風祭文庫・人魚の館






「五十里の野望」
(第12話:オリハルコン)


作・風祭玲
(RB原案・TWO BIT)


Vol.095





この話を読む前に”レンタルボディ編:ヒミコシリーズ”
並びに”色々なお話:No11 ウルトラナイン”
を読まれますとちょっぴり味が濃くなります。

「ヒミコ」シリーズの詳細については


http://www2u.biglobe.ne.jp/~bell-m/bunko/rb/index.htm


を参照して下さい。


「ウルトラナイン」の詳細については

http://www2u.biglobe.ne.jp/~bell-m/bunko/dabun/29.htm


を参照して下さい。



なお、「RENTAL BODY」シリーズの詳細については

http://homepage2.nifty.com/~sunasan/indexj.html


を参照して下さい。





シュォォォォォン

UFOの上下にせり出したオリハルコンの結晶が淡く光り輝き出す。

「出力40%にて発射準備完了!!」

「よぉぅしっ」

「まずは手始めに五月蠅い防衛軍を追い払え!!」

五十里の命令が飛ぶ、

「はい」

「【アクア=レイ】発射っ」

と桂が叫んで、発射ボタンを押した。

ギィィィィン

淡く光っていたオリハルコンの結晶の光が鋭くなったとたん、

バリバリバリ

オリハルコンの周囲に盛んに稲光が現れる。

やがて、

ボゥ…

光の粒子がUFOの周囲に沸き上がり、

それが徐々に側面へと移動すると、

やがて光のサークルへと変化した。

シュゥゥゥン

そのサークルが一点に収束したそのとき、

シュパァァァァァァァン

翠色の光の帯となって防衛軍機めがけて発射された。

「なっ?」

とっさに富士田はファイターを回避させる。

しかし、

ズドォォォォォン

回避し遅れた大型VTOLが直撃を受けた。

「しまった!!」

側面から煙を噴きながら徐々に降下していくVTOL

やがて、大音響と共に爆発を起こす。

「やった!!」

VTOL撃墜に喜ぶUFO船内。

「続いて第2射、発射用意」

再び五十里が指示を出す。



「すげぇ……」

僕がUFOの必殺兵器の威力に唖然としていると、

「あなた、感心している場合じゃないわよ」

ミールがUFOを睨みながら言う。

「え?」

「あれは、あたし達の祖先が作ったオリハルコンの力を使った兵器よ」

「オリハルコン?…」

「オリハルコンって……」

と訊ねると、ミールは考える顔をして、

「ん〜と、こっちではなんて呼んでいるかは知らないけど…

 あなた、翠色の玉……持っているでしょう?」

「えぇっ、じゃぁ……”オリハルコン”ってコレのこと?」

と言って竜玉を取り出してみると、

「そう、それ」

「知っていると思うけど、オリハルコンはあたし達の力の源」

「あなたがいまそうやって飛んでいるのも、

 その持っているそのオリハルコンのお陰…」

とミールは説明してくれるが、

しゅぅぅぅぅぅん

手にした僕の竜玉から霧のようなものが立ち上り、

それがUFO目がけて流れ始めだした。


「こっこれは……」

「やっぱりね」

「船の周りのエネルギーを吸い尽くしたものだから、

 あたし達のエネルギーを吸い取り始めたわね」

「なっ……に?」

「あの兵器は自分でエネルギーを作れないから、

 こうして周囲のエネルギーを吸い取る仕組みになっているのよ。

 しかも、まずいことに、あたし達の力だけでは足りなくて、

 この星からも力を吸い取っているわ……」

ミールは厳しい目つきでUFOを見つめた。

確かに、UFOの直下の地上からも霧が立ち上り、

それがUFOへと取り込まれていた。

そして、

シュバァァッァァァン

第3射目が発射された。

すでに防衛軍は散り散りになり、UFOのなすがままになっていた。

『隊長っ、どうします?』

部下からの問いかけに富士田は苦悩した後、

「くっそう…ダメだ、一旦待避」

と命令を下すと、

「……雪子…後はお前しかいない…」

と言って富士田はウルトラナインを眺めた。

しかし、ウルトラナインは例の怪獣となにやら話し込んでいるようだった。

「それにしても何やってんだ?アイツは………」

富士田は不審に思いながらファイターを離脱させた。



ゴボゴボゴボ

「なっなんだ?」

地上で警戒中の防衛軍隊員が、

マンホールの中から異音が響いているのを聞きつけた。

「どうした?」

「あっ、マンホールの中から異音が」

「マンホール?」

他の隊員がマンホールに近づいた瞬間。

ボォォォォォン

マンホールの蓋が吹き飛ぶと水柱が立ち上った。


「なっ、なんだぁ」

「うわぁぁぁぁぁぁ」

ずぶぬれになって、逃げまどう防衛軍隊員達。

しかし、その光景は都内の各所で発生していた。



「つまり、あれが稼働していると僕達のみならず

 この星からも”力”を吸い取っているわけですか?」

僕が訊ねると、

「そうよ」

ミールが答える。

「でも、星の力を吸い取るなんて……」

「あなた、”ガイア”と言うのをご存じ?」

「えぇ、話だけなら…」

「確か、この地球を一つの生命体としてとらえたものとか…」

「じゃぁ、もぅ一つ」

「?」

「生命が生きていく上で絶対に欠かせない物は?」

「…やっぱり、水かな」

「正解」

ミールは笑って答える。

「そう、つまりこの星の生き物はすべて水の力によって支えられているのよ、

 そして、その水は滞り無くこの星の中を循環しているわ」

「あっ…ってことは、あのUFOは……

 その力を吸い取って、ビーム砲を撃っているんですか?」

「大正解」

「見て、下を…」

そう言ってミールは地上を指さす。

地上のあちらこちらで、水道管が破裂したかのように水が噴き出していた。

「何時の間に…」

僕が驚いていると、

「水の力を無理矢理抜き取っている、その影響よ…」

「じゃぁ、このままだと」

「いまは、強い力を持っているあたし達やガイアから抜き取っているけど、

 そのうち、人間や他の生き物からも吸い取り始めるわ、

 そうなったら、それこそ一大事よ」
 
ミールは厳しい目で僕を見る。


「でも、驚いたわ、まさか地上人があんな遺物を掘り出していたなんて」

「遺物…?」

僕が訊ねると

「そう、あれはねぇ、ずっと昔…

 よその星とちょいとイザコザがあったときに使われたものなのよ」

「よその星?イザコザ?」

「まぁね、で、その後、こんな物騒なものはいらない。

 と言うことで捨てたって聞いていたんだけど……」

とミールが言ったところで、

「それを五十里達が手に入れたのか……」

と僕が考えながら答える。

「え?五十里って言うの、アレを動かしているヤツは…」

ミールは驚いた顔をした。

「五十里を知っているんですか?」

「えぇ、向こうであたし達をしつこく追いかけ回していた人物だわ、

 最近、姿が見えなくなっていたのでほっとしていたんだけど、

 確かに、あいつならこんな騒動を起こしかねないわ」

そう言いながらミールは呆れた顔をする。

「替わりに僕がこうして追いかけられましたけどね」

僕が付け加えると、ミールはクスッと笑った。



「ふぇっくしょいっ」

UFOの船内に五十里のくしゃみがこだまする。

「どうした五十里、風邪か?」

夏目が顔を向ける。

「いや、何でもない」

「だれか噂でもしているんじゃないですか」

桂が茶化すが、五十里はジロリと見ると、

「何をしている、早く第5射目の準備をしろ」

と一言指示を出した。



シュォォォォォォン

パリパリパリ

結晶に放電が始まった。

すると

ズォォォォォォォォ

オリハルコンが僕たちの力を吸い取り始めた。

「5回目の発射だわ」

「くっ」

「力が吸い取られる……」

「カナ……海母様の鰭が…」

マナが下の鰭を指さす。

「あっ」

下に見える鰭は沸き出した霧でまるで彗星のような姿になっていた。

無論、その尾の先は、五十里達が乗ったUFO……



「東京消防庁並びに警視庁に入った情報によりますと、

 現在、都内各所にて浸水が発生しているとのことです……」

TVは都内各所で発生し始めた異変を報じだした。

「まずい事になったわねぇ」

綾乃はTVを見ながら困った表情になる。

「なんで?」

香奈が聞き返す。

「あの円盤が水の力を大量に使っているから、

 竜脈が上昇し始めだしたんだわ」

「水の力?」

「そう、あたし達の竜玉が持っている力でもあるんだけど」

「あまりにも大量に使うものだから、

 地下の竜脈が上に持ち上げられ始めたのよ」

「じゃぁ、このままだと……」

「下手をすると東京が沈んでしまうかもしれないわね」

「えぇ……」


ピコンピコンピコン

ウルトラナインのカラータイマーが点滅をし始めた。

「まずい……ウルトラナインが……」

僕はウルトラナインを見るとある決断をした。

「ウルトラナイン……すまないがマナ達を先に海へ連れていってくれないか」

「じゅわ」

「えっ、カナはどうするの?」

「僕はあいつを止める」

「あたしもいく」

「駄目だ、マナはウルトラナインと共に海に行って、

 海母様の鰭を乙姫様に届けてくれ」

「でも」

「頼む、これはマナでしかできない役目だ」

しばらく沈黙をした後、

「……判ったわ」

マナは頷くと、

「……カナ…無事に帰ってきてね」

マナがそう言うと、僕は彼女の頭をなでた。

そして、僕はウルトラナインの掌の上に着地すると水の衣を解いた。

ぼて

きゃっ

ごろん

掌の上にこれまで抱えてきたものが転がり落ちる。

「よし」

僕が再び水の衣を装着しようとしたとき、


「ちょっと待った」

「ずいぶんといいカッコするじゃない」

ミールが口を挟んだ。

「え?」

「あたしも手伝うわ」

「でも…」

「あの船は我がアトランの船ですから、あたしにも責任の一端はあるわ」

「しかし……」

「あなただけにそんないい格好はさせないわよ」

とミールは言うと片目をつむった。

「すみません」

「じゃぁ、竜彦、マナを頼みます」

「おいおい、失礼な奴だな」

「え?」

「俺も行くぞ」

「えぇ竜彦もか?」

「何言ってんだ、アトランの連中が戦うと言うのに、

 竜族の俺がここを離れるわけには行かないだろう」

そう言うと、竜彦は僕を自分の頭の上にひょいと乗せた。


そのとき、シシル・ルシェル・サルサの3人が、

そーっと

この場から離れようとしていた。

「どこに行くの?お嬢さん達」

いつの間にかミールが3人の後ろに立つ。

「あっ、ミール、なんだか、話が長引きそうだから、

 あたし達は先にアトランに帰ってようと思って…」

笑みを浮かべながらそう答えるシシルにミールは、

「なるほど」

と感心するそぶりをする。

「じゃぁ、あたし達はこれで……」

「お待ちっ!!」

そそくさと退散しようとするシシルの尾鰭を掴むと、

「あんた達にはこれから罪滅ぼしの一仕事をやってもらうわよ」

「えぇ〜っ」

イヤそうな顔をするシシル達3人。

「もしも、このまま帰ったら、

 市中引き回しの上、打ち首獄門。

 けど、あたしのお手伝いをしてくれたら、

 お仕置きの割引を考えてあげてもいいわよ」

ミールが笑顔で提案すると、

「そんな…」

「汚いぞ…」

シシル達は文句を言うが、

「何か文句ある?」

ミールの一言で借りてきた猫のようにおとなしくなった。

「よろしい、人魚は素直が肝心よ」

と言うとニコリと微笑んだ。

それとは正反対に青くなる3人娘。


「さぁて、では、一丁暴れますか」

ミールは大きく背伸びをするとグッと身体に力を入れる。

すーっと、一つにまとまっていく足。

足先に大きく広がる鰭。

じわりっと湧き出た青緑の鱗が妖しく光る。

「ふぅ」

大きく息をつくと、

「これはじゃまね」

と言って服を脱ぎ始めた。

「うわぁぁぁぁ、綺麗な人だな」

僕は思わずミールの身体を眺める。

「なによ、男みたいに人の身体をじろじろ見て」

ミールの一言で、はっと我に返ると、

「いっいや、僕とは違う身体なんだなぁ……ってね」

っと言い訳をしていると、

「そう?」

と言いながら、ミールは身体を比較し始めた。

「ホントだ、あなた達とは違うわね」

としみじみと言う。

「じゃぁ、カナさんって言ったっけ、行くわよ」

ミールが僕に声を掛けると、先に動き出した。


そして、

「さぁ、あなた達も十分目立ってくるのよ」

とシシル達に言うと、彼女が乗っている水竜の背中を次々に叩いた。

すると水竜は、

うぉぉぉぉぉん

と言う声を上げるとUFOへと向かって行った。

あとから彼女たちの悲鳴が風に乗って流れてくる。


「可哀想に……」

うちの乙姫さまも結構人使いが荒い…と思っていたけど、

上には上がいるもんだなと実感した。

そして同時にそんな人物を上司を持った彼女たちに思わず同情してしまった。


「じゃ、マナ……行って来る」

「気をつけてね」

マナが手を振ると、

しゅわっち

キィィィィン

ウルトラナインはマナを大事に抱えるようにして南へと向かっていった。

「カナっ、必ず海に帰ってきて…」

マナの叫び声が響いた。

僕は右手を挙げてそれに応える。



「五十里、ウルトラナインが去って行くぞ」

夏目が飛び去っていくウルトラナインを指さすが、

「放っておけ、それより見ろ、

 ひぃ・ふぅ・みっ……5人の人魚が残ったぞ」

五十里は笑みを浮かべると、

「おい、網の準備は出来たか?」

「えぇ……いつでも」

桂が答える。

「ようし……すぐに打てるようにしておけ」

「連中を一網打尽にするぞ、大漁旗の準備を怠るな」

「はははははは……」

五十里の笑い声が響く、


ふぉぉぉぉぉん

五十里の命令でUFOは移動をし始めた。

「向こうもこっちに向かってきたわよ」

ミールは動き出したUFOを指さす。

「んなろう!!」

”重い荷物”をウルトラナインに託したお陰で身軽になった僕は、

一気にUFOにめがけて突撃しようとしたとき、

「お待ちなさい」

ミールが僕を止めた。

「え?」

「力ずくで解決しようとしても駄目よ、

 相手はあたし達の力を吸い取ってしまうから、
 
 攻撃は注意深くしないとね」

「どうすれば」

「なぁに、頭を使うのよ」

「あたま?」

「うふふふ、あたしにいい考えがあるわ」

ミールはそう言うと、悪戯っぽく笑った。

「ちょっと耳を貸して……」

ポショポショ

「え?真上と真下?」

「そう……この手の物はねぇ、

 昔っから真上と真下が弱点と言うのが相場なのよ」

ミールは自信たっぷりに言う、

「そう言うモノなんですか?」

「そうよ」


「ねぇ、聞いた?」

「うん、わたし初耳……」

「ミールのいけないと所って、思いついたことを、

 あたかも本当の対策のようにして言いくるめるところなのよねぇ」
 
「あたし達も結構それに泣かされたわ」

いつの間にか戻ってきていたシシル達がひそひそ話をしていると、


ミールはキッと睨み付け、

「あなた達、いつ戻ってきていいって言った?」

と怒鳴る。

「やば……」


シシル達がコソコソと動き始めると、

「じゃぁ、僕が上を……」

「あたしは下から攻撃をするわ」

ミールはそう言うと、シシル達に、

「あんた達は連中の目をしっかりと引きつけておくのよ」

とクギをさした。

「へーぃ」

と言う返事を残して3人は再びUFOへと向かう。

僕とミールもその後に続いた。



ミールを分かれた後、僕はUFOの上層部へと向かった。

「よーし、コレまでの借りを一気に返してやる」

僕は”竜牙の剣”を取ると力を込めた。

シュン

っと翠色の刀身が伸びる。

「竜彦…頼むぞ」

下の竜彦に言うと。

「任せておけって……」

「行けっ」

「おうっ」

僕と竜彦が突っ込んでいったとき、


UFOの内部では、五十里はある準備していた。

「五十里……何を始める気だ?」

怪訝そうに見る夏目に五十里は、

「いや、せっかく人魚達が戻ってくるんだから、

 嫌われないように歓迎をしてやろうと思ってな」

そう言うと、

全身黒タイツ姿になり、隣に部屋へと入っていった、

光が一斉に五十里を照らし出す。

すると、

ぱぁぁぁぁ…

UFOの上部が光り出すと、巨大な男の上半身がムクリと起きあがってきた。

「いっ五十里………」

僕が驚いていると、

巨人の五十里は両手を広げ

「よくぞ、戻ってきてくれた我が娘よ……

 パパはお前の帰りを待っていたぞ」

と言い、そして抱きしめるポーズをとった。

「誰がパパで……誰が娘じゃっ」

僕はそう叫ぶと竜牙の剣を構えた、

「竜彦っ、あいつをぶった切るっ」

「よし判った」

と竜彦は言うと、一気に巨大五十里に接近していった。

側まで来ると、僕は、

「うりゃぁぁぁ」

と剣に力を込めた。

グググググ…

刀身が伸びる。

そして一気に巨人の五十里を真っ二つに切り裂いた。

ズバッ………

うぉぉん

切り裂かれた五十里はまるで砂糖がお湯に解けていくように消滅する。

「けっ、ざまぁ見ろっ」

「よしっ、行くぞぉ…」

僕はUFOに接近すると、

大量の水玉弾をUFOとオリハルコンに目がけて放った。

ボ・ボ・ボ・ボ・ボ…

炸裂する水玉弾。



「ふっ、嫌われたものだな」

夏目が五十里に言う

「ふふふふふ……」

「私に恥をかかせるとはいい根性だ

 可愛さ余って憎さ100倍」

そう五十里は呟くと、


「【アクア=レイ】発射用意、出力を60%であの人魚を撃て」

と命令した。

「まて、出力50%以上は側面からの攻撃は不可能だし、

 人魚があまりにも接近しすぎている」

相沢が言うと、

「かまわん、それならこの船をヤツから少し離してミラーを使えっ」

と叫んだ。

「ミラー……」

相沢は思わず絶句した。

そして、頭の中で言葉を探しながら、

「しかし……ミラーと使うとなると……本社の許可を取らないと」

と進言すると、

ドンっ、

五十里は机を叩き、

「いちいち本社のことを口にするなっ

 わたしが撃てと言えば、さっさと撃つんだ」

と命令をする。

「はっはい」

驚いた相沢が準備を始める。


シュォォォォォォン

オリハルコンの結晶が光り出す。

「もぅ、これからと言うときに……」

ミールは悔しそうにオリハルコンを眺めると、UFOから離れ始めた。

「今度は、出力を上げた見たいね」

そう言いながら猛烈な勢いでUFOにそそぎ込む気の流れに驚いていた。



ぐぃぃぃぃん

衛星軌道上に浮かんでいる古ぼけた人工衛星が数千年ぶりにその眠りから目覚めた。

傘を広げるようにゆっくりと骨組を広げると、

たちどころに鏡状の膜が張り、与えられた方向を向く。

そして、それ以外にも数個の衛星が同じ作業を行っていた。

「ミラーの準備完了、A−2・A−5・B−1・C−9の4個を使います」

「C−9の線上に人魚が来るまであと2分」

相沢の報告に

「ようし……焼き魚にしてくれる」

五十里はターゲットの人魚をじっと見つめていた。



「なんですってぇ……」

「ミラーが動いているですってぇ」

リムルからの緊急通信にミールは声を上げた。

「そう、ついいまし方なんだけど、4個のミラーが稼働を始めたわ、

 目標はミラーの向きから見ておそらくあなた達」

「無茶なことを……」

「とにかく早く、その場から逃げなさい」

と言うリムルの忠告に、

「あたしは既に離れているけど……あの子がまだ…」

ミールはそう返事をすると、

UFOの上層部にいるカナの様子が気になっていた。



「ぐわぁぁぁぁ」

「おわぁぁぁぁぁ」

そのとき僕と竜彦は猛烈に自分の力を吸い取られ難儀していた。

「まずい、このままだと……」

しかし、僕たちは殆ど釘付けの状態になっていた。

「竜彦っ、何とかならないか」

「無理だ……、こうしているだけで精一杯だ」

竜彦は踏ん張るコトのみに集中していた。

そして、UFOが少しずつ離れ始めていた。



「人魚との間合いが取れました」

「よしっ、発射っ」

五十里の命令が下りると、

ギィィィィィィン

オリハルコンが眩しく光り、

シュゴォォォォォォォォン

今度は真上に向かってビームを放った。

「上?」

耐えながらビームの行方を見ていると、

「そこで何をしているのっ

 あれはあなたを狙っているのよ」

ミールが駆けつけるなりそう怒鳴った。

「僕を……?」

「あっ」

真上に打ち上げられた光が突然角度を変えると、

次々と角度を変え、そして4回方向転換をするとまっすぐこっちに向かってきた。

「うわぁぁぁぁ」

「くっ」

ミールはとっさにバリアを張ると僕たちに体当たりをするようにして、

下へと引きずり降ろした。

ブォォォォォォォ

目の前を翠色の帯が走る。

「うわぁぁぁぁ」

「くぅぅぅぅぅ」

バリバリバリ

ミールが張ったバリアが激しく反応する。


「到達直前に人魚が場所を移動しました」

報告を聞いた五十里は、

「くそぅ、運のいい奴め」

と言うと、

「次は出力80%、発射用意」

と次の指示を出した。



つづく


← 11話へ 13話へ →