水色の長い髪

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「もしよろしかったら、今度の日の曜日に会ってくださいませんか?」
自分でも驚くほど突然に、そんな言葉が口をついて出ていた。
「分かりました。楽しみにしていますよ。」
思ったとおり、リュミエール様はうなずいて下さる。 私の心に安堵感が広がっていった。
「では、当日は執務室でお待ちしています。」
リュミエール様は心の底からやさしい瞳で微笑み、
満面の笑顔を隠せないでいる私に会釈をして公園を出ていった。
その、優雅な後ろ姿を見送りながら私は、今更のように震えていた。
「守護聖様に・・・デートを申し込んでしまったの?」
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自分の部屋に帰ってきても、心はふわふわと浮かんでいる様だった。
思えば、ひとめ見たその時から私はリュミエール様が気になっていた。
いわゆる「赤い糸」の伝説に、自分の運命を重ねあわせたいという感じだった。
初めて接したのは、聖地に来てすぐの事。
執務室でのお話の仕方を教えて下さったのがあの方だった。
初対面だというのに、あの優しい眼差し・・・思いやりに満ち溢れた話し方・・・トドメは心からの微笑みだった。
私を、ノックアウトしたあの微笑み・・・
飛空都市に来たあの日、ディア様が私に、リュミエール様をこう紹介してくださった。
「人の心を優しさで満たす水の力を司る方」 ・・・と。
そう、口に出して呟いてみる。「優しさ・・・」
ふ、と私の心に雲がたちこめた。
そう、私はリュミエール様の優しさが大好きだった。でも、あの方は、優しさを司る守護聖。
優しいのは、至極当たり前の事。と、いう事は・・・ロザリアにも、当然優しいはず・・・
10代の女の子が当たり前に持っている感情・・・jealousy・・・
しかし、私は慌ててそんな黒い感情を振り払った。
リュミエール様は、そんな風に私が思う事を最も悲しまれる筈。
守護聖様に片思いをしている・・・それは、果たして許される事なのだろうか?
そんな事をつらつら思いながら、ふ、と私は初めてリュミエール様に教わった事を思い出していた。
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「・・・して、おまえは私と何を話そうというのだ」
私は、早速翌日クラヴィス様の執務室に伺っていた。
飛空都市に初めてやってきた日、ディア様がリュミエール様の所に私を連れていってくれて、
この、守護聖様の執務室で出来る事の一つ、「お話の仕方」について説明をして下さるように頼んでくれた。
リュミエール様は、ここで、守護聖様に対して「自分の事をお話する」か「みなさまの事を伺う」のどちらか一つ
 を選び、話しをする事によって相互の理解を深め、よりよい人間関係を築く事が大切なんだと教えて下さった。
その事を思い出し、私はリュミエール様と一番親しくしていらっしゃるクラヴィス様の所を訪ねた。
もちろん、リュミエール様の事をもっともっと、知りたかったから・・・
「はい、リュミエール様の事を教えて下さい」
私は、顔から火が出る思いでやっとそれだけを言った。
「・・・リュミエールの事だな?」
いつもそうなのだが、何とか耳を澄ましてやっと聞き取れる位の低い声で、クラヴィス様は、お話になる。
「・・・私の事を色々と気遣ってくれているが・・・まあ、それだけだな。おまえの事は、あくまでも守護聖と女王候補として接しているようだ。・・・私が話せるのは、これだけだな。」
そう、話すや、クラヴィス様は黙ってしまったので、もう、そそくさと部屋を出るしかなかった。
「・・・?え?どういうこと?リュミエール様とクラヴィス様は、お親しいんじゃなかったのかしら?」
「それに・・・守護聖と女王候補・・・って、当たり前なのに、クラヴィス様、一体何をおっしゃいたかったんだろう?」 私の頭の中は、お陰で以前よりも一層混乱してしまった。
 
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