ちょっとしたコラム      
                
06.5.6付


1976年 読売ジャイアンツVS阪急ブレーブス(後編)

 10月28日に予定された第4戦はまたも雨で1日延びて29日に行われた。先発は阪急が中3日の足立、巨人が中5日の堀内で始まった。阪急は初回に福本が堀内の出鼻をくじく先頭打者本塁打で1点を先取。巨人も2回に王が早くもシリーズ3号となるソロ本塁打を打ち返して1-1の同点。しかし阪急は3回裏に加藤秀のタイムリー三塁打でまたも1点をリード。しかし堀内は4回から立ち直り阪急打線にヒットを許さない。

 巨人は5回二死から1番・柴田が三塁打を放って同点のチャンスを迎えた。上田監督はここで早くも切り札・山口をマウンドに送った。山口は2番・高田を三振に仕留めてこの回のピンチは防いだ。しかし3イニング目に入った7回に制球難の悪癖が出て3連続四球で一死満塁のピンチを招いた。ここで柴田がライトへ犠牲フライを打ち上げて試合は2-2の同点となった。

 6回まで2安打ピッチングの堀内に代打を送ったため、その裏から巨人は2番手に小林を起用した。小林は7回・8回とヒットを1本ずつ許したが後続を断ってゼロに抑えた。そして迎えた9回表、巨人は7番・8番が連続三振であっさりツーアウト。打順は9番・小林に回りそのままバッターボックスへ。これでチェンジかと思われたが小林はしぶとく二塁への内野安打で出塁、当たっている1番の柴田に打順が回った。ここで柴田はライトスタンドに勝ち越しの2ランホームラン。

 小林が9回裏を三者凡退に抑えて巨人はようやくシリーズ1勝目を手にした。それでもチーム全体では6安打でシリーズ4試合連続一桁安打と、打線に火が付いたとはとても言えない状況が続いていた。特にジョンソンがこの試合を含め12打数ノーヒットと完全なブレーキとなっていた。

10月29日・第4戦
巨人 0 1 0 0 0 0 1 0 2   4
阪急 1 0 1 0 0 0 0 0 0   2

勝ち 小林 1勝1敗   負け 山口 1勝1敗1セーブ

本塁打 福本1号、王3号、柴田1号


 翌30日の第5戦は阪急が完投勝ちから中2日で山田、巨人が中4日のライトの先発で始まった。3回まで両チーム無得点。特にライトは好調な阪急打線を3回まで1四球のみのノーヒットに抑えていた。4回に巨人は連続四球から一死2・3塁のチャンスを掴み、7番・吉田のタイムリーで2点を先行した。さらに二死後、9番のライトがレフトラッキーゾーンに飛び込む2ランを放ってこの回一気に4点を奪った。シリーズ5試合目にして3度目の先発となった山田には疲れから普段の球威やボールの切れはなかった。

 その裏の阪急はウィリアムスのタイムリー三塁打で1点を返すが、その後はライトの丁寧な投球にかわされてしまう。巨人は7回に末次の犠牲フライで待望の追加点。阪急は8回に加藤秀のタイムリーでライトをマウンドから引きずり降ろし、代わった加藤からもマルカーノのタイムリーで5-3と2点差に詰め寄るが反撃もここまで。9回表に山口を投入してあきらめない姿勢を見せたが、巨人も9回裏は一死から加藤が四球を出すと小林につなぐ万全のリレーで逃げ切った。

 これで巨人は王手を掛けられながらも敵地で2連勝して上げ潮ムードの中、ホームの後楽園に戻る事となった。

10月30日・第5戦
巨人 0 0 0 4 0 0 1 0 0   5
阪急 0 0 0 1 0 0 0 2 0   3

勝ち ライト 1勝1敗   セーブ 小林 1勝1敗1セーブ   負け 山田1勝1敗

本塁打 ライト1号


 11月1日の第6戦は巨人が中2日のベテラン堀内、阪急がリリーフから3連投となる山口の先発で始まった。この試合で勝負を決めたい阪急は初回から堀内に襲い掛かった。四球で出塁した福本が4番・マルカーノのタイムリーで生還すると、続く5番のウィリアムスもタイムリー三塁打でマルカーノを迎え入れた。
 阪急は4回にも中沢のタイムリーと大橋のスクイズで2点を追加して堀内をKO。5回には2番手・加藤からウィリアムスが3ランホームランを叩き込んで7-0と一方的にリードした。

 5回表で7点のビハインド。しかもマウンドの山口は4回まで巨人打線を2安打5奪三振に封じている。3連敗から2連勝した巨人だったが、「最早これまでか・・・」という空気が球場を包んだ。しかし、勝負というものは終ってみなければわからない。7点を追う巨人は5回裏に淡口が四球で歩くと、続く柴田が二塁打でチャンスを広げ、張本のファーストゴロと王のセンター前にポトリと落ちるタイムリーで2点を返した。続く6回にはまたも山口が制球を乱して四球を連発。その2走者を置いて淡口がライトスタンドに3ランホームラン。

 ついに2点差となり流れは完全に巨人に傾いた。7回裏、先頭の王に四球を与えてついに山口は降板。これまた連投となる山田がマウンドに上がった。山田は7回のピンチはしのいだものの、8回は先頭の淡口にヒットを打たれ、続く柴田には泳ぎ気味ながらライトスタンドに持って行かれた。同点2ランホームラン、ついに7-7と試合は振り出しに戻った。

 6回からマウンドに上がった巨人の3番手・小林は一人の走者も許さないパーフェクト・ピッチングを続けていた。5イニング目に入った10回表も2番・大熊をショートゴロ、3番・加藤秀をセカンドゴロ、4番・マルカーノをキャッチャーファウルフライと危なげなく退けた。
 その裏の巨人も3番・張本からの好打順。張本はレフトへの二塁打で出塁。続く王はスタンドからの轟々たる非難の声の中、この日3個目の敬遠で歩かされ無死・1・2塁となった。5番には途中から投手の小林が入っていた。そのまま打席に入った小林はバントの構えからヒッティングに出た。痛烈な打球がセカンドの左を破りセンター前に抜ける。外野が前進していたためランナーは三塁に止まって無死満塁、阪急にとっては絶体絶命のピンチを迎えた。

 百戦錬磨の山田だったが、こうなるともう平常心は保てなかった。続く6番の高田に簡単にライト前に運ばれて万事休す。三塁ランナーの張本が両手を挙げて万歳をしながらホームを駆け抜けた。巨人は日本シリーズ史に残る逆転劇でついに3勝3敗のタイに持ち込んだのである。日本シリーズは12年ぶりに、勝った方が優勝という第7戦にもつれ込む事となった。

11月1日・第6戦
阪急 2 0 0 2 3 0 0 0 0 0   7
巨人 0 0 0 0 2 3 0 2 0 1x   8

勝ち 小林 2勝1敗1セーブ   負け 山田 1勝2敗

本塁打 ウィリアムス1号、淡口1号、柴田2号


 翌2日の第7戦は巨人が中2日のライト、阪急が中3日の足立で始まった。試合は3回表に阪急が福本のタイムリー二塁打で1点を先制。巨人は4回までノーヒットと足立の軟投に手こずったが、5回にようやく高田がチーム初安打となる1号ソロで同点とした。6回にはライトが自ら二塁打で出塁し、柴田のヒットで三進。一死後、張本の内野ゴロを一塁手の加藤秀が本塁悪送球して、この間にライトが還って巨人が2-1と勝ち越した。

 史上2度目となる3連敗からの4連勝へ、巨人はあと3イニングとなった。しかし、107球を投げて中2日の先発は33歳になるライトのスタミナを消耗させていた。加えて6回に出塁して塁間を走り回った事も微妙に投球に影響した。勝ち越し直後の7回表に一死からウィリアムスに内野安打を許したライトは続く森本に痛恨の逆転2ランを喫してしまう。

 前日5イニングを投げている切り札・小林の投入をためらった巨人は8回もライトを続投させるが、これが裏目に出て福本にソロ本塁打を浴びた。リードを奪っても上田監督は前日勝ち試合を壊した山口の4連投となる投入は避け、足立に全てを任せた。足立は8回に一死2塁、9回にも二死1・2塁のピンチを迎えたが、落ち着いて後続を断ちゲームセット。ついに悲願の打倒巨人を果たした阪急は2年連続の日本一に輝いたのである。巨人にとって日本シリーズでの敗退は南海にストレート負けした1959年以来17年ぶりの出来事だった。

11月2日・第7戦
阪急 0 0 1 0 0 0 2 1 0   4
巨人 0 0 0 0 1 1 0 0 0   2

勝ち 足立 2勝   負け ライト 1勝2敗

本塁打 高田1号、森本2号、福本2号

 MVPには2本塁打を含む27打数11安打の.407をマークした福本豊が選ばれた。打撃賞には福本と柴田勲が選ばれた。柴田も福本と全く同じ打率.407、2本塁打と甲乙付け難い活躍だった。最優秀投手には2勝の足立光宏、優秀選手には打率.393のウィリアムス、技能賞には打率.357のマルカーノ、そして敢闘賞には柴田が選ばれた。

(この項完)

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