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『欧風カレーに係る考察』
〜レトルトのカレーを食べながら想を得て〜

素材
 今日、仕方なくレトルトのカレーを食べていて、とりとめもなく考えた。

欧風カレーに係る考察 本文
 我々は、仕方なくカレーを食べることにした。Aが鍋に湯を沸かし、卵を入れた。「卵は先に入れた方がいい。レトルトよりも時間がかかるんだ」と、Aが説明した。
 私はコンロの下の収納から5パック入りのレトルトを出した。「欧風煮込みカレー」だった。特に、こだわったわけではない。先日、ドンキホーテに行った際、安売りしていたからだ。さらに付け加えれば、安売りだったから行ったわけでもない。私は広告というものを見ないからだ。たまたま買ったというに過ぎない。私にとっては、レトルトカレーなんて、どれでもいいのだ。
 湯が沸いて、私がレトルトを湯に入れると同時に、Bがサランラップに包んで冷凍してあったご飯を電子レンジに入れた。5分で温まるから、「チン」と音がすれば、同時にカレーも出来上がる。ご飯は、5人分にはやや量が少ないかもしれないが、この際、仕方がなかった。
 5分が経ち、Cが温まったご飯を皿に盛り、熱いカレーを掛け、ゆで卵の殻をむいて、一皿に一つずつ乗せた。これで、冷蔵庫の卵がなくなった。
 我々は、黙々とカレーを食べた。話す気分ではなかったからだ。が、何も手伝わなかったDが口を開いた。
 「これは何というカレーだ」
 「欧風煮込みカレーだ」と、私が答えた。
 「その選択は正解だったね。レトルトの中でも欧風煮込みカレーは旨い」とDが言った。
 「ありがとう。でも、特に選んだわけじゃないんだ」私は正直に答えた。
 「確かに正解だ。しかし、一番旨いのはカレーマルシェだろう」とC。
 「それはそうだ」とB。
 「まあ、そうだな」とD。
 「カレーマルシェはなかったと思う、多分。少なくとも、安売りはしていなかった」と言い訳したが、私にとっては、どうでもいいことだった。
 「責めるつもりはないんだ」とD。
 「そう、これも十分旨い」とB。
 「次からはカレーマルシェを買うよ」私は仕方なく言った。
 「いや、本当にいいんだ。これも好きだから」Cがなだめるように言った。
 「しかし、これはなぜ欧風なんだろう」と、Aが口を挟んだ。
 「マッシュルームが入っているからだ」即座にDが答えた。
 「確かに、欧風以外にマッシュルームは入らない」とB。
 「なるほど。他に、特徴はないだろうか」とA。
 「デミグラスソースだろう」Cが答えた。
 「しかし、デミグラスソースはハヤシライスにも、シチューにも、ハンバーグにも使われている」とDが反論した。
 「それらは全て、欧風と呼んでいいのではないか」とCが再反論した。
 「確かに欧州に由来する料理かもしれないが、デミグラスソースはあまりに多くの料理に使われていて、それ単独では欧風と呼べないだろう。我々が今、議論しているのは、排他的に欧風であることを意味する特徴についてだ」Dがぴしゃりと言った。
 「例えば、カニがまるごと入っていれば、石狩カレーとなるように」とA。
 「そのとおりだ」とD。
 「例えば、味噌で煮込んであれば、味噌煮込みカレーとなるように」とB。
 それについては、誰も答えなかった。そして、唐突に会話はとぎれた。我々は、冗談を言う気分ではなかったのだ。

おわり

(2001.9.18 Qui-Ta)

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