ちょっとしたコラム      
               
06.8.26付


1981年 日本ハムファイターズVS読売ジャイアンツ(前編)

 1981年のパ・リーグは大沢監督率いる日本ハムファイターズが東映時代の1962年以来19年ぶりの優勝を果たした。エースの高橋直樹を放出してまで獲得したリリーフエース・江夏の加入が大きく、間柴・高橋一・岡部の先発投手3人だけで42勝8敗と34個もの貯金を稼ぎ出した。前年大活躍した木田は10勝止まりと周囲の期待を裏切ったが、他の投手がそれを補って余りある活躍を見せていた。また、打線ではソレイタが本塁打・打点の二冠王となり、柏原もプロ入り11年目で初の3割打者となった。不動の一番打者となった島田も.318をマークし首位打者争いに加わる活躍を見せた。

 セ・リーグは藤田新監督率いる巨人が4年ぶりのリーグ優勝を果たした。打線は前年限りで王貞治が引退した事により、ルーキー原の22本塁打が最高という大砲不在状態だったがリーグ1位の119盗塁と足の威力を絡めて得点をもぎとった。投手陣は3年目の江川が20勝をマークするなど投手部門のタイトルを独占、西本もリーグ2位の18勝と大活躍した。角は最優秀救援投手となり、前年1勝の加藤が12勝と見事なカムバックを見せた。チーム防御率は2.88と投手出身監督の藤田らしい投手王国の完成であった。

 共に後楽園球場を本拠地とする両チームによる史上初の同球場シリーズが開幕する事となった。

両チーム主力選手の成績
日本ハム     巨人  
ソレイタ 44本塁打 108打点 打率.300   中畑清 16本塁打 66打点 打率.322
クルーズ 18本塁打 75打点 打率.297   原辰徳 22本塁打 67打点 打率.268
柏原純一 16本塁打 81打点 打率.310 15盗塁   ホワイト 13本塁打 55打点 打率.273 18盗塁
古屋英夫 11本塁打 73打点 打率.290 18盗塁   トマソン 20本塁打 50打点 打率.261
大宮龍男 15本塁打 53打点 打率.249 13盗塁   河埜和正 16本塁打 42打点 打率.264 27盗塁
島田誠 3本塁打 41打点 打率.318 42盗塁   篠塚利夫 7本塁打 45打点 打率.357
高代延博 7本塁打 40打点 打率.268   淡口憲治 13本塁打 35打点 打率.313
井上弘昭 4本塁打 30打点 打率.259   山倉和博 11本塁打 40打点 打率.205
岡持和彦 3本塁打 12打点 打率.315   松本匡史 3本塁打 21打点 打率.303 33盗塁
         
間柴茂有 15勝0敗 防御率3.46 71奪三振   江川卓 20勝6敗 防御率2.29 221奪三振
高橋一三 14勝6敗 防御率2.94 110奪三振   西本聖 18勝12敗 防御率2.58 126奪三振
岡部憲章 13勝2敗 防御率2.70 88奪三振   加藤初 12勝6敗2S 防御率2.91 97奪三振
木田勇 10勝10敗 防御率4.77 104奪三振   定岡正二 11勝7敗 防御率3.70 122奪三振
江夏豊 3勝6敗25S 防御率2.82 75奪三振   角三男 8勝5敗20S 防御率1.47 121奪三振

 10月17日の第1戦は巨人がエース江川、日本ハムがシリーズ経験豊富なベテラン高橋一の先発で始まった。シーズンは絶好調だった江川だったが、プロ入り3年間で「デーゲームに弱い」「外国人に弱い」「一発病」という、本人にとっては有難くないイメージを持たれていた。そしてそれが全てこの試合にも出てしまうのである。日本ハムは1回裏ツーアウトから3番・ソレイタが逆らわずにレフトスタンドへの1号ソロで先制。3回裏に高代の犠飛で加点すると、4回裏にも4番・柏原の左越え本塁打で3点目を奪った。

 立ち直るきっかけを掴めない江川は6回裏にも一死満塁から菅野に二塁内野安打を打たれて4点目を失う。6回を終わって4-0と日本ハムがリード。不沈艦のはずの江川が沈み、藤田監督は7回の攻撃で江川に代打・平田を告げる。この試合で江川が好投していれば代打・平田はなく、その後の平田の活躍もなかったかもしれない。このあたりがシリーズの流れの妙でもある。

 その代打・平田が二塁打を放ち、続く1番・松本も二塁打して巨人は7回表にようやく1点を返す。そして8回表も巨人は高橋一から二人の走者を出しチャンスを迎える。ここで早くもマウンドに江夏が登場。しかし江夏は8番・山倉をセンターフライに打ち取ったものの、そのまま9番に入っていた平田に2点タイムリーツーベースを浴びてしまう。さらに松本にもタイムリーが出て試合は4-4の同点となった。

 しかし日本ハムも粘り、その裏先頭の5番・岡持が巨人の2番手・加藤からライトスタンドにソロ本塁打。日本ハムが5-4と再びリード。8回は打たれはしたが、9回こそ江夏が抑えて逃げ切るだろうと思われた。だが試合はさらにもつれる。9回表の巨人は先頭の代打・松原が同点ホームラン。公式戦通算331本塁打の強打者が最後に見せた渾身の一撃だった。そして迎えた9回裏、藤田監督は角を投入して勝負に出たがこれが裏目。日本ハムは服部のヒットと柏原の四球で一死1・2塁とし、ここで代打・井上弘がレフト線にサヨナラヒット。序盤の快勝ペースから終盤苦しんだ日本ハムだったがまず初戦を勝利した。

10月17日・第1戦
巨人 0 0 0 0 0 0 1 3 1   5
日本ハム 1 0 1 1 0 1 0 1 1x   6

勝ち 工藤 1勝   負け 角 1敗

本塁打 ソレイタ1号、柏原1号、岡持1号、松原1号


 10月18日の第2戦は巨人がリーグ2位の18勝を挙げた西本、日本ハムがシーズン15勝無敗というラッキーボーイ間柴の先発で始まった。日本ハムば初回に前日のビデオテープを見るような3番・ソレイタの左越え本塁打で1点を先制。しかし、その1球以外に失投を見せない西本は、以後日本ハム打線にヒットを許さない。一方の巨人はランナーは出すが併殺でチャンスをつぶすなどホームが遠い展開が続いた。7回まで8安打1四球と9人の走者を出しながらゼロ行進が続いた。一方の日本ハムもソレイタの1安打のみで2回からはゼロを並べた。

 ジリジリする展開が続いた8回表、巨人は2番からの好打順も内野ゴロ二つでたちまちツーアウト。しかし、ここで打席に立った4番・中畑がレフトフェンス直撃のヒット。もう少しで本塁打という当たりに動揺したか、間柴は続く5番・ホワイトに初球をライトスタンドに放り込まれ2-1と巨人がついに逆転。西本は9回裏二死からソレイタに二塁打を許したが、最後の打者・服部を三振に仕留めて2安打完投勝利。しかも毎回10奪三振のオマケ付きだった。2試合とも接戦の末の1勝1敗でシリーズの流れを掴み取るのは第3戦以降の行方に委ねられた。

10月18日・第2戦
巨人 0 0 0 0 0 0 0 2 0   2
日本ハム 1 0 0 0 0 0 0 0 0   1

勝ち 西本 1勝   負け 間柴 1敗

本塁打 ソレイタ2号、ホワイト1号


 10月20日の第3戦は日本ハムが防御率1位の岡部、巨人が定岡の先発で始まった。巨人は初回に四球の松本を置いて4番・中畑が先制2ラン。日本ハムも2回表に井上の四球と古屋のヒットで一死1・3塁のチャンスを掴み、8番・菅野の内野ゴロの間に1点を返す。その後は両チーム得点なく6回に突入。日本ハムは一死から古屋、大宮の連打で1・2塁とし、ここで途中出場の鍵谷がライト線を破る2点タイムリーツーベースで逆転に成功した。

 この年の公式戦でわずか3打点の鍵谷が放った2点二塁打でリードを奪った日本ハムは、その裏からシリーズ3連投の工藤を投入。工藤は2回を無失点に抑え、8回からは江夏に繋いだ。江夏は8回裏は先頭の柴田にヒットを許したが、続く中畑を併殺に取り、9回裏も三者凡退に退けて今シリーズ初セーブ。日本ハムが2勝1敗と星一つリードした。

10月20日・第3戦
日本ハム 0 1 0 0 0 2 0 0 0   3
巨人 2 0 0 0 0 0 0 0 0   2

勝ち 工藤 2勝   セーブ 江夏 1セーブ   負け 定岡 1敗

本塁打 中畑1号

(後編に続く)

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