タイトル | : あとがき |
投稿日 | : 2012/03/04(Sun) 10:30:39 |
投稿者 | : 徒然地蔵 |
参照先 | : |
徒然地蔵です。
風祭文庫には10年程前から時々訪れて変身奇譚を楽しませてもらっていました。
今回、初の投稿作品『樹怨』が本館に掲載されたことは大変な喜びです。
主人公が変身にじっとり嬲られて肉体と精神に苦痛を受ける描写が好きで、
動かず物言わずでも生きている樹への変身は、それらが存分に描ける題材と思い、
またあまり書かれていないジャンルという面白みもあって、本作を執筆しました。
潜在的には、昔見た漫画やアニメの残影に喚起された部分もあったかもしれません。
小さい頃に見た漫画『ゲゲゲの鬼太郎』妖怪万年竹で人が竹になる様子。
小学生の時に見た名香智子の読切漫画『きょうふの花園』で青いバラと癒着した少女の姿。
中学生の時に見たアニメ『火の鳥・宇宙編』でサボテンになった人々の描写など。
自分が愉悦に浸れる樹への変身奇譚を書こう!…と、元気に書き始めたのですが、
書き進めて行くうちにこだわりが強くなって逆に筆が思うように進まなくなりました。
書いた話の配置換え、細部の作り直し、類語への置換え、贅肉のカット、筋の変更。
特に第3話後半から第5話前半までは単調にならないよう調整を何回も行い、
先頭行の進行のペースがかなり落ちました。
因みに、里枝の胸から枝が生えるシーンは、服を脱がせる為の工夫の産物でした。
服は変身の作用で破けて欲しいが、幹が太って破けるのは幹が太くなり過ぎる。
腕と頭の癒着で服が持ち上がるのは、顔が服で隠れる上に服が破けてくれない。
話の順番を変えて、交わろうとする智也が服を脱がせたり切ったりするのは面白みがない。
ならば、一度凹んだ胸から枝が生えて来てくれたら…といった具合です。
もっとも、胸から枝が出てしまうと抱擁がしにくいし、胸からなら上によりも水平に
枝が出る方が自然とも思いましたが、結果的にはより刺激的な演出が得られたと思います。
ついでに、智也と里枝の合体についても、当初は樹になった後の里枝の花との交わりを
密に描写する予定で、樹になる前の交わりは変身続きの中の数行の小休止のつもりでした。
けれども変身途上の里枝との合体はなかなか魅力的で、描写のウエイトが逆転しました。
他でもいろいろ試行錯誤の中で変更しています。
第5話の内部器官の排出は迷いながらも残したり、樹の里枝の魂の声は書かなかったり。
文章量については、最初は最低字数の2500字に達するかを心配していましたが、
このアイデアを使いたい、こんな描写を盛り込みたいと欲張っているうちに、
文がどんどん増えて完成時には全5話約13000字。我ながら驚きました。
執筆中は、通勤途中に街路樹を観察したり、樹の図解や盆栽用語に目を通したり。
仕事以外の大半の時間を費やして執筆し、完成時には約一ヵ月半が経過していました。
完成した時は、創作のスタミナの無さ故、喜びよりも解放されて安堵する気分でした。
投稿したところ、風祭玲さんより感想と本館掲載のお話を頂き夢のようでした。
風祭玲さんに再編集と本館掲載をして頂き、さらにカギヤッコさんから感想を頂いて、
労が犒われる思いでした。ありがとうございます。
全くもって自分の好みで書いた作品ですが、楽しんでくれる方がいれば喜びに思います。
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