水色の長い髪

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私は、その足でリュミエール様の執務室に向かった。半ば毎日通う事が日課になっていた。
「・・・!」
でも、リュミエール様の執務室の前まで来た時、ハタ、と私は足を止めた。
誰かが来ている・・・
直感的にそう、思った。けして、声が聞こえたとか、そんな事は無かったのだが・・・胸騒ぎ。
くるり、と踵を返し私は宮殿の外に出た。
「とりあえず・・・」
私はまた、公園に来ていた。
「やあ!!アンジェリーク!君も公園に来たのかい?」
随分遠くから、元気のいい声が聞こえてきた。ランディー様がにこにこと笑ってこちらに手を振っていた。
「あ、ランディー様っ、こんにちは!」
そう言いながら、私はパタパタとランディー様の元へ走っていった。
思えば、私はここに来た当初から、リュミエール様のことばかりを気にしていて、ろくに他の方とお話をしていない事に今更気が付いた。
「話をするという事は、その人の考えを知る上でも、より親しくなるためにも、大切なことだと思いますよ」
リュミエール様から言われた事が、頭の中をぐるぐると回り出す。
リュミエール様からせっかく戴いたアドバイスなんだから・・・
走りながらそう考えているうちに、ランディー様の目の前までやってきた。
「ははは、君はいつも元気だね!明るい笑顔を絶やさないって事は大切なことだからね!」
そういいながら、ランディー様は爽やかに笑う。
「ねえ、アンジェリーク。育成はどう?調子いいかい?たまには俺の所へも依頼に来てくれよな。それとも・・・」
そこまで言うと、ランディー様は心配げに私の顔を覗きこんだ。
「勇気は、新しい大陸に、必要とされていないのかな?」
「!! そんなこと、ありません !!」
私はおお慌てで頭を振った。そんなこと、そんなこと・・・
「・・・じゃあ、君が来てくれる事、俺、待ってるよ。とりあえず、今日はここでちょっと遊んでかないか?」
そう言うと、ランディー様は手に持っていたフリスビーを悪戯っぽくまわした。
「たまに、マルセルとこれで遊ぶんだよ。でも、マルセル達とは別の事をするほうが多いから。ゼフェルがさ、結構注文が多くて。」
そう言いながら、私と適当な距離を取ると、ランディー様は威勢良く手を振った
「いくよ!!」
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陽もとっぷりと暮れてきた公園のベンチで、ランディー様と私は、肩で大きく呼吸をしながら背もたれにもたれていた。
「楽しかったね!アンジェリーク」
私の横には心底楽しそうにしているランディー様。まるでお兄さんみたい・・・
「本当ですね。とっても楽しかったです」
そう、ここに来てからのあらゆる苦悩が、瞬間消え失せていた。まるでスモルニーでの日々のように・・・
「また、こうして遊ぼうよ!俺、正直言ってロザリアは苦手なんだよ。何て言うかな、その、貴族って事にとらわれ過ぎてて親しめないっていうかさ。
だから、もちろん守護聖として、やるべきことはやるつもりだけど、せっかくこうして君と出会えたんだし、また君とは一緒に過ごしたいんだ。」
ビックリした。今の今まで、自分がこの様なところに居ることすら場違いな気がして、不安で一杯だったのに。
ランディー様は、女王候補として恥ずかしくない学習を積んできたロザリアの事を’苦手’だと言って、私と’過ごそう’と言ってくれている。
私がずぶの平民である事は、そんなに恥ずかしい事ではないの?
「・・・おかしいかな?アンジェリーク。」
黙っている私に、ランディー様は不思議な顔をしている。
「いえ、とっても嬉しいです。ただ、ビックリしちゃって。そんな風に思って頂けるなんて。」
「ははは、アンジェリーク、もっと自信を持って!君のいいところは明るい笑顔。最近元気無かったから、俺、これでも心配してたんだ。」
照れて頭を掻いているランディ様にちょっぴり気持ちが明るくなった。
「私、みなさまにご心配かけていたのかしら。どうしよう・・・」
私がそう口走ると、ランディー様は優しい表情でこう言った。
「今度の日の曜日もまた公園で遊ばないか?今度はマルセルやゼフェルも呼ぶよ。」
「・・・!え、え、???」
とたん、私はしどろもどろになる。
「あ、あの、今度の日の曜日は、その・・・」
「・・・何か用事があるの?それなら、また次の機会にしよう。楽しみにしてるから。じゃあ、寮まで送っていくよ」
こんな時は、ランディー様のあっさりした性格がありがたい。
ランディー様は、私の横に並んで他愛の無い話などしながら部屋まで送ってくれた。
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