蓄電型太陽光発電システム

製作・著作: (有)テクノアート
 (初版:2011年6月15日)
(加筆:2013年1月29日)

太陽光発電のシステムの組み立て方法をご用意しましたので、ご利用ください。

[システムの概要]

システムのブロック図を描くまでもなく、小規模のPVシステム(Photovoltaicシステム)は、太陽電池パネル、充電コントローラ、蓄電池、および負荷デバイスで構成されます。自分で回路を設計するのではなく、基本的には既存品を買い集め、半田ごてとラジオペンチとドライバーがあればシステムを組み上げることができます。

<太陽電池パネル>
太陽電池パネルは、6V/1Aのパネルを直列接続して使用する可搬型(738 SM1000-12-FP)を試験的に導入しました。これによって、同じパネルを6Vシステムにも適用できるようにもくろんでいます。各パネルには、直列接続した場合に、片方のパネルが遮光されたときの逆電流バイパス用ののショットキダイオードを取り付け、コントローラとの間には念のために、逆極性接続防止用のショットキダイオードを取り付けています。

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レールに取り付けた12V/1Aの太陽電池パネル
(6V X 2としても取り出しが可能)

真実のほどは不明ですが、中国などの小さな太陽電池パネルメーカーは、大手半導体メーカーで出たクズの太陽電池を拾い集めて切り貼りして使用しているとのことですので、信頼できるメーカーの製品を選ぶ必要があります。
今回の可搬型太陽電池パネルは香港のGoldmaster & Ever Step Development Ltd.というメーカーの製品です。仕様書では「耐候性あり」になっていますが完全防水になっていませんので、受光面のフレームの隅にシリコンの防水シールを塗布し、裏面にはPETフィルムを貼って防水加工しました。また、受光面はエポキシ樹脂ですので、紫外線カットフィルムを貼って表面を太陽光や雨水から保護する必要があります。

<充電コントローラ>
充電コントローラは、写真のようなドイツPhocos社の製品を採用しました。12V/5A(24V/5A)のCML05-2.2に、太陽電池電流、バッテリー電圧、および負荷電流の表示を切り換えてそれぞれの値を表示させるリモートディスプレイ(CMM-1.1)を取り付けています。12V/24Vの自動判別です。このモデルはどういう訳かプラス側をグランドするシステムですので、通常マイナスグランドの乗用車では使用出来ません。

特長:
充電状態がはっきり見える表示(太陽電池の発電表示X1、バッテリーの状態X3、および負荷状態X1のLED)
充電状態の変化を知らせるブザー音
充電または電圧の状態によって調整される低電圧遮断
16mm2のコネクタクランプ
完全な電子保護


充電コントローラとそのモニター(オプション)

<鉛蓄電池>
充電コントローラは鉛蓄電池用ですので、自動車用の電池などが使用出来ます。下の写真は、太陽電池パネルとセットになっていた電池(台湾のKUNG LONG BATTERIES INDUSTRIAL CO., LTD.製、WP12-12)です。すべての12V鉛蓄電池に共通のコネクタを取り付けて電池の切り替えを容易にしてあります。必ずヒューズを接続して使用します。CML05の場合は20Aです。


12V/12Ahのシール型鉛蓄電池
(写真のようなウォールBOX WB-1A0Jに収納)

<データ蓄積型充電コントローラ>
太陽電池パネルの設置場所などのデータを取るために同じPhocos社のCXN10-1.1(12V/10A、24V/5Aの電圧自動判別))を購入しました。これにUSBによるパソコンとのインタフェースアダプタ(CXI)を接続すると、CXNの設定状態を始めとして、パソコン画面に直前の1週間、1ヶ月間、前年のデータを数値とグラフで表示することができます。また、リモートディスプレイ(CMM)を接続すると、充電状態、バッテリ電圧、太陽電池電流、負荷電流、太陽電池のアンペア時、総アンペア時を表示できるほか、CXN内のデータロガーから直近7日間のデータ回収の表示ができます。


10Aの充電コントローラ

 
左:USBインタフェース、右:リモートディスプレイ

<小規模の太陽電池と充電コントローラ>
12Vから5V〜3Vに変換するDC-DCコンバータを接続して使用する小規模の太陽電池システムには、下の写真のような12V/270mAの太陽電池とPhocos社の安価な充電コントローラ(CM04‐2.1、12V/4A)と12V/2.3Aのシール型鉛蓄電池を使用しました。負荷コントロールの機能はありませんので、蓄電池を安全に充電する目的で使用し、負荷はヒューズとDC-DCコンバータ経由で接続します。
太陽電池パネルは中国メーカーのCND12-B (200mm×305mm、マルツパーツ館)です。これも受光面のフレームの隅にシリコンの防水シールを塗布し、裏面にはPETフィルムを貼って防水加工しました。受光面はガラスですので太陽光や雨水から保護する必要はありません。
このパネルを直列接続して使用し、片方のパネルが遮光された場合の保護用として、接続ボックス内に逆電流バイパス用のショットキダイオードが取り付けてあります。追加としてコントローラとの間には逆極性接続防止用のショットキダイオードを取り付ける事を推奨します。1N5822 (3A、VF:0.525V@3A)が使用できます。
小型シール鉛蓄電池はGSユアサのNP2.3-12 (12V/2.3Ah)にしています。


左下:シール型鉛蓄電池、中央:太陽電池パネル、右下:充電コントローラ


[システムに接続する各種の負荷デバイス]

CML05やCXN10に接続する負荷は、主にLEDランプなどの照明器具を前提にしています。CXN10の場合は、終夜灯のコントロール機能があり、オン/オフをプログラムすることができます。
下記にDC12Vの低電力負荷の例をご紹介します。

写真1: (この写真の上にマウスを移動すると
蛍光ランプの拡大画像が表示されます。)
写真2: OSLA03X3W00の
高輝度LEDランプ(12V/350mA)

<写真1の左>
車のシガレットライターに接続したりUSBに接続したりして携帯電話を充電する(株)カシムラの車載用充電アダプタAJ-300です。docomo/SoftBank/au/iPod/iPhone/Xperiaの充電端子に対応する4個のコネクタが付いています。12VをUSBの5Vに変換しています。

<写真1の中央>
12Vの負荷出力にシガレットライターソケットを接続する電装部品です。

<写真1の右>
Phocos社の高効率12V蛍光灯(CL1121C)で、12V/900mAですが、75W相当の明るさが得られます。100V用のソケットですので、ホームセンターで入手可能なレセプタクルB-60Hに線材とコネクタを取り付けました。

<写真2>
LED電球のOSLA03X3W00(12V/350mA、OptoSupply Limited 、香港)にGU5.3口金ソケットを取り付け、これを(株)ヤザワコーポレーションのクリップライト(CCL-4、カインズホームで入手)に取り付けたものです。270ルーメンの明るさで、まぶしくて直視できません。

左の写真は、大自工業(株)が輸入販売している車載用の6インチ扇風機です。
12V電源で首振り機能があり、0.9A(強)と0.7A(弱)を切り換えられますが、0.7A動作の場合には電圧制限用のセメント抵抗がスイッチボックスに内蔵されており、これが発熱して電力の無駄となります。
また、ネット上の評価通り、音がうるさいです。
要するにおもちゃ感覚のペットなどに使用出来る製品で、人間用には1万円以上の製品を購入する必要があるかも知れません。

いずれ電子式の風量コントローラを製作して取り付ける予定ですが、風量切り替えスイッチを[強]にして6V〜7Vに電源電圧を落とせば、音は気にならずに実用レベルの風量になります。

[大電力の負荷デバイス]

自動車用のバッテリーに充電しておくと、DC-ACインバータを使用して小電力の100V機器を使用できるようにできます。充電コントローラの負荷に接続するには電流容量が大き過ぎますので、バッテリー端子にクリップで直接接続します。

CONVOY SE-300A Power Tite FI-S353A

<写真左>
これはかつて(株)サンバードオート電機が販売した最大出力300Wのインバータで、非常用倉庫に眠っていたルックスがすこぶる良いお宝です。非正弦波出力ですが、ノートパソコンに使用出来ることを確認しました。
この製品が開発された頃の電子技術でしょうが、1.6A/13.5Vと無負荷電流が結構大きなインバータです。40Wの電球を点灯すると3.8A/13.5Vの電流が流れます。

<写真右>
(株)未来舎の正弦波インバーターで、350Wまで連続で使用できる最新型です。変換効率が88%と言うことですので、DC12Vでは33A以上の電流が流れます。
通常の無負荷待機電流は600mAですが、節電モードに設定すると70mAになります。ただし、30W以上の負荷が30分以上接続されない場合にはインバータの電源が自動的にオフになりますので、電源スイッチを入れ直す必要があります。
低電圧表示、減電圧遮断機能はLEDとブザーによる警告で行われます。

ちなみに、この正弦波インバーターは、実質的に購入・設置以来200時間以内位しか使用していなかったのですが、ちょうど1年で故障してしまいました。ともかく、早い対応で保障期間内の無償修理をしていただきました。



Phocosの製品には、ドイツ語、英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、中国語の説明書が付いていますが日本語はなく、同社は製作する気がないようです。「電源事情が非常に悪い開発途上国向けの製品」と言うのが理由だそうです。
未承認ですが、Phocos社の下記の製品の説明書の日本語訳(レイアウトを含む)を弊社で完了しました。

ソーラー充電コントローラー: CM04-2.1 J AK
ソーラー充電コントローラー: CXN10-1.1 * J AK
ソーラー充電コントローラー: CML05-2.2 * J
CML用リモートディスプレイ: CMM-1.1 J
CXN用インターフェース: CXI-4 * J AK
CXN用リモートディスプレイ: CXM-1.2 J AK
CXCOM説明書: CXCOM * J
DCコンパクト蛍光ランプ: CL1211C *

これらの製品のデータシートを翻訳し、各製品を実際に使用してみましたが、*印が付いている英文の仕様書には、記載されていないいくつかの注意事項が見つかりました。興味がある方は翻訳者の注釈情報をご覧ください。(2011年9月2日追加)

上記翻訳データシートの一部はエコライフラボ(http://www.ecolifelab.com/)に掲載されていますが、リストに「J」の印があるものは、http://www.phocosjapan.com/Downloads/にアップロードされています。
また、東京・秋葉原の秋月電子通商が取り扱っている製品(「
AK」で表示)は、
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-02824/などにアップロードされています。
(2011年9月13日追記)


[130W PVシステム] 2011年9月2日追加)

一度極小規模でも太陽電池による発電を試みると、太陽光で雑草を育てており、有効な昼間の太陽エネルーギーを利用していないことに気づきます。
かと言って、売電ができるようなPVシステムを専門業者に設置してもらうには200万円以上の費用がかかりますし、投資費用が回収できるまでには15年くらいかかり、もし高価な蓄電システムを導入しても、バッテリーの寿命が3〜5年くらいと短いようです。 また、新築時のパネルの設置でない場合、設置の不具合や雨漏りなどが出やすいとも聞きました。

それならばと、自分で設置できる限界ぎりぎりのPVシステムを構築し、できるだけ廃材を利用しながら新規の部材にはホームセンターで入手できる部材を使用しました。


4個のコンクリートブロックで固定した廃材フレームの上にローテーターとマストを乗せ、
その上に130W の太陽電池パネル(重さ12Kg)を乗せた完成品。

太陽電池パネルは、オフグリッドソーラー社(運営会社は長野県にあるネクストエナージー・アンド・リソース(株))から購入した中国製のHA-S130-12で、約1m角のサイズです。

パネルの仰角や方角は妥協点がありますので調整する必要はありませんが、溶接技術を持たない者にとってはこれが一番簡単な構造であると考えました。ローテーターはコントラーラーで回転させることができますので、夏期と冬期でパネルの方角を変えることができます。仰角は、クロスマウントのボルトを緩めれば水平から55度まで変えられます。パネルの高さは地上高約2.3mです。傾斜地の住宅街ですので、この高さでも隣家の陰にはなりません。

今回追加した周辺機器は、下の2枚の写真のように(株)未来舎の太陽電池充放電制御器PV-1212D1Aと、ACデルコ社の容量67Ah(RC値は160分)のディープサイクルバッテリー ボイジャーのM27MFです。主としてマリン用の普及品です。
ちなみに、ディープサイクルバッテリーは自動車用のバッテリーとは異なり、深い充放電を繰り返しても性能や寿命が劣化しにくいバッテリーです。重量は23.5kgと非常に重いですが、持ち運びが容易になるようにハンドルが装備されていますので助かります。広島市のせんぐ屋で購入しました。

PV-1212D1A 充放電制御器 M27MF ディープサイクルバッテリー

このシステムを使用すると、バッテリーに負担をかけることなく、晴天の昼間には節電モードにした液晶テレビ1台と扇風機2台が使用出来、曇天時には扇風機1台が使用出来ます。

充放電コントローラーは、パソコンでデータを収集するためにPhocos社のCXN10-1.1とUSBインタフェースアダプタCXIまたはリモートディスプレイCMMと入れ替える予定です。

PV-1212D1AにはLCD表示が付いていますので、バッテリー電圧→太陽電池電圧→太陽電池電流→本日のPV総Ah→昨日のPV総Ah→一昨日のPV総Ah→バルク充電状態→フロート充電状態→均等充電状態→吸収状態の各状態が自動的に順次表示されます。不揮発性メモリー機能はありませんので、バッテリーと太陽電池を取り外すと過去のデータは無くなります。

[電源切り換えシステム] 2011年9月10日追加)

天候や時間帯によって商用電源とPV電源を切り換える必要があります。
ACプラグをいちいち差し替えるのは面倒ですので、ラッチングリレーを使用してボタンスイッチで電源を切り換えられるようにしました。回路図は下図の通りです。

ラッチングリレーはジャンクボックスで見つけた超骨董品(オムロンのマイクロスイッチが付いた611K)ですが、正常に動作しましたので両切りにするために2個使用しました。SOLARまたはACのスイッチボタンを軽く押すだけでマイクロスイッチが切り替わり、機械的にロックされ、電力消費はほとんどありません。

ACモード動作であることを示すためにネオンランプを使用していますが、この回路ではインバータ動作に切り換えた場合、AC時よりは暗いのですが、ACとインバータの位相のズレ具合によってネオンランプが点灯してしまう欠点があります。ただし、両電源の周波数(位相)のズレのモニターになります。

未来舎のインバータFI-S353Aをリモート動作させるためにDINプラグでインタフェースしており、INV STARスイッチを入れるとインバータが起動して緑のLEDが点灯します。この時にのみSOLARのプッシュボタンスイッチが動作します。
外観は下の左の写真のようになります。ボックスとACコンセントを除くすべてはジャンク品を使用しています。

ちなみに、右側の写真は、5連のコンセントに消費電力のLCD表示機能が付いたS.T.D 新東電器(株)の製品で、消費電力のモニターができます。(テーブルタップの総使用電力が1500Wを超えるとアラームが鳴りますし、雷サージ防止機能も付いています。)電力の測定方式は不明ですが、反射型のLCDであるにもかかわらず、中央の緑の部分が暖かくなっているのが少し気になります。


現在の消費電力が103Wになっています。
(スイッチ付きのコンセントの1個には埃よけのカバーを取り付けました。)
PV電源切り換えボックス S.T.D 新東電器(株)のJH-M505TP

 


[余談]

ちなみに、6Vや12Vの鉛蓄電池の充電には下の写真のような2種類の充電器を使用していました。

12Vの充電器は、秋月電子通商で購入できる「鉛蓄電池充電器パーツキット」を購入し、PCBを自作したものです。トランスや整流ブリッジは使用せず、DC16Vの電源は自動車用の充電器を使用します。
PCBを自作するためにパターンフィルムが必要な方には、PDFファイルをメールに添付して無償で差し上げます。基板サイズはオリジナルよりも小さくなります。

6Vの充電器は、現在では廃品種になっている東芝の鉛蓄電池充電用ICを使用したもので、トランジスタ技術誌の1989年9月号に製作記事が掲載されました。コネクタは12Vのものとは異なるタイプを取り付けています。

 または 

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