『そして子供に戻る…』

 こうして1997年11月、7年間を共にしてきたシルビアを手放す決心をしました。

 「サーキットも面白くなくなってきたし、そろそろ落ち着いた車に乗るのもいいかもしれない。」

  そう思い始めていました。
買い替えの候補に挙げていたのは、チェイサーのツアラーVと中古のポルシェ928。ステップアップはしたいと思ってましたし、ポルシェ928は子供のときから憧れていた車のひとつだったので、中古車価格も下がってきたことだし、いい機会かもしれないと思っていました。 

 でも、「子供のころからの憧れ…。」そう、ご多分に漏れず僕も子供の頃には『第一次スーパーカーブーム』を経験し、『サーキットの狼』に夢中になり、スーパーカー消しゴムを集めていました。その後のバブル期の「第二次スーパーカーブーム」でとても買えるわけないと諦めていましたが、子供の頃の一番の夢は

 「真っ赤なリトラクタブルヘッドライトのスーパーカーに乗ってサーキットを走る」

  というものでした。

「そうか!結構腕も磨けたし、1999年の人類滅亡の予言も近い(^_^;;。今、夢を叶えなかったら、もう機会は無いかもしれない。もしかしたらいけるかも…」

  そう思い始めるとカーセンサーの輸入車ページを必死でめくっていました。

 

 最初に探したのは、やはり中古フェラーリ。今、328、348あたりでどの位の相場なんだろう?と思ったのですが、やはり高価い!!700〜1000万円がほとんどで、とても手が出ません。それに清水草一さん著の『このフェラーリください!』を読むと、「中古フェラーリは動けばみっけもん」とか「フェラーリは実は遅い」とか衝撃的な文章が列挙されてるし、「走れる期間より修理にはいってる期間のほうが長い」なんて話まで聞いてしまうと、とても現実的に考えることはできません。

 では、中古ポルシェ911は……実は、ポルシェって良く知らないんです。928は大好きなのでわかりますが、特に911シリーズは色々ありすぎてどれがどれだか分りません。それに、ポルシェってマニアックな世界をもってるというイメージが強くて、近づき難くて検討から除外。

 そうやって、ほかにも実際に検討してみると、中古輸入スポーツカーで自分の好みで予算範囲内っていうのは、結局ポルシェ928ぐらいになってしまいます。

 「928じゃあサーキットは走れないなあ。」

  となると、やっぱり対抗馬は国産スポーティーカーになってしまいます。シルビアより上でリア駆動というと、RX−7、スープラ、四駆ですがリア駆動っぽいGTR、インプレッサ(デフコン付き)といったところでしょうか。しかし、新車で買うとなるとインプレッサで3?0万、GTRだと4?0万が必要です。中古でいい出物がないかな〜とカーセンサーをパラパラめくっていると、あるページが目に飛び込んできました。

「なんだ?この店はNSXばっかりじゃないか!!……450万……500万…あのNSXが、今こんな値段で売ってるのか!?」

 “あの”とはもちろんNSX発表当時、バブル絶頂期の投機対象になっていた頃のことです。新車価格800万!!投機対象とされてプレミアがついて1千万以上のプライスを付けていた頃のイメージをそのまま持ち続けていたため「高価くて絶対買えない車」と思いつづけていました。

「400万円台で買えるんだったらGTRやスープラの新車と同じくらいじゃないか。F1で常勝を誇っていた頃のホンダが、本気で作ったスーパースポーツカーが手の届きそうなところにあるんだ…」

もう夢中で他の店の記事や相場表をめくっていました。

 『ベストモータリング』のバトルなどを見ても、国産勢の中でNSXは別格です。もちろん飛びぬけて速いし、他の280PSターボ勢が熱ダレやブレーキのフェードで脱落していく中、まったく問題無くファーステストラップを出しつづけていきます。ライバルといえばフェラーリF355…最新型フェラーリです!!。(もちろん『べスモ』に出てくるのは「TypeR」や「TypeS」で、買えそうなのは普通の「クーペ」ですが…)

 「これだ!!これしかない!」

  もう他の車は頭の中から完璧に消えていました。新車発表当時から憧れつづけて、

 「絶対買えるわけないけど、いつかはNSXに乗りたい、(買うんじゃなくって試乗だけでもいいから)と思いつづけていた車が自分の愛車にできる!!」

  そう思うともう舞い上がり、本屋に直行してNSXの出ている雑誌を片っ端から読み漁っていました。

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