ちょっとしたコラム      
               
 05.5.7付


安打

 通算記録では張本勲(ロッテ)の3085安打が金字塔として輝いている。150本ずつでも20年以上かかるわけで、高卒で入団して1年目か2年目位からずっとレギュラーというようなペースでないとこういう数字は残せない。しかも大きな故障なく毎年コンスタントに成績を残す事が必要である。ベストテン入りしている選手の実働年数は長嶋茂雄(巨人)の17年、川上哲治(巨人)の18年を除き20年以上である。

 長嶋はベストテンでは唯一の大卒選手であり、通算安打を実働年数で割った平均安打数は実に145本に達する。張本134、野村111、王126、門田106、衣笠110、福本127など他の選手の平均本数と比べても出色の数字である。最多安打10回も当分破られそうにない。20年未満でベストテン入りするにはこれほどのハイペースが必要だと言う証明である。現役では昨年まで谷佳知(オリックス)が8年で1182安打の平均147本、高橋由伸(巨人)が7年で1000安打の平均142本と二人が平均140本超えを果たしている。

 25歳でプロ入りした落合博満(日本ハム)が9位にランクインしているのも立派。満40歳を過ぎてからも504安打を上積みした。41歳4ヶ月での2000本安打達成も史上最年長。40歳以後に落合を上回る525安打を放ったのは門田博光(ダイエー)。2000本安打は39歳6ヶ月で達成し、最終的に歴代4位まで進出した。

 記録に挑む現役1番手は03年の2000本安打達成後も順調に本数を上積みしている立浪和義(中日)。今季132安打で川上に並び歴代ベストテン入りする。152安打ならば9位の落合にも追い付く。昨年が161安打だけに今季中の9位進出も現実味を帯びてくる。特に故障などない限り、06年に史上7人目の2500安打にも到達しそう。2500を超えた後、どこまで数字を伸ばせるかが興味の的になってくる。今季も5月6日まで30試合で34安打(打率.305)と順調に数字を伸ばしている。

 現役2位以下では開幕時で清原和博(巨人)37歳、古田敦也(ヤクルト)39歳、野村謙二郎(広島)38歳、田中幸雄(日本ハム)37歳と年齢的にベストテン入りは難しそう。古田が歴代4位の年長記録で2000本安打を達成したが、野村も田中幸も年長10傑入りは確定的。現在、年長記録10位は38歳1ヶ月で達成した谷沢健一(中日)だが、野村は38歳7ヶ月ですでに追い越し、田中幸は37歳4ヶ月だがまだ達成には1年以上かかりそうだからである。

 現役6位の石井琢朗(横浜)が34歳と、上位陣では比較的若いため立浪に続くベストテン入りは石井に期待したい。ここ8年間で7度の150安打。今季も含めた5年間で平均140本打てば2500本に到達可能である。立浪がベストテン入りした後は、歴代10位は落合の2371本となる。そこまでは04年終了時であと566本。平均140本で4年、115本で5年ほどかかる計算だ。今季は開幕から好スタートを切りながら、その後は急激に打率を下げるなど波のあるのが気がかりだが、来季に2000本イヤーを控えての巻き返しが期待される。

 現役7位の前田智徳(広島)は入団2年目からレギュラーであり、故障さえなければ2000本安打はもう達成してもおかしくない実力者だ。そのライフタイムを眺めると95年の22安打、01年の8安打など故障に泣いたシーズンの数字が痛々しい。それでも平均140本であと3年、平均105本でもあと4年で2000本というところまでやって来た。まだ33歳。40歳まで平均120本ペースでも2400本は超える計算である。満身創痍の体調を考慮すると、40歳までプレー可能かは微妙だがその打撃をずっと見せてほしい打者の一人である。

 それ以下の選手では高卒10年目で1000本安打を達成した大村直之(ソフトバンク)と城島健司(ソフトバンク)に期待したい。高卒選手ではイチローや二人の松井の8年目、立浪の9年目には遅れをとっているが、将来の2500安打の可能性は十分持っている。高卒8年目まで728安打の岩村明憲(ヤクルト)も10年目での1000安打は十分可能である。

 日本人メジャー選手の移籍時点までの数字を歴代最多安打の張本と比べると、イチローは9年目まで1278本対1264本、松井秀は10年目で1390本対1386本、松井稼も同様10年目で1433本対1386本となり、いずれも張本のペースを上回っていた。日本記録更新有望だった3人の離日は残念な部分もある。一方、日米通算記録で言えば、3人とも試合数の多いメジャーで過ごすのであるから当然「3085」という数字は追い越す事だろう。31歳で2000本を突破したイチローには4000本の可能性も十分にある。

参考 2000本安打までのペース比較

<通算安打ベストテン>
歴代 選手名(最終所属) 記録   現役 選手名(所属) 記録 04年実績
1 張本勲(ロッテ) 3085安打   1 立浪和義(中日) 2219安打 161安打
2 野村克也(西武) 2901安打   2 清原和博(巨人) 2005安打 21安打
3 王貞治(巨人) 2786安打   3 古田敦也(ヤクルト) 1984安打 148安打
4 門田博光(ダイエー) 2566安打   4 野村謙二郎(広島) 1945安打 97安打
5 衣笠祥雄(広島) 2543安打   5 田中幸雄(日本ハム) 1921安打 20安打
6 福本豊(阪急) 2543安打   6 石井琢朗(横浜) 1805安打 195安打
7 長嶋茂雄(巨人) 2471安打   7 前田智徳(広島) 1586安打 127安打
8 土井正博(西武) 2452安打   8 堀幸一(ロッテ) 1565安打 116安打
9 落合博満(日本ハム) 2371安打   9 初芝清(ロッテ) 1514安打 48安打
10 川上哲治(巨人) 2351安打   10 金本知憲(阪神) 1498安打 165安打

 年間記録は94年にイチローがマークした210安打が依然として唯一の200本台として歴代1位に輝いている。この記録は130試合制で達成されたものであり、その後の135試合制や140試合制で200安打打者が誕生しないのはそれだけイチローの突出ぶりを物語るものである。もっとも、00年まで日本でプレーしたイチロー自身も再び200本に到達することは出来なかったのだが。

 セ・リーグ記録は99年にローズ(横浜)が藤村富美男(阪神)の記録を49年ぶりに更新。その後、清水隆行(巨人)が02年に191本まで迫ったが一歩及ばず。04年の嶋重宣(広島)も記録更新が期待されたが、終盤のペースダウンで3本及ばなかった。
 現役ベストテンを見ると小笠原、清水、谷が2度ずつ顔を出している。不動の3番打者である小笠原・谷と比較して今季の清水は不遇を囲っていたがここへ来てスタメン定着。今季の記録挑戦は困難だが来季以降の再挑戦に期待したい。

 今季は03年172本、04年171本と実績を積んだ赤星憲広(阪神)が好スタートを切った。現役で2年連続170安打を達成しているのは他に前述の小笠原、谷と鈴木尚典(横浜)がいるだけ。不動の1番打者である赤星は打席数も多く、今季終盤には安打記録への挑戦が話題になりそう。5月6日現在31試合で両リーグトップの50安打。146試合では235安打となるハイペースだ。左打者で俊足、内野安打も多く楽しみな存在である。

 パ・リーグではカブレラ(ソフトバンク)が44安打でトップだが、35試合を消化しておりペース換算では170安打にしかならない。セ・リーグより10試合少ない136試合制というのも影響している。セのそのほかの選手では30試合で43安打のアレックス(中日)は209安打ペースであり、27試合(チームは28試合)で40安打の金城龍彦(横浜)は208安打ペース、28試合で38安打の前田智徳(広島)も198安打ペースと今後が楽しみである。

参考 年度別リーダーズ(安打)

<年間安打ベストテン>
歴代 選手名(当時の所属) 記録 年度   現役 選手名(当時の所属) 記録 年度
1 イチロー(オリックス) 210安打 1994   1 小笠原道大(日本ハム) 195安打 2001
2 小笠原道大(日本ハム) 195安打 2001   2 清水隆行(巨人) 191安打 2002
3 イチロー(オリックス) 193安打 1996   3 谷佳知(オリックス) 189安打 2003
3 松井稼頭央(西武) 193安打 2002   3 A・ラミレス(ヤクルト) 189安打 2003
5 R・ローズ(横浜) 192安打 1999   3 嶋重宣(広島) 189安打 2004
6 藤村富美男(阪神) 191安打 1950   6 福留孝介(中日) 186安打 2002
6 清水隆行(巨人) 191安打 2002   7 小笠原道大(日本ハム) 182安打 2000
8 大沢清(大洋) 189安打 1950   7 城島健司(ダイエー) 182安打 2003
8 谷佳知(オリックス) 189安打 2003   9 T・ローズ(近鉄) 180安打 2001
8 A・ラミレス(ヤクルト) 189安打 2003   10 鈴木尚典(横浜) 178安打 1999
8 嶋重宣(広島) 189安打 2004   10 谷佳知(オリックス) 178安打 2001
          10 清水隆行(巨人) 178安打 2004

ランキングの記録は2004年まで

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