1981年 日本ハムファイターズVS読売ジャイアンツ(前編)
1981年のパ・リーグは大沢監督率いる日本ハムファイターズが東映時代の1962年以来19年ぶりの優勝を果たした。エースの高橋直樹を放出してまで獲得したリリーフエース・江夏の加入が大きく、間柴・高橋一・岡部の先発投手3人だけで42勝8敗と34個もの貯金を稼ぎ出した。前年大活躍した木田は10勝止まりと周囲の期待を裏切ったが、他の投手がそれを補って余りある活躍を見せていた。また、打線ではソレイタが本塁打・打点の二冠王となり、柏原もプロ入り11年目で初の3割打者となった。不動の一番打者となった島田も.318をマークし首位打者争いに加わる活躍を見せた。
セ・リーグは藤田新監督率いる巨人が4年ぶりのリーグ優勝を果たした。打線は前年限りで王貞治が引退した事により、ルーキー原の22本塁打が最高という大砲不在状態だったがリーグ1位の119盗塁と足の威力を絡めて得点をもぎとった。投手陣は3年目の江川が20勝をマークするなど投手部門のタイトルを独占、西本もリーグ2位の18勝と大活躍した。角は最優秀救援投手となり、前年1勝の加藤が12勝と見事なカムバックを見せた。チーム防御率は2.88と投手出身監督の藤田らしい投手王国の完成であった。
共に後楽園球場を本拠地とする両チームによる史上初の同球場シリーズが開幕する事となった。
日本ハム | 巨人 | |||
ソレイタ | 44本塁打 108打点 打率.300 | 中畑清 | 16本塁打 66打点 打率.322 | |
クルーズ | 18本塁打 75打点 打率.297 | 原辰徳 | 22本塁打 67打点 打率.268 | |
柏原純一 | 16本塁打 81打点 打率.310 15盗塁 | ホワイト | 13本塁打 55打点 打率.273 18盗塁 | |
古屋英夫 | 11本塁打 73打点 打率.290 18盗塁 | トマソン | 20本塁打 50打点 打率.261 | |
大宮龍男 | 15本塁打 53打点 打率.249 13盗塁 | 河埜和正 | 16本塁打 42打点 打率.264 27盗塁 | |
島田誠 | 3本塁打 41打点 打率.318 42盗塁 | 篠塚利夫 | 7本塁打 45打点 打率.357 | |
高代延博 | 7本塁打 40打点 打率.268 | 淡口憲治 | 13本塁打 35打点 打率.313 | |
井上弘昭 | 4本塁打 30打点 打率.259 | 山倉和博 | 11本塁打 40打点 打率.205 | |
岡持和彦 | 3本塁打 12打点 打率.315 | 松本匡史 | 3本塁打 21打点 打率.303 33盗塁 | |
間柴茂有 | 15勝0敗 防御率3.46 71奪三振 | 江川卓 | 20勝6敗 防御率2.29 221奪三振 | |
高橋一三 | 14勝6敗 防御率2.94 110奪三振 | 西本聖 | 18勝12敗 防御率2.58 126奪三振 | |
岡部憲章 | 13勝2敗 防御率2.70 88奪三振 | 加藤初 | 12勝6敗2S 防御率2.91 97奪三振 | |
木田勇 | 10勝10敗 防御率4.77 104奪三振 | 定岡正二 | 11勝7敗 防御率3.70 122奪三振 | |
江夏豊 | 3勝6敗25S 防御率2.82 75奪三振 | 角三男 | 8勝5敗20S 防御率1.47 121奪三振 |
10月17日の第1戦は巨人がエース江川、日本ハムがシリーズ経験豊富なベテラン高橋一の先発で始まった。シーズンは絶好調だった江川だったが、プロ入り3年間で「デーゲームに弱い」「外国人に弱い」「一発病」という、本人にとっては有難くないイメージを持たれていた。そしてそれが全てこの試合にも出てしまうのである。日本ハムは1回裏ツーアウトから3番・ソレイタが逆らわずにレフトスタンドへの1号ソロで先制。3回裏に高代の犠飛で加点すると、4回裏にも4番・柏原の左越え本塁打で3点目を奪った。
立ち直るきっかけを掴めない江川は6回裏にも一死満塁から菅野に二塁内野安打を打たれて4点目を失う。6回を終わって4-0と日本ハムがリード。不沈艦のはずの江川が沈み、藤田監督は7回の攻撃で江川に代打・平田を告げる。この試合で江川が好投していれば代打・平田はなく、その後の平田の活躍もなかったかもしれない。このあたりがシリーズの流れの妙でもある。
その代打・平田が二塁打を放ち、続く1番・松本も二塁打して巨人は7回表にようやく1点を返す。そして8回表も巨人は高橋一から二人の走者を出しチャンスを迎える。ここで早くもマウンドに江夏が登場。しかし江夏は8番・山倉をセンターフライに打ち取ったものの、そのまま9番に入っていた平田に2点タイムリーツーベースを浴びてしまう。さらに松本にもタイムリーが出て試合は4-4の同点となった。
しかし日本ハムも粘り、その裏先頭の5番・岡持が巨人の2番手・加藤からライトスタンドにソロ本塁打。日本ハムが5-4と再びリード。8回は打たれはしたが、9回こそ江夏が抑えて逃げ切るだろうと思われた。だが試合はさらにもつれる。9回表の巨人は先頭の代打・松原が同点ホームラン。公式戦通算331本塁打の強打者が最後に見せた渾身の一撃だった。そして迎えた9回裏、藤田監督は角を投入して勝負に出たがこれが裏目。日本ハムは服部のヒットと柏原の四球で一死1・2塁とし、ここで代打・井上弘がレフト線にサヨナラヒット。序盤の快勝ペースから終盤苦しんだ日本ハムだったがまず初戦を勝利した。
巨人 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 1 | 5 | |
日本ハム | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1x | 6 |
勝ち 工藤 1勝 負け 角 1敗
本塁打 ソレイタ1号、柏原1号、岡持1号、松原1号
10月18日の第2戦は巨人がリーグ2位の18勝を挙げた西本、日本ハムがシーズン15勝無敗というラッキーボーイ間柴の先発で始まった。日本ハムば初回に前日のビデオテープを見るような3番・ソレイタの左越え本塁打で1点を先制。しかし、その1球以外に失投を見せない西本は、以後日本ハム打線にヒットを許さない。一方の巨人はランナーは出すが併殺でチャンスをつぶすなどホームが遠い展開が続いた。7回まで8安打1四球と9人の走者を出しながらゼロ行進が続いた。一方の日本ハムもソレイタの1安打のみで2回からはゼロを並べた。
ジリジリする展開が続いた8回表、巨人は2番からの好打順も内野ゴロ二つでたちまちツーアウト。しかし、ここで打席に立った4番・中畑がレフトフェンス直撃のヒット。もう少しで本塁打という当たりに動揺したか、間柴は続く5番・ホワイトに初球をライトスタンドに放り込まれ2-1と巨人がついに逆転。西本は9回裏二死からソレイタに二塁打を許したが、最後の打者・服部を三振に仕留めて2安打完投勝利。しかも毎回10奪三振のオマケ付きだった。2試合とも接戦の末の1勝1敗でシリーズの流れを掴み取るのは第3戦以降の行方に委ねられた。
巨人 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | |
日本ハム | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
勝ち 西本 1勝 負け 間柴 1敗
本塁打 ソレイタ2号、ホワイト1号
10月20日の第3戦は日本ハムが防御率1位の岡部、巨人が定岡の先発で始まった。巨人は初回に四球の松本を置いて4番・中畑が先制2ラン。日本ハムも2回表に井上の四球と古屋のヒットで一死1・3塁のチャンスを掴み、8番・菅野の内野ゴロの間に1点を返す。その後は両チーム得点なく6回に突入。日本ハムは一死から古屋、大宮の連打で1・2塁とし、ここで途中出場の鍵谷がライト線を破る2点タイムリーツーベースで逆転に成功した。
この年の公式戦でわずか3打点の鍵谷が放った2点二塁打でリードを奪った日本ハムは、その裏からシリーズ3連投の工藤を投入。工藤は2回を無失点に抑え、8回からは江夏に繋いだ。江夏は8回裏は先頭の柴田にヒットを許したが、続く中畑を併殺に取り、9回裏も三者凡退に退けて今シリーズ初セーブ。日本ハムが2勝1敗と星一つリードした。
日本ハム | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 3 | |
巨人 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
勝ち 工藤 2勝 セーブ 江夏 1セーブ 負け 定岡 1敗
本塁打 中畑1号
(後編に続く)