セルギャラリー 21

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1984年 劇場公開作品

どうしてこんなに降るのかさっぱりわからない
どうして急に誰もいなくなったのかさっぱりわからない


春の長雨の中に捨てられていたチビ猫


ポリバケツの蓋を開けようと歩みよるが


だめだ・・・力が出ない


そこに通りかかる女学生を見上げる
ニャァ(なんかくれえ)


「うち、猫飼えないのよね」


「ここにいれば、きっと誰かに拾われるわよ」

そのまま雨の中に倒れ込むチビ猫



チビ猫を拾ったのは浪人生の諏訪野時夫だった
「ぼくは時夫、諏訪野 時夫」
「ス・ワ・ノ・ト・キ・オ。あたし元気になったら、あんたにネズミ取ってあげる
そいでもってあたしが人間になったら、一番始めに`ありがとう`っていう!」


時夫のお母さんは猫アレルギー
ひと騒動起こしたチビ猫は前のお母さんを捜しにでかけ
帰り道で時夫と出会う
「なんで、こんな所に・・・ここまで歩けたってことか
よ〜し!チビ猫走れるか?ここまで走ってみな」

一目散に走っていくチビ猫
時夫にしがみつく
「あんた優しいわ」


時夫のあとをついてきた猫マニア=詩人・瑠璃動性が時夫に訊ねる
「実は、私が1年程前から恋こがれている猫がいるんです。銀毛で緑色の野生猫が」
「僕にはこの猫だけですよ」


時夫の予備校に一緒に行くことになったチビ猫
「すごい!人ばっかし。猫は全然いないわ」


時夫が向かった先は予備校ではなく公園だった
池のほとりで水面に映る自分の姿を見るチビ猫


お昼も終わってお腹いっぱい
大きなアクビをして夢の中へ


ミルクカップに入っているチビ猫
ゆっくり流れる雲はパンや魚の缶詰になりご機嫌!


そこへ飛んできた時計の文字盤がミルクカップを下に落とす
「夢だったのか」


時夫の心の中には「みつあみ」がいる
遊んでくれない時夫
「だけど、もしあの女の人が時夫を取っちゃうとしても
先にあたしが人間になって時夫を取っちゃうんだ」


「人間になれ・人間になれ・今すぐ人間になれ!」
「猫は人間になれないよ」
ラフィエルは猫マニアが捜していた美しい猫
ラフィエルはチビ猫に「綿の国」の話をする


「架空の真綿の原のある国、真っ白で一面の綿の原
そこには目もさめるような美しいお姫様がいる
綿の国のお姫様はホワイトフィールドというんだが
おれはあんたを初めて見た時、
猫の直感でこれがおれのホワイトフィールドだって思った
あんたは成長したら誰も敵わぬ美しい猫になる」
チビ猫を旅に誘うラフィエル
「猫の直感って・・・あたし信じてないんだっ!」
「人間になれないなんて!猫のままで死ぬなんて!」
人間と同じ事をして人間になると心に誓うチビ猫


トイレ・食事と人間の真似をしても上手くいかない
「時夫がバカッってあたしの頭をぶったら、あたしの頭が返事した。バカだよって・・・」

みつあみと時夫の仲を取り持ったチビ猫は家を出ていく事にした
初めて時夫と会ったときにミルクをくれたスポイトを持って
「ラフィエルと旅に出ます」

ラフィエルは姿を現さなかった
ルンペン猫に魚の奪い方を教わりながら、なおもラフィエルを捜す

「あたしはペルシャを捜してみる事にした
いつかお父さんが言ってた太陽と砂の国、ペルシャ
ラフィエルはペルシャの猫だって言ってたし
そこへ行けば会えるんじゃないかと思ったから・・・」

鈴木ブチ猫と出会い共にペルシャを捜すがそれはみつからなかった
お腹がすいたチビ猫の為にブチ猫は鳥を捕ってくれる
「わかった、わかったわ食べ物って初めから死んでいたわけじゃない
さつま揚げも竹輪もみりん干しもサンドイッチも、みんな、みんな生きてたのよね」

「その晩、初めて猫と眠った、猫の心音を聞き人間の心音を思うと
その差の分だけなぜだかとても悲しかった」


次の日の朝、ブチ猫と別れる


「じゃあ〜ね」
「3番目の次の恋人は鈴木ブチ猫くんにしよう」


雨が降ってきた
「あたしにも猫の感はあった」
時夫の家の近くまで戻りながらも別の場所へ行こうとする
その時、竹藪の中から朽ちかけかけた老猫の声がしてくる
「魂を返す」


「起きないで!そのまま消えて〜っ!!」
「ラフィエル〜!!」

そこにやって来たのは猫アレルギーの時夫の母だった
チビ猫を抱きしめる時夫の母
チビ猫、時夫の母、そして迎えにきた時夫と父をラフィエルが見守っていた


お風呂に入れてもらい綺麗になったチビ猫はそのまま夢の国へ
そこにはラフィエルの姿もある
「あたし、捜してたのに」
「あんたが一人でやってけるように姿を消したのさ、立派な旅だったよ」

思いはうつりかわり うつりかわり かげろうのよう
ひとつの事を考えようとしても もう次の考えにうっつてしまいます
外の景色が一日一日とうつりかわってゆくからです

おばけのような桜がおわったと思うと遅咲きの八重桜
すみれや
れんぎょう
花ずおう
 黄色い山吹
 雪柳

なんとすごい なんとすごい 季節でしょう

あぁ眠い
ひと眠りして起きたら
あたしはホワイトフィールドに
一歩近づいているのですす


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ここでも書きましたが「綿の国星」は最初にアニメを見ました。
ですので、あとで漫画を読んで
このアニメ「綿の国星」が原作のいくつかの話
「綿の国星」「シルク・ムーン プチ・ロード」「カーニバルナイト」
で構成されている事がわかりました。

アニメの方もパートが3つに別れ
Aパート:時夫との出会いからラフィエルに出会うまで
B:家を出てルンペン猫に会うまで
C:ブチ猫に出会い家に戻るまで
と、なっています。

元々、難解な話であるこの作品をアニメにするという事は
かなり困難であったと思います。
それは原作のファンにも原作を知らない人にも
見て満足してもらわなければならないからです。

以前、原作ファンの知りあいに聞いた所
「絵がベタッとしていて透明感がない・チビ猫の声のイメージが違う」と言っておりました。

私はアニメが先でしたので、その点は気にならなかったのですが
見ていてA・B・Cのパートの演出と作画レベルの違いはかなり感じました。
作画の方もアップはかなり直されているようですが
Aパートで力尽きた感があります。
作画監督の青嶋 克巳さんも上手な方なので
もう少し制作期間がとれればと、それが残念でなりません。

劇場公開の前にはパイロットフィルムが作られています。
(「人間になれ・人間になれ・今すぐ人間になれ!」の横向きのチビ猫はパイロットのセルです。
髪の色が本編と違いますが、この色だとラフィエルとかぶってしまうため変更されたようです)

当時の資料を見ると
1980
企画

1983
 チビ猫ファンクラブ結成
8/16 ファンクラブ会員が虫プロへスタジオ見学

このスチールセルはファンクラブ会員がスタジオ見学をした際に配布されたもの

8/27−28 斑尾高原チビ猫ツアー
9/5 ホテルニューオータニでの制作記者会見
(クレイダーマンも来日)
10/6 大島 弓子先生が虫プロ見学
12/11 アニメディア主催の試写会
パイロットフィルム・台詞・効果音なしBGMには既成の音楽を使用
デモフィルム・台詞・効果音なしBGMにクレイダーマンの曲を使用
の上映
12/11−12/14 アフレコ
12/14 池袋サンシャインプラネタリウム 星空コンサート
(パイロットの上映、声優さんのアフレコの再現など)
12/22 九段会館 サントリートロピカルクリスマス
綿の国星OLのための試写会
(本編上映)
12/26 マスコミ試写会

1984
1/16 名古屋 ファンの集い
1/29 アニメディア 試写会
2/5 大阪 試写会とファンの集い
2/11 劇場公開

と、長い製作期間をファンに支えられて公開に至ったあとが見られます。

試写会などで配布されたパンフレット

良い時代だったと言ってしまえばそれまでですが
これだけのファン参加のイベントや手間を現在の劇場公開作品に
求めるのは難しい事と思います。

レコードやVHDは全てビクターから発売され(LDも少量生産されたそうです)
この作品も見られる機会が減りました。
DVD化を期待しています。

2001年2月11日作成
17年前の今日・奇しくも公開

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