ちょっとしたコラム      
               
06.6.17付


1978年 ヤクルトスワローズVS阪急ブレーブス(後編)

 阪急の2勝1敗で迎えた10月18日の第4戦は阪急が中2日の今井、ヤクルトが中3日の安田の先発で始まった。阪急は初回にマルカーノのタイムリーで1点を先行すると、2回には中沢、今井、簑田にタイムリーが出て4-0とし安田をあっさりKO。5回にも二番手・井原から先頭の簑田が三塁打を放ち、一死後にマルカーノの三塁ゴロの間にホームインして5-0とした。第2戦では3回6失点の今井だったが、この試合は5回まで大矢の1安打に抑える好投を見せた。試合は阪急のワンサイドかと思われた。

 しかし、6回表から試合の流れは急転する。この回先頭の代打・永尾、続くヒルトンが連続ヒット。2番・船田のショートゴロを名手・大橋がエラーして無死満塁。ここで3番・若松がライト前タイムリー。続く大杉、マニエルの内野ゴロの間にそれぞれランナーが還り、さらに6番・杉浦のタイムリーでヤクルトはこの回一挙に4点を返した。スコアは5-4、勝敗の行方はわからなくなった。

 その後両チームとも得点なく最終回。9回表のヤクルトは盗塁失敗もあってツーアウトランナーなし。しかしここから粘りを見せた。代打の伊勢がショート内野安打。打順は1番のヒルトンに回ったが、上田監督は今井に懸けて続投させた。しかし、ヒルトンの打球はレフトラッキーゾーンに飛び込む逆転2ランとなった。ヤクルトはその裏からエース・松岡を投入。松岡は無難に1イニングを抑えてシリーズは2勝2敗のタイとなった。中盤までの5点差を逆転される、それも9回二死からの逆転2ランという阪急サイドにはショックの残る敗戦であった。

10月18日・第4戦
ヤクルト 0 0 0 0 0 4 0 0 2   6
阪急 1 3 0 0 1 0 0 0 0   5

勝ち 西井 1勝   セーブ 松岡 1勝1セーブ   負け 今井 2敗

本塁打 ヒルトン1号


 19日の第5戦は阪急が山田、ヤクルトが梶間の先発で始まった。第1戦で山田から10安打しているヤクルトは、初回から大杉の2点タイムリーで先手を取る。3回までノーヒットに抑えられた阪急は4回裏に二死満塁のチャンスを掴む。ここでヤクルト・広岡監督は早くも梶間をあきらめて2番手の井原をマウンドに送った。しかし、その井原が続く河村の3球目にワイルドピッチ、三塁走者が還って2-1。

 2回以降無失点に抑えていた山田だったが、6回表に大矢のタイムリーで追加点を許した。だが阪急も食い下がり、7回裏に福本がタイムリーとなる三塁内野安打を放ち再び1点差。8回の攻撃はヤクルトは若松、阪急はマルカーノがそれぞれソロ本塁打を放ち依然として1点差のまま9回表を迎えた。7回途中から登板している投手の松岡が先頭打者。松岡はショート内野安打で出塁し、一死後船田の試みた犠打が野選となって一死1・2塁。続く3番・若松はレフトフライに倒れたが、4番の大杉が試合を決める3ランホームランを叩き込んだ。

 山田は150球を投げ、14安打を浴びた。故障で切り札・山口を欠いた阪急は先発投手を引っ張らざるを得ず、それが前日の今井での逆転負けに続き痛い形で表れた。シリーズ初出場のヤクルトはついに3勝2敗と日本一に王手を掛けた。

10月19日・第5戦
ヤクルト 2 0 0 0 0 1 0 1 3   7
阪急 0 0 0 1 0 0 1 1 0   3

勝ち 井原 1勝   セーブ 松岡 1勝2セーブ   負け 山田 1勝1敗

本塁打 若松1号、マルカーノ2号、大杉2号


 21日の第6戦はヤクルトが鈴木、阪急が白石の先発で始まった。2回まで無難に抑えた鈴木だったが、日本一へのプレッシャーか3回に崩れた。敬遠を含む3四球で二死満塁の場面から、島谷・ウィリアムスに連続タイムリー。さらに続く中沢に3ランを浴びて一挙に6失点を喫した。ヤクルトは4回裏に1点を返したが、阪急は攻撃の手を緩めず5回表にも、この回から登板のヤクルト・西井から島谷とウィリアムスの連続ホームラン、大橋のタイムリー、福本の2ランで5点を加えて試合を決めた。

 捕手の大矢は、言葉は悪いがこの試合を捨て、阪急打線の研究に充てた。監督の広岡は乱打された西井を9回まで投げさせ、投手の無駄使いを避け最終戦に備えた。阪急は15安打12得点で大勝したものの、ヤクルトの選手たちは逆にさっぱりと気持ちを切り替える事が出来た。ともあれ、シリーズは3勝3敗のタイとなり、阪急のシリーズ4連覇とヤクルトの初出場初優勝のかかった第7戦を迎える事となった。

10月21日・第6戦
阪急 0 0 6 0 5 0 0 1 0   12
ヤクルト 0 0 0 1 2 0 0 0 0   3

勝ち 白石 1勝   負け 鈴木 2敗

本塁打 中沢1号、島谷1号、ウィリアムス1号、福本2号、船田2号


 10月22日の第7戦はヤクルトが松岡、阪急が足立の投げ合いとなった。松岡が3回まで3安打無失点に抑えれば、足立も4回まで5安打されながらゼロに抑えて序盤は0-0のまま進んだ。そして中盤に入った5回、ヤクルトは思い切った走塁で先取点を奪う。この回先頭の7番・大矢は内野安打で出塁すると、続く水谷のバントで二進。二死後、1番・ヒルトンの打球が二塁内野安打となる間に好走良く本塁を陥れた。76年第7戦の7回から25イニング無失点だった足立にとってシリーズ久しぶりの失点だった。

 6回裏のヤクルトの攻撃は、3番・若松がレフトフライに倒れてワンナウト。続く4番・大杉がレフトポール際へ大飛球。本塁打の判定に大杉はベース一周してホームイン。しかし、阪急・上田監督はこの判定に対し、「ファウルだ!」と猛抗議。シリーズ史に残る1時間19分の中断の末に、判定は覆ることなく2-0のスコアで試合は再開された。1時間以上待たされた足立の続投は困難で、左腕・松本がマウンドに上がった。しかし、高卒ルーキーには荷が重く、最初の打者である5番・マニエルに左中間本塁打を喫して3-0。結果的には中断を挟んでの二者連続ホームランであった。

 阪急は7回から最後の望みを懸けて3番手にエース・山田を送った。7回は3人で抑えた山田だったが、8回二死から迎えた4番・大杉にレフトスタンドに叩き込まれた。今度はポール際でなく、誰もが認める文句なしのホームランだった。
 先取点をもらってからもスコアボードにゼロを並べ続けた松岡は、9回表も河村そして大熊を続けて三塁ゴロ、井上をショートゴロに仕留めて三者凡退で締めくくった。4-0でヤクルトが快勝して、阪急4連覇の野望は断たれた。ヤクルトのリーグ初優勝そして初の日本一は新しい時代の始まりを告げるかのようであった。

 最優秀選手には7試合シリーズでタイ記録の4本塁打、そして新記録の10打点をマークした大杉勝男が選ばれた。最優秀投手には2勝2セーブと4勝全てに貢献した松岡弘が、優秀選手には打率.333の若松勉が、敢闘賞には第3戦で完封勝利の足立光宏が、技能賞には第4戦で逆転2ランのヒルトンが、打撃賞には打率.458の島谷金二が選ばれた。

10月22日・第7戦
阪急 0 0 0 0 0 0 0 0 0   0
ヤクルト 0 0 0 0 1 2 0 1   4

勝ち 松岡 2勝2セーブ   負け 足立 1勝1敗

本塁打 大杉3号4号、マニエル3号

(この項完)

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