昼下がりのお戯れ 
「オープニングセレモニーは女王陛下のリクエストにより、『王立フィルハーモニー』によるオーケストラです。曲目は”澄み渡る清き流れの中に”」 

緞帳がゆっくりと開く。 

ステージには、チェンバロを抱えたオリヴィエの姿が見える。指揮者なリュミエール 
「なっ、何故あの者が・・・それよりリュミエールは?!」 
ジュリアスが蒼白になって舞台上をきょろきょろと見まわす。 
「・・・あそこだ。」 
隣のクラヴィスが差し示したのは、どう見ても燕尾服に身を包んだ指揮者だ。 
「なっ!」 
そう。確かにリュミエールだった。オーケストラを従えて、ドーランを塗られたほっぺも艶やかに、振り向いて深深とお辞儀をするのはまさに彼だ。 
「・・・リュミエール。素敵じゃない・・・」 
思わず溜息を洩らすディア。ヴェールの下の女王陛下の表情が読み取れないのが残念だ。 
他の守護聖達も、リュミエールの意外な姿に驚いていた。 
舞台の上からは、そんな皆の様子が丸判りで、オリヴィエはこの上なく愉快極まりない。 
リュミエールが緊張した面持ちで指揮台にあがる。 
オーケストラが構える。 
オリヴィエは口元が緩む。 

リュミエールがタクトを構えた。 
オリヴィエにとって、自分の演奏も見せ場のひとつ。リュミエールの美的大変身が好評だったので、心置きなく演奏に集中出来るってものだ。 

勢い良くタクトが振られた。 

ちゃん! 

流石、作者自ら指揮棒を振るとまるで違う。 
女王陛下はリュミエールの作る曲をこよなく愛していた。彼らしい繊細で優美な調べ。 
下界でどんな作品になっているかは知らないが、この曲もいつも彼が奏でるハープでよく聴いていた。 
「やはりオーケストラが入ると迫力があるな。」 
ぽつんと陛下がそう呟いた。 

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