだ右腕が『あった』わよ」
 何故、右腕が切断されたのか知っている彼女としては、何も怯えたり気味悪がったりする要素はない。香里は涼しい顔をしていた。
「――まあ、それはともかくとして、名雪を除くここに集まった全員が彼と出会い、会話し、そしてほぼ全てを知ることができたわ。そして、その場には彼を刺した犯人もいたの。私たちは、彼らとも話をすることができたわ」
「いいなぁ……」そう呟く名雪は、心底羨ましそうだ。
「だってお前、起こしたとしても絶対起きられなかっただろ? 仮に起きだしたとしても、絶対寝ぼけてフラフラだろうし。記憶なんてなかったって」
 祐一が的確に当時の彼女をシミュレートする。
 名雪は自分でもそれが分かっているだけに、「うー」と悲しげに唸るしかない。
「まあ、とにかく。それは後回しにして。この澤田武士が殺されたことによって生じた、色々な影響について考えてみましょう。まず第1に、警察が21日に澤田武士の死体を発見したわけだけど……これによって、捜査はより一層難航することになったわ。名雪、何故だか分かる?」
「んー、そうだね。ちょっと分からないよ」
 名雪はろくに考えもせずに、ニコリと素敵な笑顔で即答した。
「はぁ……」その反応に、香里は軽くため息を吐く。「あんた、少しは考えなさいよ」
「ふふ。私のことはいいから、香里。続けてよ」
「分かったわ」諦めたように言うと、香里は口調を変えて語り始めた。
「警察が混乱したのは、この事件も連続して起きている猟奇殺人の一環だと思われるものの、澤田武士が殺されたのが、展開としてあまりに意外だったからよ。
 これまで、殺された被害者たちは『生徒会』という強力な糸で結び付けられていた。でも、澤田武士はかつて風紀委員をやってはいたけれど、今ではただの一般生徒。これが連続殺人だとすると、他の被害者たちとの共通点がないに等しいのよ」
「――もっと言えば、警察はこの『澤田武士』こそが連続殺人の犯人ではないかと疑っていた筈です。そこまで確固とした疑いを掛けてはいなかったとしても、少なくとも容疑者候補の1人ではあったでしょう」
 補足するように、美汐が言った。
「そう。天野さんの言う通りよ」香里は頷いて、美汐の発言の妥当性を認めた。「警察もバカじゃないわ。今回の事件は、生徒会の中で起きたイザコザが原因の連続殺人だと考えるでしょう。そして、去年の3役が既に2人も殺されている。犯人を殺人に駆り立てる程の『怨恨』を生む原因が、去年の生徒会で発生したであろうことくらいは、検討をつけていた筈よね」
「じゃあ……警察は彼のお姉さんである『澤田紀子』さんの自殺は、生徒会で起こった何らかの事件が原因であり、武士さんはその復讐のためにその当時の役員たちを連続して殺害している。そんな風なシナリオを想定していたわけですね?」
 栞が眉間にしわを寄せて、難しい顔をしながら発言する。
「その通り。そう考えれば、動機という面からも事件に筋が通るわ。姉を自殺に追いやった、もしくは自殺に見せかけて殺した生徒会が許せない。当時の3役である吉田、竹下、そして小田桐を殺してやる。――いや、それだけでは気が済まない。小田桐には弟がいた。そいつも生徒会の兄の座を継いで役員をやっている。そいつも殺してやろう。警察は、澤田武士がそう考えていたと想像していたんでしょう」
「ん、なるほど」名雪は納得したように何度かコクコクと頷いて見せる。「それだと、確かに動機という面では殆どカンペキだね。武田玲子さんの件は、警察は『自殺』ってことで公式に片付けているから、連続殺人とは無関係だし。確かに澤田君が犯人だと考えれば、全部に説明がつくよ」
「ところが――」美汐が再び口を開く。「その犯人候補の澤田武士が、小田桐兄弟と同じ手口で殺されてしまった。警察は驚いた筈です。犯人だと思っていた人間が、殺されてしまったのですから。これで、彼らはこの事件を根本から見直さなければならなくなりました」
「そうだな。澤田武士は基本的に生徒会とは無関係だ。もし、前年の風紀委員の1人だというんじゃ、関連性としては弱すぎるしな。これで、警察は事件の範囲を生徒会から広げて考えなくちゃならない」
 祐一は肩を竦めて、お手上げだなと呟いた。
「そんな謎と混乱を齎したまま時が過ぎ、遂に今朝、前年度の生徒会長である『吉田卓郎』が他殺体で発見されたわ。警察と一般にとっては第5の殺人。私たち、真実を知る者にとっては第6の殺人ね。ニュースによると、彼の死体もこれまでと同じように下半身が徹底的に燃やされていたそうよ」
 そう言って香里は、今朝のニュースを動画ファイルとして編集したものを、全モニタに映し出した。
 祐一たちは既に見た内容だったが、眠っていた名雪やあゆは食い入るようにそれを凝視している。
「ねえ、香里。1つ訊いていいかな?」
 暫くすると、名雪はまるで生徒が教師に質問するように、右手を挙げて言った。
「どうぞ」香里は快く応える。
「えっとね。祐一は、これで事件は終わったって口走ってたけど、それって本当?」
「本当よ。今朝、吉田卓郎の死体が見つかった時点で、一連の連続殺人の幕は降りたわ」
「じゃあ、これ以上は誰も殺されないの?」
「人類が存続する限り、殺人そのものは無くならないわよ。ただ、この事件の犯人が、同じ動機で犯行を重ねる可能性は極めて低くなった――とは言えるでしょう。少なくとも、竹下啓太や小田桐兄弟を殺した犯人はもう2度と殺人を犯すことはできないわ」
「じゃあ、犯人は逮捕されるの? 皆、犯人が誰か知ってるんでしょ、警察に教えたりはしないの?」
「少なくとも、私は犯人を警察に教えてやる気はないわ」香里は表情を変えずに即答した。
「オレも、この事件にこれ以上首を突っ込む気はない」祐一も同調する。「まあ、このままいくと、この事件は迷宮入りだろうな。今の警察の力で犯人を割り出すことは不可能に近い。今から、香里や天野が警察に就職して刑事課に配属でもされない限りな」
「う〜。なんか、みんな極悪だよ」
 名雪は悲しそうに唸った。
「そろそろ、いいでしょ。犯人、誰だったか教えてよ〜」
「OK、いいわよ」
 ダダを捏ねる子供のような名雪に、香里は肩を竦めて苦笑する。
「一応、最低限の予備知識は確認できたし。今なら、名雪に話してもいいでしょう。でも、この話は結構ヘヴィよ。私たちは犯人の口から直接それを聞いたわけだから尚更。だから、聞くからにはそれなりの覚悟を持って頂戴」
「聞いて、それでも警察に通報しようだとか、マスコミを使って世間に真実を伝えようだとか思うなら、それは名雪の好きにすればいいさ」
 香里の言葉に続けて、祐一は言った。
「だけど、判断はお前の感情でしてくれ。社会的な倫理だとか、法律だとか、そんなものじゃなくて。お前が持ってるお前なりの正義と、プライドで判断して欲しいと思ってる」
「じゃ、いいわね……?」
 少しだけ鼻白む名雪を相貌を真っ直ぐに見据えて、香里は念を入れた。
「今から、私たちの知った全てを話すわ。20日の深夜、犯人の跡を追って彼らから直接聞いた話よ――」







to be continued...
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 脱稿:2001.08.31 03:55:08


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