風祭文庫・人魚の館






「五十里の野望」
(第11話:切り札)


作・風祭玲
(RB原案・TWO BIT)


Vol.094





この話を読む前に”レンタルボディ編:ヒミコシリーズ”
並びに”色々なお話:No11 ウルトラナイン”
を読まれますとちょっぴり味が濃くなります。

「ヒミコ」シリーズの詳細については




http://www2u.biglobe.ne.jp/~bell-m/bunko/rb/index.htm


を参照して下さい。


「ウルトラナイン」の詳細については

http://www2u.biglobe.ne.jp/~bell-m/bunko/dabun/29.htm


を参照して下さい。



なお、「RENTAL BODY」シリーズの詳細については

http://homepage2.nifty.com/~sunasan/indexj.html


を参照して下さい。





『…只今入った新しい情報によりますと』

『鹿島灘沖に謎の怪物が出現、

 現在千葉県内・成田市付近を西南西に向かって移動してるとのことです』

『政府は午後1時、緊急対策会議を開き、防衛軍に対し………』

『JRは午後1時以降の総武線・成田線……の運行を見合わせると共に…』

『では成田空港と中継がつながりましたので………』

『………』

TVはUFOvs防衛軍のド突き合いから、

千葉に現れた謎の怪物のコトを報道しはじめた。

「ねぇ…母さん、この海から来た怪物って何かな?」

TVを見ながら香奈が訊ねると、

「あれ?」

さっきまで横にいた母・綾乃の姿が見えなくなっていた。

「母さん?」

香奈が探し始めると程なくして、

「はい…はい…」

綾乃の声が庭の方から聞こえてきた。

「母さん、池に向かって……一体何をやっているんだろう?」

そっと庭の様子をうかがってみると、

綾乃は池に向かって誰かと喋っている様子だった。


「そうですか……」

『…………………』

「で、乙姫さまは、なんと……」

『…………………』

「はぁ…」

『…………………』

「わかりました、では、我々は動くな…と言うことですね」

『…………………』

「はい、ではそのように他の者に伝えます」

そう言い終わって綾乃が立ち上がったとき、

「なにやってんの?」

香奈がうしろから声を掛けた。

「きゃっ………あっ香奈か」

「失礼ね、実の娘に驚くことはないじゃない」

香奈は腰に手を置いて怒る素振りを見せると、

「あぁ、ごめん」

綾乃は軽く謝り、

「いま、竜宮と話をしていたのよ」

池を指さして説明をした。

「竜宮と?」

「”遠話”って言ってね、

 ”水の道”で繋がっている所なら会話をすることが出来るわ」

「へぇ………」

「もっともその分、力を使うので長話は出来ないけどね」

「で、何を話していたの?」

香奈が尋ねた。

「ちょっと、ややこしい騒動が起きてね」

「………あっ、まさか…いまTVで騒いでいる海からの怪物のこと?」

と香奈が言うと、綾乃はややまじめな顔になって、

「香奈、アトランティス…のこと知っているわよね」

「アトランティス?」

「うん、以前教えてもらった…大西洋を治めている海精族のこと?」

「そうなんだけど…」

「実は今朝ほど、向こうから竜宮に緊急の連絡があって」

「なんでも、向こうの問題児が警備の手薄な北極を

 通り抜けてこっちに向かった。って言ってきたのよ」

「なにそれ」

「で、向こうでも大騒ぎになっているらしいんだけど」

「で?」

「それで、向こうからその件に関して竜宮にお詫びと依頼があって…」

「なんでも、向こうの責任で侵入した者を回収をするので」

「その回収部隊を大平洋に入れさせてくれ。って言ってきたらしいの」

「まぁ」

「で、うちとしても、いま…櫂のことで手一杯でしょう」

「うん、だから、アトランティスのコトは取りあえずアトランティスに任せて」

「あたし達は、やってきたアトランティスの者とは接触をするな。ってことをね」

「ふ〜ん」

「でも、変なの?」

「なんで?」

「だって、折角やってきた人に見て見ぬ振りをしろって変よ」

香奈は力説するが

「その辺は昔からの色々な経緯があるから、

 私がとやかく言える筋合いではないけど…」

「まぁ、そう言うコトよ」

そう言うと綾乃はパタパタと草履を鳴らしながら家の中へと向かっていった。

そして、勝手口のドアの所まで来ると、

「あっそうだわ」

と言って振り向いた。

「え?」

「そう言えばあんたは、竜宮の住民じゃぁないから」

「別にそんなことを気にすることはないわよ」

そう言うと家の中に入っていった。

「竜宮の住民じゃぁないか…」

香奈はそう呟くと空を眺めた。

「なんか、仲間はずれって言うのもヤだな…」



シュォォォォォォン

プールの上に水で出来た柱がそびえ立つ、

「じゃぁ……リムル、行って来るわ」

再びスーツ姿になったミールが見送りのリムルに挨拶をする。

リムルはミールの手をそっと握ると、

「御武運をお祈りするわ」

「サクラの美しさは散り際にあるそうですから」

と呟く、

「コラコラ、あたしは”バンザイ・アタック”をしに行くんじゃないからね」

と言うが、リムルはそっと目線をそらした。

「おいおい…」


「それにしても、ミールさま」

発言の機会を伺っていたラルが口を開いた。

「なに?、ラル」

「なにも、人間の格好をして行くことも無いでしょうに」

と彼はミールの格好を指摘した。

「あぁ、これ?」

「向こうに着いたとき、どこに出るか判らないでしょう?」

「だから、ちょっち不便だけど、イザと言うときの保険代わりよ」

そう、服を指さしながらミールは答える。

「はぁ」

「それなら良いのですが」

やや腑に落ちない表情のラル。


「一応、向こうと話がついたので」

「取りあえず”道”を、あなたの希望通り東京まで繋げたけど」

「ただ、シルル達の本当の目的地がどこなのかは判らないわよ」

とリムルは言う。

「大丈夫、あたしの勘だとあの子達は

 ムーにある”海母”を盗みに行ったと思うわ」

「え?」

「何で判るの?」

「うふふふ…なんとなくね」

そう言うとミールは悪戯っぽく笑った。

「それじゃぁ」

「そう、十中八九あの子達の目標は、いま東京を騒がせているアレよ」

っとミールが答えると、

「まぁ、いいわ、あの子達の上司はミール、あなたですし」

「あなたがそうして自分自らから行くんですから、あたしは何も言わないわ」

「ありがとうリムル…」

「じゃっ行って来るわ」

そう言って柱の中へ行こうとするミールの後姿を見て、

ふと何かを思いだしたリムルが、

「あっ、そうそう」

「なに?どうかしたの?」

「”東京土産”忘れないでね」

て言って手を振った。

「…………あっ、そう」

あきれ顔のミールは水の柱の中へと入っていった。


「ふぅ」

ミールは柱の中で目を閉じ息を抜くと、精神を集中させた。

やがて両手に光の玉、光玉が現れる。

ハッ

と目を開けると、

「よしっ、出発っ」

心でそう叫ぶと水が青白く光り、

シュオン

っと言う音を残してリムルの前から消えた。

「行ってらっしゃぁ〜い」

リムルはそう言いながら手を振り続けた。



「やれやれ、とんだ騒ぎになったな…」

鳥羽は車載のテレビで中継を見ながらカナ達の様子を心配していた。

第1次防衛ラインに設定されていたJR武蔵野線のガードを潜ると、

川越街道を一路都心目指して走る。

沿道はすでに疎開が終わっているためか、

通るクルマもほとんどなく実にスムーズに走ることが出来る。


どどーん

風向きで時折爆音が聞こえてきた。

右側を見ると、UFOと防衛軍のファイターとの熾烈な戦いが繰り広げられていたが、

その戦場は徐々に南の方へと移動し始めていた。

「風向きが変わったか?」

すかさず、カーナビでUFOの方向を確認すると、

鳥羽は交差点で右折すると南へと車を進める。


「人魚達はどこ行った?」

彼はとある沼地の脇に車を止めると、

双眼鏡とNo3から送られてくる画像をつきあわせて、その所在を確認する。

「なるほど…この調子だと、もぅ間もなく環八にでるなぁ」

鳥羽は人魚の位置をおおよそ”井の頭公園”付近と判断していた。



シュォォォォォン

”水の道”を移動するミールはアトランの果てを感じ取っていた。

「そろそろ、ムーの管轄域に入るわね…」

ミールはそう呟くと、水の流れに注目していた。

そして、ふっと水の臭いが代わった。

「……これが太平洋の臭いか」

何の障害もなくミールは太平洋へと入って行く。



「ドレークの関より報告」

「アトランティス側より1名が関を通過、太平洋に入りました」

「判りました、その者の追跡は怠らないでください」

報告を聞いた乙姫はそう指示を出した。

「1名ですか…ずいぶんと少ない人数ですね」

乙姫は水鏡で太平洋に入ってきたアトランティスの人魚を眺めた。

「はぁ…それにしても、櫂のことで手一杯なのに…」

「なんでこう、次々と騒動が持ち上がるんでしょう」

思わず乙姫はため息をつくと口から愚痴がこぼれた。


「乙姫さまは疲れているみたいだな」

仕えの者達がヒソヒソ話を始める。

「まぁ…無理もあるまい、ここん所のドタバタ騒ぎに」

「アトランティスからの不法侵入となれば疲れるわな」

「うんうん」

「とにかく我らだけでも、乙姫さまに負担を掛けないようにしなくては」



「そろそろ出口かしら…」

ミールがそう言ってまもなく進む先に小さな光の点が現れた。

「よーし」

「もぅすぐ抜ける……」

ぐっ

ミールは両手の光玉に力を入れる。

光玉が大きく膨らむのと同時に、

すーっ

とスピードが増し始めた。

水の流れる音が大きく響き始める。

徐々に大きさを増していく光、

「出口……」

ミールがそう考えるのと同時に彼女の身体は通常空間に飛び出した。


「さてと、では追いかけますか…」

道路マップを畳んで鳥羽が腰を上げたとき、

パァァァァァ

そばにある沼が光だした。

「なんだ?」

彼が注視していると、やがて、

ドーーーン

沼から水柱が上がると、中から金色の髪をたなびかせた一人の女性が姿を現した。

「女?」

鳥羽がそう思うのも間もなく、


「きゃぁぁ」

ドボーーーン

悲鳴を残して、女性は沼の中へと落ちてしまった。

「いやぁぁぁぁ」

「何これ?、泥沼じゃないココ!!」

女性は浮き上がって顔を出すと、叫び始めた。

「おいっ、大丈夫かぁ」

鳥羽が柵を越え沼の縁に来るととっさに手を差し出した。

間近に見る女性はすっかり泥まみれで顔がようやく判断できる状態だったが、

鳥羽の姿を見るなり、ギョッっと驚いて様子だった。

「さっ、早く、風邪を引きますよ、そこにいては」

鳥羽がそう言うと、女性は差し出された手を握ぎり、

ヨイショ

っと陸に上がると、

ビチャビチャビチャ

女性の足下に泥混じりの水が滴り落ちる。


「もぅ、リムルったら、もっとマシな出口を用意してよ」

「これじゃぁせっかく決めてきたのにメチャメチャじゃない」

女性はそう言うとぺったしと尻を着いた。


「とにかくどこかで身体を洗わないと」

鳥羽がそう言いながらクルマからタオルと持ってくると、

「あっ、すみません、でも、その必要はありません」

「え?」

女性はそう言って立ち上がると、そばの用水へと向かうと、

「この水なら大丈夫そうね」

と言うと、すっと手をかざした。

すると、用水の水が、

スルスルスル

と立ち上がると、たちまちのウチに彼女の身体を包み込んだ。

「これは…………」

驚く鳥羽。


やがて水が彼女の身体から離れると、

そこには砂埃一つ着いていない金髪の女性が立っていた。

「あ〜ぁ、まだ湿っぽいし、それに少しシミが残っちゃったわね」

泥汚れがすっかり落ちたスーツを見ながら女性は呟く。

「……………」

「助けていただきありがとうございます」

呆気に取られている鳥羽に女性はそう言うと手を差し出した。

「私の名前は、ミール、あなたは?」

「あぁ、私は鳥羽……鳥羽俊介」

と言うと、ミールは鳥羽をじっと眺めると、

「あなたのその身体は、本物ではないですね」

「あっ、判りますか?」

「えぇ」

「そう言うあなたも、さっきの術…あれは人魚の術ですね」

と返事をする。

「人魚をご存じで?」

「まぁ……ね」

ミールの問いかけに鳥羽はやや曖昧な返事をした。

「そうですか…」

「確かに、堂々と人魚が徘徊しているこっちでは、

 そんなに珍しいコトでは無いと思いますが」

「いや、そうでも無いですよ」

「またウソがお上手、現にココでは人魚が白昼堂々と飛んでいるでしょう」

「あぁ、あれですか?」

「別に彼女たちは堂々と飛んでいるわけではありませんよ」

「え?」

「逃げるため、仕方が無く飛んでいるんですよ」

「逃げるため?」

ミールが聞き返すと、

「ん?……あれ?、あなたは彼女たちとは違う人魚なんですか?」

「え?」

「いや、その話しぶりからすると彼女たちとは

 異質の世界から来られたような感じがするのでね」

そう指摘する鳥羽にミールは

「なるほど…確かに鋭い指摘ですね」

「え?」

「そうです、私はアトランティスからこのムーに水の道を伝って来た人魚です」

「アトランティス?」

「ムー?」

鳥羽が思わず首を傾げると、

「あら、ご存じない?」

「いぇ、どちらも、子供の頃に読んだ本でその名前を知っている程度ですが」

「いや、実在していたんですか」

しげしげとミールを眺める鳥羽に

「まぁ、地上人の知識ではその程度でしょうね」

ミールは癖になっている手を額に置く仕草をした。

「で、そのアトランティスの人魚が、何故この日本に?」

「えぇ、ちょっとバカ共の尻拭いをね」

「バカ共?」

「あっ、いえ、あなたには関係ありません」

「これは私たちアトランの問題ですから」

「はぁ」

「ところで、いまココで騒ぎを起こしている人魚は何処ですか?」

ミールが鳥羽に訊ねると、

「見てみます?」

鳥羽は双眼鏡をミールに差し出すと、覗いてみるように勧めた。

「ん〜っと」

「あぁ…あれね」

「結構離れているじゃない」

双眼鏡を覗きながらミールは感想を言う。

「大体、井の頭公園付近でしょうか」

と鳥羽は推定位置をミールに教えた。

「井の頭公園?」

「ふぅぅん」

と言ってミールは再び双眼鏡を覗いた。

「それにしても、少し離れたところにいるあの”船”はアトランの古代船じゃない」

「何でこんな所に………」

「古代船?」

ミールがその台詞を口にしたとき、鳥羽はそのことに興味を持った。

そして、

「まぁ、立ち話は何ですから…」

「どうです?、話の続きはクルマの中でしてみては…東京の案内もしますよ」

と誘うと、ミールは、

「いえ、結構です」

「出会ったばかりの男性の車に乗るような愚か者ではありませんので」

そう断ると、

ピィィィィィ

口笛を鳴らした。

すると、さっきの沼が光り輝きだし、やがて中から巨大な竜が姿を現した。

「私はこれで行きますので、先ほどはどうもありがとうございました」

そう挨拶をすると、

ブワッ

っと竜は彼女を乗せて空中へと舞い上がった。


「ハハハハ…キツイ事を言う」

「にしても、昨今の人魚はどうしてこう空を飛びたがるのかな」

鳥羽は舞い上がっていくミールの姿を眺めながら呟いた。



ひゅぉぉぉぉぉん

「目標まであと10,000」

サルサが声を上げると、

シシルはルシェルに、

「いぃ?、さっき説明したとおり一発で決めるわよ」

と叫ぶ。

「無理だよ、そんなこと…」

ルシェルは文句を言うが、

「あたしの言ったとおりにやれば確実に成功するのっ」

「逆らったらどうなるか判っているわね」

と強い調子でシシルはルシェルに言う、

「判ったよ、シシルの言う通りにするよ」

「最初っからそう言えばいいのよ」

「距離5,000」

サルサが声を上げた。



「じゃぁ、マナ…ここはウルトラナインにお世話になろう」

僕がマナに後ろからそう言うと、

「それでは、海までお願いします」

とマナはウルトラナインに言う、

じゅわ

ウルトラナインは頷いた。

僕たちは彼の掌の上に移動し、羽を畳もうとしたその時。

ゆら

風が揺らいだ。

「!!」

「左っ?」

とっさに左側を見ると、3体の竜が目の前に迫っていた。

「え?、竜?」

僕は反射的に水の防御壁を張り巡らせる。

そして、間髪入れず、

ギィィィィィィン!!!

最初の竜が防御壁に接触する。

「うわぁぁぁぁ」

「きゃぁぁぁぁ」

僕と1匹目の竜がそれぞれはじき飛ばされた。

そして、その1匹目が2匹目と衝突すると、

どっ

でゅわっ!!

どど〜〜ん

2匹の竜がウルトラナインと衝突するとお互いに吹っ飛ばされ、

沿道の住宅やビルを押しつぶした。

「痛ってぇぇぇ」

「失敗した!!」

シシルが叫び声を上げる。

「一旦引けっ」

「痛ぁ〜ぃ、頭打ったぁ」

ルシェルが悲鳴を上げる。

「そんなもん、唾でもつけてなさい」

「第1次攻撃失敗っ、2次攻撃に行くわよ」

僕たちに突っ込んできた竜は素早く離れると遠くの方に移動していった。

「大丈夫?、ウルトラナイン」

マナが倒れたウルトラナインを気遣う。

「アトランティスの竜がなぜココに?」

竜彦が声を上げる。

「アトランティス?」

「アトランティスって?」

僕が竜彦に聞くと、

「お前はホント、何も知らないんだなぁ」

呆れた顔で僕を見る。

「いいか、アトランティスって言うのはな…」

竜彦は僕に竜宮=ムーとアトランティスについての簡単な話を始めだした。

「と言うわけだ、判ったか」

「まぁ、何となく」

僕が答えると、

「カナ…また来たわよ」

マナが再び迫ってくる竜を指さした。

「アトランティスの竜には必ず”竜使い”がいるハズなんだが…」

竜彦の話が終わるまもなく竜が迫ってきた。


「いぃ?」

「フォーメーションJっ、行くわよ」

「今度こそ、失敗しないのよ」

シルルが叫ぶと、

「うん」

シルル・ルシェル・サルサが乗る竜は一直線に並ぶ、

「ようし、行くわよぉ」

「じぇっとすとりぃむ!!」

と叫ぶと一気に突っ込んできた。

「あたぁっく!!」


「させるかっ」

トン

僕はとっさに一匹目の竜を馬乗りの様にして飛び越した。

そして、二匹目が飛び上がったところに、

へぁっ

起きあがったウルトラナインがその二匹目に蹴りを入れた。

ズンンン〜っ

「きゃぁぁぁぁぁ」

衝撃でルシェルが竜から弾き飛ばれされると、

後続のサルサが飛ばされた彼女を助けるようにして竜をすがさず移動させた。

どし〜ん

「痛ぁ〜ぃ」

「大丈夫?ルシェル」

サルサの懐に飛び込んできたルシェルの安否を気遣う。


「えっ、人魚?」

さっきは気がつかなかったけど、金髪に青緑色の鱗を持つ人魚を見たとき

「僕たちとは違う人魚だ………」

唖然として彼女たちを見ていた。




「おい、五十里…」

「人魚共の様子が変だぞ」

夏目が人魚周辺のただならない様子を五十里に報告すると、

「ふふふふふふ」

「まったく、どいつもこいつも………いいだろう……」

「私を怒らせると、どうなるか見せてあげるよう」

と不気味に呟きだした。

「いっ五十里…お前何を言っているんだ」

「ふっふっふっ」

五十里は含み笑いをする。



「なに?、UFOには秘匿兵器がある?」

部下から掛かってきた電話に思わず声を上げた。

『詳細は一切不明ですが、

 そのUFOには相当強力な秘匿兵器が搭載されています』

「どの程度の物なんだ?」

『はぁ、残念ながらそこまでは』

「そうか」

「ごくろうだったな、引き続き調査を頼む」

そう言って電話を切ると、

「まさか…な」

と言いながら鳥羽はUFOを眺めた。



「あんの、バカ共が…」

竜に跨りミールは東京の空を舞っていた。

「来るとしたら、絶対にココだと思ったんだけど…」

と考えている時

ズシン!!

空気が揺れた…

「え?」

西の空を眺めると、さっきの人魚の所にいつの間にか3体の竜が絡まり

濛々と砂埃が舞い上がっていた。

「見つけた!!」

「行けっ」

ミールは竜に命令すると、急ぎ人魚の所へと向かいだした。



「相沢…」

五十里がぼそっと呟く

「はい?」

「この船には確か秘匿兵器が積んであったろう」

「え?」

「まさか、アレをお使いになるので?」

五十里のセリフに相沢がたじろぎながら聞き返すと。

「そうだ、【アクア=レイ】だ」

「【アクア=レイ】?」

相沢が首をひねると、

「いま私が名付けた」

と五十里は答える。

「しっしかし、それは…」

「かまわん、私の言うことを聞かない連中にはお仕置きが必要だ」

「【アクア=レイ】発射準備」

五十里はそう言うと相沢をジロリと睨んだ。

「わっ…判りました」

「【アクア=レイ】の発射準備にとりかかります」

相沢はそう返事をするとすぐに作業に取りかかりだした。


「相沢、【アクア=レイ】ってなんだ?」

夏目が訊ねる。

作業をしながら相沢はしばし考えた後で、

「夏目さん、オリハルコンって知ってますか?」

と逆に尋ねた。

「オリハルコン?」

「あぁ、話しにはな…」

「しかし、あれは想像上の物質では?」

「それが実在するんですよ」

「なに?」

驚く夏目。

「実はこのUFOを発掘したときにオリハルコンも一緒に発掘されたそうなんです」

「そんな話は聞いていないぞ」

「それはまぁ、極秘事項でしたからね」

「で、そのオリハルコンと【アクア=レイ】との関係は?」

「えぇ、実はオリハルコンにあるエネルギーを与えると」

「強力な反応を起こすことが判りまして」

「で、それを応用してつくった兵器が【アクア=レイ】だと聞きました」

「実際の破壊力はどの程度なんだ?」

「さぁ、私も詳しくは知らないのですが」

「最大出力時には核兵器を遙かにしのぐ力があるとか」

「なっ」

「そんな、物騒なシロモノを使う気なのか、あの男は」

夏目はそう言いながら五十里をちらりと見る。


「フィラメント・オープン」

そう言って相沢がボタンを押すと、

ガコン

っとUFOの上部と下部が開くと、中から鏃のように尖った巨大な結晶が姿を現した。



「なんだアレは?」

ファイターを操縦していた富士田は、

UFOがら迫り出してきた結晶に目を奪われた。

「エメラルド?」

「いや、違うな」

しかし、その結晶の姿に只ならない物を感じた彼は、無線機を取ると、

「全機っ、あの結晶を攻撃するんだ」

と命令した。

ぎゅぅぅぅぅん

ファイターの攻撃目標はその結晶へと集中していく、



「痛ぁ〜ぃ」

「うわぁぁぁぁぁぁん」

ルシェルが大声で泣き始めた。

「ちょっと、アナタ…なんてコトをしてくれるのよ」

人魚の少女(シシル)が僕に食ってかかる。

「なにって、おまえ達が突っ込んできたんだろうが」

「何ですってぇ」

彼女の顔が見る見る紅潮していく、

「やるか…」

僕も身構える。

とそのとき、

パンパンパン

手を叩く音と共に、

「はいはい、そこから先はあたしがアトランで聞くわ」

「え?」

振り向くと竜に跨った一人の女性が僕の後ろにいた。

「げっ、ミール……」

シシルの顔が急に青ざめる。

「見つけたわよ、シシル・ルシェル・サルサ…覚悟はい〜ぃ?」

僕はニコッと笑う彼女に表情に氷の冷たさを感じた。

「あっあのね……」

シシルが何か言おうとしたとき。

ビュッ

突如ミールの手元より現れた氷柱がシシルの胸元に迫った。

「なにか?」

余裕のミール。

「いっいえ、何でもありません…」

そう言うシシルの顔には”恐怖”の二文字が浮き上がっていた。

「怖ぇ〜この姉ちゃん…」

僕はミールと呼ばれた彼女を眺めていた。

するとミールは僕の方に向きを変えると、

「初めまして…ムーの人魚さん」

「私は、アトランティスの人魚、ミールと申します」

そう言って、頭を下げた。

「今回はウチのバカ共がとんだご迷惑を掛けてしまって、どうもすみませんでした」

「見ての通り、すぐに引き取っていきますので」

「そちらの王によろしく伝えておいてください」

と言って謝った。

「はっはぁ」

そう言いながら僕が会釈したそのとき、

ゴンっ

ぶわぁぁぁぁぁぁぁぁん


「うわぁぁぁぁぁぁ」

「なによ?これ」

猛烈な勢いで力が吸い取られ始めた。

「!!」

「カナっ、あれ……」

マナがUFOを指さした。

「なに?」

防衛軍との激しい闘いのさなか、

いつの間にかUFOには翠色の棘の様な結晶が突き出し、光り輝き出していた。

「オリハルコン…しかも、無茶苦茶デカイ」

ミールがそう呟く。



「ふっふっふっ…、私の言うことを聞かない悪い子にはお仕置きだよ」

五十里はそう呟くと、口元が笑った。



つづく


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