風祭文庫・人魚の館






「狙われた乙姫」
【第29話:突撃、猫柳邸】

作・風祭玲

Vol.460





ガラガラガラ!!

ズズズズンンンン!!!

日が落ち暗くなった空を雷光が切り裂くように駆け抜け、

追って大音響の雷鳴がとどろき渡る。

「ねぇ

 いつまでこうしているの?

 海人…」

部屋の中よりずっと外の様子を眺めている竜王・海人に水姫がそっと寄り添い声をかけると、

「え?」

水姫のその声に海人が振り返る。

「知っているんでしょう、

 竜宮の乙姫が攫われたこと」

振り返った海人に水姫は彼の耳元で囁くと、

その声はどこか海人の背中を押すように聞こえた。

「ふんっ

 知るか、あんな奴

 大体、乙姫のガード共は何をやっていたんだ?

 まったく、やすやすと連れ去られやがって」

「仕方が無いでしょう?

 海魔の中では別格のハバククが相手ですもの、

 並みの人魚では相手ではないわ」

「けど、

 乙姫を守っていたのも、人魚中では相当な剣術の腕前と聞いたけど」

「そうねぇ…」

「だったら、そいつらに取り返してもらえば良い、

 俺が出て行く筋合いは無い」

水姫の言葉に海人はそう返すと、

「まったく、子供なんだから

 海人…

 判っていると思うけど、

 乙姫はあなたにとって大事な人でしょう?

 その人が危機にあるって言うのに

 いつまで臍を曲げているのよ」

呆れたような表情で水姫は海人を諭す。

すると、

「だれが子供だってぇ」

水姫の最初の言葉に海人が絡むと、

「なによ

 そんなことで声を上げるところが子供だと言うのよ、

 大体、あなたは人魚達…海精一族の長なのよ、

 それなのに乙姫一人に全責任を押し付けて、

 こんなところでのうのうとしていて…

 少しは乙姫が可愛そうだとは思わないの?

 力になってあげようとは思わないの?」

相変わらずの海人の態度についに水姫がキレた。

「ふんっ」

水姫の怒鳴り声に海人はそっぽを向くと、

「あのね…

 それは海人には色々あったよ、

 でもね、それは乙姫の責任ではないでしょう、

 彼女だってある意味被害者なのよ、

 もぅいい加減にしなさいよ」

「………」

「大体、なんで乙姫がこの地上に来たと思っているの?

 あなたを探すためなのよ、

 竜宮を治めるには乙姫の力は限界にきているのよ、

 あなたの力が欲しいのよ

 そこを考えてよ」

「しかし…」

「なによ、まだこの間の”呪”のことを根に持っているの?」

「そんなわけじゃぁ…」

「あぁもぅいいわ

 あたしが乙姫を助けに行くわ、

 海人はそこでじっとしているのね

 ふんっ、この弱虫」

「なっ、ダレが弱虫だってぇ」

水姫が最後に言った言葉に海人がカチンとくるなり声を上げると、

「なによ、ヤルというの」

そんな海人に水姫は突っかかる。

すると、

「黙れ!!」

海人の怒鳴り声が響くと、

ヒタッ!

水姫の顔に右腕を向け、手を開いた。

「なに?

 コレ?

 あなたの術であたしを殺すと言うの?」

水姫は怯えもせずに海人を睨みつけそう言う。

「なに?」

「いいわよ、

 あなたは長ですもの、

 あたしを殺すのもあなたの自由、

 どうぞ、

 さぁ、あたしの頭を吹き飛ばしなさいよ、

 せいせいするでしょう、

 煩いのが居なくなって、

 さぁどうしたの、

 何を躊躇っているのよ、

 やりなさいよ、

 ほらっ!

 さっさとしなさい」

視界の遮る手の向こうにある海人の姿を見据え、

水姫はそう叫ぶと、

「なにを!!」

海人は怒鳴り、右腕に力を入れる。

すると、

ポゥ…

正面の掌に光点が姿を見せると、

「…海人のバカ…」

水姫はそう呟きそっと目を閉じる。

しかし、

「…くしょう…

 ちくしょう…

 ちくしょう…」

海人の口からその言葉が漏れると、

グッ

開いていた海人のてが光点を握り潰すように閉じ、

そしてその拳を振り上げ、

「あぁ、

 行ってやるよ!!

 この竜王・海人様がなぁ!!」

と怒鳴りながら振り上げた拳を一気に下へと振り下ろした。

その瞬間、

カッ!!

水姫の視界が翠色の光に覆われると、

ブワッ!!

猛烈な突風が襲う。

ドンッ!!

ゴワッ!!

「キャッ!!」

吹き荒れる突風に水姫は吹き飛ばされ、

壁に叩きつけられるが、

「…まったく、素直じゃないんだから…」

と海人の姿が消えた跡を見ていた。



一方、ここは犬塚邸…

「若っ」

「何事だ?」

「はっ

 ネコの防空防衛網に異変が発生しています」

犬塚家内のサロンで寛いでいた次期当主・藤一郎の傍らに、

犬塚家安全保障部の責任者が立つと、

猫柳邸に異変が発生していることを告げる。

「なに?」

責任者の報告に藤一郎の眉が動き、

振り向きながら聞き返すと、

「はいっ

 本日、18:00(イチハチマルマル)

 猫柳邸全土に第1級警戒警報が発せられ、

 猫柳防衛隊のF19ステルス戦闘機2機がスクランブル発進をしました」

「それで?」

「はっ、

 未確認は有りますが、

 その後、スクランブル機に撃墜命令も発せられたことです」

「撃墜?

 ただ事ではないようだな」

「はっ

 監視衛星のからの画像を分析をしましたが、

 定例となっている防空訓練とは思えません」

「そうか、

 一体、なにが起きているのだ?」

「はぁ、無線も傍受をしているのですが、

 高度なリアルタイム暗号処理が施されているために解読に手間取り

 どのような会話がなされているのか全容は不明です」

「バカな、

 この犬塚家の技術を持ってしても解読できないとはどういうことだ?」

「申し訳ございません

 それだけ高度な暗号技術を用いられておりますので」

「ネコめ…

 技術開発は怠っていなかったというわけか、

 判った。

 場合によってはネコから攻撃があるかも知れん、

 犬塚家全土に第2種警戒警報を発令。

 不測の事態に備えろ

 僕はすぐに安全保障室へ向かう」

責任者からの衝撃的な報告に藤一郎は腰を上げると、

そのまま犬塚家の防衛網を管理している安全保障室へと向かっていった。



そして、その猫柳邸では…

『繰り返す、

 未確認飛行物体は第2防空ラインを突破!!

 総員、白兵戦の用意を…』

「何だ?

 何が起きているのだ?」

格納庫に響き渡る放送にハバククは苦々しくスピーカーを見上げ吐きすてるように言うと、

『なにかなぁ?』

そんなハバククの態度に容器の中の真奈美もつられて不安そうに見上る。

しかし、

「ふふっ

 お前達は心配はしなくて良い、

 ここは分厚いべトンで固められた猫柳家A格納庫だ、

 仮に核の直撃を食らっても余裕で一家団欒を楽しむことが出来る。

 とはいってもお前達はここで寛ぐことは出来ないがな」

『なんですって?』

ハバククの最後の言葉に真奈美が反応すると、

「程なくしてお前達はこれからここを立ち、

 ある場所へと向かってもらうことにした」

腕を組み勝ち誇るようにしてハバククは答える。

『向かうって?

 どこへです?』

その言葉に乙姫が意味を尋ねると。

「あぁ南の島だよ、

 そう、コバルトブルーの綺麗な海に囲まれた種子島と言う島だけどね」

『種子島って鉄砲伝来の?

 他になにがあったっけ?

 でも、どうせ島に行くなら、種子島よりも屋久島にいきたいなぁ

 乙姫様知ってます?

 屋久島には縄文杉って大きな杉があって樹齢が5000年って言うんですよ』

『あら、そうですか、

 5000年も生きていらっしゃるだなんて、

 きっと、いろいろと物知りでなんでしょうねぇ』

「やかましい!!」

真奈美と乙姫のほのぼのとした会話に思わずハバククが怒鳴り声を上げると、

『きゃっ!』

二人の人魚は思わず身を縮こめた。

「まったく、

 いいかっ

 お前達が向かう先はその種子島にある大日本航空宇宙センターだ、

 そこであるものに乗り換えてもらう、以上だ」

拉致から大分時間が経過してもまったく応える様子のない二人に

苛立ったハバククは怒鳴るようにしてそう言い放つと、

コツコツ

靴の音を響かせ格納庫から去っていった。

『べぇぇぇぇ!!』

去っていくハバククに真奈美は舌を出した後、

『乙姫様…』

と不安そうに声をかけると

『大丈夫ですよ、マナ』

乙姫は確信に満ちた目でじっとハバククを見据えながらそっと竜玉に手を合わせた。



ひゅぉぉぉぉぉ…

「ねぇ、飛行機…何処か行っちゃったね」

夜の闇に姿を消したF19ステルス戦闘機の機影を探しながら夜莉子が声を上げると

「なぁに、

 猫柳邸が近づいてきたんで引かせたんだろう、

 それにしても機銃掃射をかけるかと思って、
 
 準備していたんだけど

 とりあえず助かったな」
 
沙夜子はそう返事をしながら胸に手を持って行き、

「パイロットはなにをしていたんだ?

 あれじゃぁスクランブル発進してきた意味がないのになぁ」

と沙夜子は首を傾げ、F19の行動を推理する。

その途端、

カッ!!

地上から一斉に十本以上の投光器の光の帯が空に投げられると、夜空の蒼王鬼を照らし出した。

「きゃっ、

 まぶしい!!」

「やっぱり」

悲鳴をあげる夜莉子をよそに

沙夜子は地上からの強烈な光から目を庇いつつ眼下の猫柳邸を見下ろした。

すると、

ドォォォォォン!!

ズドォォォォン!!

地上から一斉に射撃が始まると、

バァァン!!

沙夜子たちが乗っている蒼王鬼の周囲に衝撃波と共に次々と裂弾の華が開いた。

「きゃぁぁぁぁ」

ごわぁぁぁぁぁ!!!

「ちぃぃ!!」

夜莉子の悲鳴の中、

沙夜子は素早く護符を懐より取り出すと、

ピキィィンッ!!

蒼王鬼の周囲に結界を張る。

その途端、

カカカカ…

その結界に裂弾より飛んできた弾を弾き返した。

「まったく、どこが互角だよ…

 とはいっても無抵抗というのも面白くないか、

 よし、蒼王鬼っ

 このまま突っ込め!!、

 下の連中を蹴散らすぞ!」

沙夜子は蒼王鬼の頭を

ペンッ

と叩いて命令を下すと、

ごわぁぁぁぁぁ!!!

蒼王鬼は雄たけびを上げ一気に降下を始めだした。

「ちょちょっと、

 小夜ちゃん、

 おっ落ちる

 落ちているよ」

墜落をしているかのように降下し始めた蒼王鬼に夜莉子が悲鳴を上げると、

「なに怖がっているんだよ、

 これくらいのことでいちいち悲鳴をあげるなっ

 いいか、突撃って言うのはなっ

 こうやるんだよ!」

そんな夜莉子をたしなめるように沙夜子は怒鳴り、

「いけぇぇぇぇ!!

 蒼王鬼!!

 連中を蹴散らせ!!」

とハッパをかけた。



一方地上では、

カッ!!

夜空に向かって投光器から一斉に光を発せさせると、

その幾本もの光の帯が重なった先に一体の飛行物体の姿が浮かび上がる、

「よいかっ

 空軍はあてにならぬ

 猫柳は我が親衛隊が断固死守する。
 
 猫柳の敷地に侵入者を一歩も入れるなっ

 全門開け、

 射撃開始!!!

 撃って撃って撃ちまくれ!!!」

F19を退け猫柳邸上空に達したその飛行物体を睨みつけながら

猫柳親衛隊・大手門警備隊の隊長が帯刀を引き抜き命令を下すと、

ガコン!!

一斉に迫撃砲が夜空に向かって首をあげ、

ドォォォン!!

ドドォォォォン!!

ズドドドォォォォン!!

それを合図に空を睨む迫撃砲が一斉に射撃を開始した。

そして、

程なくして、その飛行物体が落下を始めだすと、

「やったぁぁ!!!」

各所に配属された警備隊員から喝采が沸き起こった。

しかし、それもほんの束の間、

落ちてくる物体の詳細が見えてくるにつれ、

見る見る隊員たちの表情が引きつっていくと、

「なっなっ」

皆一斉に空に向けて指をさした。

その途端、

ごわぁぁぁぁぁぁ!!!

おびえ始めた隊員たちに止めを刺すように落下してくる大鬼・蒼王鬼が雄たけびを上げると、

「うわぁぁぁぁぁ!!」

「鬼だぁぁぁぁ!!」

「お助けぇぇぇぇ!!」

間近に迫ってきた蒼王鬼の姿に隊員たちは我先にと逃げ出しはじめだした。

「こらぁ!!!

 逃げるなぁ

 栄えある猫柳親衛隊の名を汚すような

 敵前逃亡は銃殺だぞ!!」

警備隊長は逃げ始めた隊員たちに向かって怒鳴り声を上げるが、

ゴッ!!

猛烈な突風と共に蒼王鬼が隊長のすぐ上を一気に通り抜けていくと、

「ナマダブナマダブ…」

隊長はその場に座り込み

仏の慈悲に縋ろうとひたすら手を合わせていた。



「あははははは!!

 行け

 行けー」

蹴散らすとはまさにこのこととばかりに、

蒼王鬼の上に跨り上機嫌の沙夜子がさらにけしかけると、

「よーしっ、

 火を吐け!!!」

と命令をすると、

ごわぁぁぁぁぁ!!

カッ!!

ゴォォォォォォ!!!

蒼王鬼は雄たけびを上げ、その口より火炎を吐いた。

すると、

その火炎に隊員達が逃げ出し放置されたままの使用前の砲弾が引火し、

次々と誘爆を始めだした。

「ちょっちょっと

 小夜ちゃん、
 
 やりすぎよ、やりすぎ!!」

紅蓮の炎に焼かれ、崩れ落ちていく迫撃砲の様子に夜莉子は顔を青くすると、

「なぁに、

 人間はみんな逃げ出して居るんだ

 大丈夫大丈夫」

と気にしないような発言をする。

「そっ

 そう?

 でっでも

 あのおじさん、大丈夫かぁ」

夜莉子は振り返りながらさっき通り過ぎた男性のことを指摘すると、

「構わない、構わない、

 だって、アイツ、

 さっきあたし達の攻撃を指揮した奴だから

 丁度良いお仕置きだよ」

と沙夜子は返事をする。

「え?

 そうなの?」

沙夜子の言葉に夜莉子は驚き、

「へぇ…小夜ちゃんって目が良いんだぁ…」

と感心すると、

「(別に、見たわけじゃぁないよ、

  だいたい、指揮車の上であんな格好をして居れば簡単に判るだろう)」

そんな夜莉子を横目で見ながらそう呟いていた。

ごわぁぁぁぁぁ!!!

猫柳親衛隊を事実上壊滅させた蒼王鬼は雄叫びを上げると、

ぎゅぅぅぅぅぅん!!

沙夜子と夜莉子を乗せ猫柳邸奥深くへと突き進んでいく、

しかし、次第に炎の明かりは見えなくなり、

夜の闇が蒼王鬼を包み込んでも一向に目的地である猫柳邸本宅の姿が見えてこない。

「ねぇまだ着かないの?」

行けども行けども続く闇についに夜莉子が音を上げると、

「(おっかしいなぁ…方向はコレで合っているはず)」

そう呟きながら沙夜子は蛍光塗料が塗られているコンパスを取り出し方向を確認していた。

とその時、

フォン…

沙夜子の胸元に仕舞ってある雷竜扇が反応をした。

「え?」

そのことに沙夜子が気づくと、

「どうしたの?」

沙夜子の反応を見ていた夜莉子が声を掛ける。

「雷竜扇が…」

夜莉子の声に応えるように沙夜子は懐より雷竜扇を取り出すと、

ブワッ

まるでその時を待っていたかのように雷竜扇よりオーラが吹き出すと、

シュンッ!!!

ある一点に向けて光の帯が伸びていった。

「これって?」

「人魚の竜玉が近くにある…

 それも、相当強い奴だ」

光を伸ばす雷竜扇に驚く夜莉子に沙夜子はそう返事をすると、

「…これくらいの力を持っている者って…

 まさか…竜王か、竜宮の乙姫…か」

フィォォン!!

一向に衰えることのない雷竜扇の輝きに沙夜子はそう呟くと、

「蒼王鬼っ

 この光の方へ向かって飛べ!!」

と蒼王鬼に命じた。



「なに?

 大手門を固めていた猫柳親衛隊が壊滅しただと?」

執務室に戻ってきたハバククに部下から謎の侵入者によって猫柳親衛隊が壊滅させられたことが告げられると、

「はいっ

 生存者の話を総合しますと

 巨大な鬼とその鬼に跨った少女二人による犯行と思われます」

と部下は返事をする。

「なんだ?

 その巨大な鬼とは?」

「はぁ?

 詳しいことは…」

「追跡は?」

「申し訳ありません、

 高度なジャミングが施されているようで、
 
 廷内に侵入されたことは判ってはいるのですが、
 
 侵入時点で発生した大規模な爆発の際にロスト

 レーダー並びに衛星からの探査を行っているのですが、
 
 未だ補足しておりません」

「探せ、

 会長の留守中の失態は厳罰ものだ

 なんとしても探し出すのだ」

ハバククは部下にそう命じると、

「はっ!!

 直ちに」

ハバククの命を受け部下は執務室から飛び出していった。

「ふんっ

 鬼だとぉ…
 
 非常識な…」

執務室に一人残ったハバククは鼻で笑いながら、

パソコンで乙姫達の輸送の手続きをはじめ出す。

そして、すべての手続きが完了したとき、

ピタッ!

マウスを握るハバククの手の動きが止まり、

「しまった!!」

ガタン!!

その声とともにハバククは慌てて腰を上げた。



キィィィィン…

『乙姫様…

 竜玉が…』

光を放ち始めた乙姫の竜玉を真奈美が指摘すると、

『えぇ

 水の力を使うものがこちらに向かって来ています』

と乙姫は返事をした。

『まさか、

 櫂が?』

乙姫の言葉に真奈美は表情を明るくして尋ねると、

『いいえ

 これは櫂さんのものではありません。
 
 でも、力強いものです』

乙姫は近づいてくる者が櫂でないことを告げるが、

しかし、相当な力を持つ術者であることを告げた』

『えぇ

 一体誰なんだろう?』

その言葉を受け、

真奈美はさっきハバククが出て行き固く閉ざされたドアの方を期待を込めた目で見つめる。



ごわぁぁぁぁ!!!

闇夜に蒼王鬼の雄叫びが響き渡る。

「蒼王鬼

 こっちだ…

 だんだん強くなってきている」

光り輝く雷竜扇の反応を見ながら沙夜子は蒼王鬼に次々と指示を出す。

「ねぇ、

 まだなの」

身を乗り出し夜莉子は沙夜子に行き先を尋ねると、

「もぅ少し…

 相当近くなってきている」

雷竜扇を眺めながら沙夜子は返事をする。

すると、

ゴォォォォォォォ!!!

地をはうようにして飛ぶ蒼王鬼の真上を大型ジェット輸送機・A380Fが

エンジン音を響かせ押しつぶすように飛来してきた。

「うわぁぁぁ

 大きい!」

「なに?

 A380F?
 
 もぅ就航していたのか」

大型の機体を見上げながら夜莉子・沙夜子はそれぞれの反応し、

そして、輸送機は蒼王鬼の行く手に姿を見せた滑走路へと着陸をしていく、

「ねぇ、空港よ」

「本当だ」

雷光が明滅する闇夜より沸き上がるように姿を見せた空港に二人は驚くと、

シャッ

雷竜扇より発する光の帯はその空港へ向かって投げられていた。

「どうやら、あの空港にあるらしいな…

 この雷竜扇を呼ぶ何かが…」

着陸し誘導路へと入っていく輸送機の機影を見ながら沙夜子は呟くと、

「いけっ、蒼王鬼!!!」

と自分が跨る大鬼・蒼王鬼へ命じた。



そのころ、

コォォォォン

コォォォォン

海中を移動していく竜彦と櫂を追いかけながらも

臨戦態勢に入っていたシーキャットと百日紅は

お互いの距離を近づけながらも

相手に悟られないように攻撃をするタイミングを計っていた。

そして、先に動いたのは百日紅の方だった。

「魚雷発射管に注水!!」

我慢比べに苛立った幻光忠義が命令を下すと、

ゴォォン!!

百日紅の艦首にある8本の魚雷発射管に注水が始まる。

そして、その音はほぼ同時にシーキャットも捉え、

「館長!!

 サルの潜水艦より魚雷発射管への注水音と見られる音を確認いたしました」

音響探査班よりの報告がなされると、

「なに?」

シーキャットの司令室に緊張が走る。

しかし、

「そうか、この勝負、我らの勝ちだな」

緊張の中、猫柳泰三は余裕の表情を見せながらニヤリと笑った。



『どうしたんだよ竜彦

 妙にゆっくりじゃないか…』

急に速度が落ちた竜彦に櫂は話しかけると、

『なぁに

 俺たちをつけてくる奴の顔を見てやろうと思ってな』

ジロリ

目だけを動かし竜彦はそう答える。
 
『え?

 つけられているの?』

竜彦の言葉に櫂が慌てて返事をすると、

『振り向くなよ…

 って言っても、ここは海の中か、
 
 あぁ、でかいのが2匹、
 
 俺たちをぴったりとマークしている。
 
 さて、このまま竜宮に行くわけにも行かないから、
 
 カナっ
 
 まくぞ!!』

竜彦はそう言うと、

グン!

大きく右に進路を変えた。



つづく


← 29話へ 31話へ →