ちょっとしたコラム      
                
06.9.9付


1981年 日本ハムファイターズVS読売ジャイアンツ(後編)

 日本ハムの2勝1敗で迎えた10月21日の第4戦は日本ハムが左腕の木田、巨人が中3日となる江川の先発で始まった。巨人は3回裏二死からスタメン抜擢の平田がレフトへソロ本塁打して先制。左投手の多い日本ハム相手に、シーズン打率2位の.357をマークした篠塚をベンチに下げての起用に応えた平田の一撃だった。しかし3回までノーヒットピッチングを見せていた江川は4回二死から3番・柏原にレフトスタンドへのソロ本塁打を浴び、1-1の同点となった。

 4回まで1失点ながら5四球と制球の定まらない木田に代え、日本ハムは5回裏から2番手・成田をマウンドに送った。しかし先頭の河埜に勝越し本塁打され、巨人が2-1と再び1点をリードした。江川は柏原の一発のあとは無難に抑え、7回表が終わって依然として2-1。そして7回裏、前日までの3試合そしてこの試合と常に1点を争うような互角の戦いが続いたシリーズの流れに終止符の打たれる時が来た。

 7回裏の巨人は先頭の河埜が四球で出塁。河埜は牽制球で1度は1・2塁間に挟まれるが、じわじわと二塁よりに進んだところを一塁手の柏原がボールを投げずに深追い。二塁ベース際から飛び込んだ河埜に柏原も追いすがるがセーフ。命拾いした河埜は一死後に中畑のショートゴロでセオリー無視の三塁突進。これがショートの野選を誘い、オールセーフ。さらに5番・ホワイトも四球で一死満塁となった。日本ハムの4番手として中畑の場面から登板していたのはベテランの杉山だった。79年には11勝を挙げていた右腕もこの年は22試合で1勝6敗と散々な成績で、この場面は荷が重かった。

 途中出場の6番・淡口が2点タイムリーツーベースを放つと、7番・原の3ランそして8番山倉のソロと連続ホームランが飛び出した。先ほどまでの接戦とは一転、スコアボードには「6」が刻まれ、巨人が8-1と大量リードした。日本ハムは直後の8回表に大宮の三塁打を足がかりに1点を返すが反撃もここまで。江川は余裕の投球で6安打完投。シリーズ4試合が終わって2勝2敗のタイとなった。

10月21日・第4戦
日本ハム 0 0 0 1 0 0 0 1 0   2
巨人 0 0 1 0 1 0 6 0   8

勝ち 江川 1勝   負け 成田 1敗

本塁打 平田1号、柏原2号、河埜1号、原1号、山倉1号


 雨で1日置いた10月23日の第5戦は日本ハムが中5日の高橋一、巨人が中4日の西本の先発で始まった。巨人は初回にヒット2本で1・3塁のチャンスを掴み、高橋一の暴投で1点を先行。2回裏には西本が自らタイムリーを放ち追加点を挙げた。第2戦ではシリーズタイ記録となる被安打2本で完投した西本も、この日は苦しい投球が続いた。2回表には一死満塁とされたが、高代を三塁ゴロ併殺打に取りピンチを脱出。4回にも二死1・3塁とされたがまたも高代をショートゴロに打ち取り無失点で切り抜けた。5回表も一死1・2塁からソレイタをピッチャーゴロ併殺打と毎回のように続くピンチを得意の内野ゴロで切り抜けた。

 そうこうしているうちに5回裏の巨人の攻撃、この日も3番に入った当たり屋・平田がレフトスタンドへホームラン。さらに6番・柴田、7番・原の連続タイムリーが飛び出してこの回3点を追加して5-0となった。西本はそれでも6回・7回と二人ずつ走者を出す苦しい投球が続いたが、共に内野ゴロ併殺で切り抜けた。7回まで日本ハムは巨人の10安打を上回る11安打しながら無得点が続いていた。

 8回裏の巨人は先頭の8番・山倉が本塁打、さらに河埜・中井が連続ヒットのあと途中から3番に入っていた篠塚が決定的な3ランホームランを打ち込んだ。スコアは9-0とワンサイドになり、試合の流れだけでなくシリーズの流れも大きく巨人に傾いていた。西本は結局9回まで13安打を浴びながら完封するという前代未聞の投球ながら見事に2勝目を挙げた。併殺打4本を含む18本の内野ゴロを打たせるという西本の真骨頂が発揮された試合だった。

10月23日・第5戦
日本ハム 0 0 0 0 0 0 0 0 0   0
巨人 1 1 0 0 3 0 0 4   9

勝ち 西本 2勝   負け 高橋一 1敗

本塁打 平田2号、山倉2号、篠塚1号


 10月25日の第6戦は巨人が完投勝利から中3日の江川、日本ハムが中6日の間柴の先発で始まった。勢いに乗る巨人は初回こそ三者凡退に終わったものの、2回先頭のホワイトが死球で出塁すると続く柴田・原・篠塚が3連打してまず1点を先制。さらに山倉の犠飛と河埜の押し出し四球で合計3点を挙げた。日本ハム・大沢監督は早々に間柴をあきらめ、3回表から2番手・工藤を送った。しかし、第3戦までに2勝とラッキーボーイだった工藤も巨人の勢いは止められなかった。

 3回表の巨人は二死一塁から7番・原がレフトスタンドへ2号2ランを放ち、5-0と俄然試合を有利に運んだ。これで余裕の出た江川は5回まで散発3安打無失点の好投。6回裏の日本ハムはベテラン・井上の1号ソロでようやく1点を返すが、巨人も続く7回表に河埜の2号ソロで6点目、再び5点差となった。こうなれば江川は完投あるのみ。8回裏に井上の内野ゴロの間と大宮のタイムリーで2点を失うが9回裏最後の打者・五十嵐を力でねじ伏せ内野フライ。高々と上がった飛球に江川は周囲を制して自分で捕球。江川を囲むように歓喜の和が出来た。

 V9最後の73年以来、8年ぶりに巨人が日本シリーズを制した。ペナントレースで合計38勝を挙げた西本と江川の両輪がオール完投で2勝ずつして全勝ち星をマークした。MVPは2試合18イニングで2勝、防御率0.50の西本聖(巨人)が選ばれた。優秀選手は同じく2勝の江川卓(巨人)、12打数8安打で打率.667をマークしてシリーズの流れを変えた平田薫(巨人)、打率.429に2ホーマーの河埜和正(巨人)が選ばれ、敢闘賞には初戦のサヨナラ打に第6戦ではホームランの井上弘昭(日本ハム)が選ばれた。

10月25日・第6戦
巨人 0 3 2 0 0 0 1 0 0   6
日本ハム 0 0 0 0 0 1 0 2 0   3

勝ち 江川 2勝   負け 間柴 2敗

本塁打 原2号、井上1号、河埜2号

(この項完)

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