ちょっとしたコラム      
               
05.5.21付


二塁打

 通算記録では70年で引退した山内一弘(広島)の448二塁打が長いこと1位に君臨していたが、福本豊(阪急)が引退年の88年に1本更新して18年ぶりに新しく1位の座に着いた。それから17年、「歴史は繰り返す」で福本もついに1位の座から陥落した。新たに記録保持者となったのが立浪和義(中日)である。5月19日の日本ハム戦で今季9本目、通算450本目の二塁打を放ち歴代1位に進出した。不思議なことに年間二塁打王が1度もないものの、30二塁打以上9度は歴代最多。コンスタントに打ち続けて来た事が記録更新を可能にした要因である。また、歴代ベストテンの中で200本塁打未満は川上哲治(巨人)とこの立浪の二人だけ。その川上にしても2度本塁打王になっている。二塁打1本あたりに要した打数も17.47でベストテンでは山内の17.19に次ぐ2位と内容的にも二塁打中心のバッターと言える。

 しかし、その立浪も一時に比べると昨年あたりからややペースダウン。実は昨年開幕時で日本新記録に34二塁打となっており、昨年中の更新も期待されていたのだが、25二塁打に留まって今季に持ち越しとなっていた。それでも25二塁打はここ数年の立浪にしては少ないというだけで、とりたてて騒ぐほど少ない数字ではなかった。それが今季は開幕からなかなか二塁打が出ず心配された。16試合目となる4月20日の広島戦最終打席でようやく今季初の二塁打。しかし1本出るとペースは上がり、チーム40試合目となる5月18日の日本ハム戦で一気に2本打って福本に並んだ。そして翌日の第2打席であっさりと新記録を達成したのだ。シーズン1本目からは26試合で9本と約3試合に1本のハイペースだった。

 まだ35歳の立浪だけに日本新の450二塁打も通過点。史上初の500二塁打も、20本ずつでもあと3年で届くわけで500本を超えどれだけ上積み出来るかが興味深い。追う現役選手2番手が380本の田中幸雄(日本ハム)だが、昨年5本で今季もここまで3本と差はどんどん広がっている。3位の古田敦也(ヤクルト)は353本で100本近く離れ、年齢も39歳とあっては立浪の1位は当分動きそうにない。

 現役2番手の田中幸も歴代ベストテン入りまであと17本と迫ってはいるが、常時出場が叶わぬ現状ではかなり遠く感じられもする。それ以下の現役選手を見ても年齢的に400二塁打の可能性があるのは石井琢朗(横浜)、前田智徳(広島)あたりか。それでも今季も含めて25本ずつ打っても5年ほどかかり、石井34歳に前田33歳という年齢からは400本到達はぎりぎりか。

 現役ベストテン以下では、何と言っても福浦和也(ロッテ)に対する期待感が大きい。詳しくは年間記録のところで触れるが、ここ3年間で実に132二塁打を記録。昨年まで29歳時点での238二塁打は立浪の262二塁打には及ばないものの、25〜29歳の5年間だけ見れば福浦183本、立浪139本と圧倒。プロ入り3年目までの二塁打がゼロの福浦だけに、その後のハイペースぶりは見事。今後は平均32本レベルで5年後に34歳での400二塁打が達成可能。十分に500という数字も見えてくる。

 通算200二塁打到達は山内、立浪が9年目で福本は10年目。これを7年目という超スピードで達成したのが年間記録保持者でもある谷佳知(オリックス)。昨年まで8年間では230本を記録している。ただ、大学・社会人を経ての入団だけに最終本数は400本に届くかどうかぐらいか。歴代ベストテン入りは厳しそうだ。

 その谷でさえ100二塁打は5年目だったが、これを4年目でクリアしたのが福留孝介(中日)。4年目の02年に42本打って一気に到達した。昨年まで27歳で156二塁打。20代のうちに200本には到達しそうである。ちなみに300二塁打以上の選手44人(日米通算含む)を見ても、4年目までに100二塁打したのは長嶋茂雄と榎本喜八の二人だけ。現役では高橋由伸(巨人)も達成している。

 日米通算では昨年までイチロー(マリナーズ)が325本、松井秀喜(ヤンキース)が318本、松井稼頭央(メッツ)が303本と300本台に突入。昨年のイチローは262安打した割には24二塁打と少なかったが、平均30本でも6年で500本には到達可能。1歳下の松井秀、2歳下の松井稼もイチローに近いペースで打っており、500二塁打は一つの目標となるだろう。

参考 300二塁打までのペース比較

<通算二塁打ベストテン>
歴代 選手名(最終所属) 記録   現役 選手名(所属) 記録 04年実績
1 福本豊(阪急) 449二塁打   1 立浪和義(中日) 441二塁打 25二塁打
2 山内一弘(広島) 448二塁打   2 田中幸雄(日本ハム) 377二塁打 5二塁打
3 立浪和義(中日) 441二塁打   3 古田敦也(ヤクルト) 347二塁打 23二塁打
4 王貞治(巨人) 422二塁打   4 清原和博(巨人) 330二塁打 2二塁打
5 張本勲(ロッテ) 420二塁打   4 初芝清(ロッテ) 330二塁打 11二塁打
6 長嶋茂雄(巨人) 418二塁打   6 堀幸一(ロッテ) 303二塁打 23二塁打
7 榎本喜八(西鉄) 409二塁打   7 野村謙二郎(広島) 299二塁打 18二塁打
8 川上哲治(巨人) 408二塁打   8 石井琢朗(横浜) 285二塁打 26二塁打
9 松原誠(巨人) 405二塁打   9 前田智徳(広島) 275二塁打 28二塁打
10 野村克也(西武) 397二塁打   10 鈴木健(ヤクルト) 270二塁打 21二塁打

 年間記録は98年にP・クラーク(近鉄)が48二塁打で、42年ぶりに山内の記録を破る新記録をマークした。しかし、わずか3年後の01年に谷佳知が空前の52二塁打をマークして更新。03年に福浦和也が50本まで迫ったが、2本及ばず歴代2位に留まった。この経過からもわかるように、近年二塁打記録は伸びており、40二塁打以上の打者延べ21人中ここ10年以内の記録が13人にもなっている。

 その中でも注目株は福浦和也で、歴代ベストテンでは唯一2度、現役ベストテンでは3度も顔を出している。02年40本、03年50本、04年42本と3年連続40二塁打を継続中。他に年間40二塁打を2度記録した選手は皆無であり、福浦の突出ぶりがわかる。当然、年間記録への挑戦が楽しみになるが、パ・リーグは今季から03年までの140試合制と比べると4試合減っての136試合制となった。たかが4試合かもしれないが、記録がかかって来た場合には1試合と言えど大きい。しかし48二塁打の98年クラークの時は130試合制であり、以前触れたイチロー(オリックス)の210安打も同様である。従って福浦にも今年こそ、の期待をしたいものだ。

 今季の数字を見ると森野将彦(中日)が16二塁打で両リーグトップ。チーム42試合時点でこの数字だから、146試合では55本ペース。最近ようやく規定打席に達した状況でまだ124打数だから約8打数に1本のハイペースである。自己最多である02年の12本は既に超えた。これまでレギュラーとして1シーズンを乗り切った経験はないが、どこまで行けるか注目である。

 続くのは金本知憲(阪神)で43試合で15二塁打。自己最多は98年の33本だが、もう半分近く打った事になる。146試合換算では50本ペース。
 パ・リーグでは12二塁打でベニー(ロッテ)とカブレラ(西武)がトップ。ベニーは昨年31二塁打だが、カブレラは在籍4年で03年の24二塁打が最高と、あまり二塁打記録に縁がありそうではない。むしろ11二塁打の石井義人(西武)や10二塁打の北川博敏(オリックス)らの中距離打者の今後に期待したい。

 他には今岡誠(阪神)は02年40本、03年35本と中距離打者の代表的選手だったが、昨年は28本塁打と本塁打の増加と引き換えに29二塁打と二塁打は減少してしまった。今季も7本塁打に対し二塁打は4本とすっかり「二塁打男」のイメージは薄れてしまった感がある。その他、40本以上の実績がある福留や礒部公一(楽天)にも期待したい。

参考 年度別リーダーズ(二塁打)

<年間二塁打ベストテン>
歴代 選手名(当時の所属) 記録 年度   現役 選手名(当時の所属) 記録 年度
1 谷佳知(オリックス) 52二塁打 2001   1 谷佳知(オリックス) 52二塁打 2001
2 福浦和也(ロッテ) 50二塁打 2003   2 福浦和也(ロッテ) 50二塁打 2003
3 P・クラーク(近鉄) 48二塁打 1998   3 礒部公一(近鉄) 42二塁打 2001
4 山内和弘(毎日) 47二塁打 1956   3 福留孝介(中日) 42二塁打 2002
5 松井稼頭夫(西武) 46二塁打 2002   3 福浦和也(ロッテ) 42二塁打 2004
6 大沢清(大洋) 45二塁打 1950   6 小笠原道大(日本ハム) 40二塁打 2001
6 松原誠(大洋) 45二塁打 1978   6 今岡誠(阪神) 40二塁打 2002
8 小玉明利(近鉄) 42二塁打 1961   6 福浦和也(ロッテ) 40二塁打 2002
8 A・パウエル(中日) 42二塁打 1996   6 吉岡雄二(近鉄) 40二塁打 2002
8 礒部公一(近鉄) 42二塁打 2001   10 立浪和義(中日) 39二塁打 1996
8 福留孝介(中日) 42二塁打 2002   10 城島健司(ダイエー) 39二塁打 2003
8 福浦和也(ロッテ) 42二塁打 2004   10 清水隆行(巨人) 39二塁打 2004

ランキングの記録は2004年まで、今季の記録は5月20日まで

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