「隣り合わせの平和」

 

       Divine     Arf                          
 神聖闘機 seed 

 

 

 

第四話    「日常生活」

 

 

「ヨハネ・・・・俺は正しいのかな?」

 

マナブは顔を上に向けながら呟くようにして尋ねた。

視線の先には、蒼と白のL−seed。

整った顔にある二つの瞳は、パイロットが乗っていないにも関わらず、
まるで生きているかのような雰囲気をもっている。

 

「誰もが誰かにとっては、その存在は異常に見える・・・

・・そんな答えでは・・・・・不満足か?」

同じようにして、L−seedを見ながらヨハネは言う。

 

 

マナブは少し、表情を和らげる。

 

「答えにはなっていないけど・・・・良いと思うよ。」

その瞳は、L−seedと同じように澄んでいる。

 

「言うようになったのぅ。ワッハッハッハッハッハ!!」
L−seedから目を離さずにして、笑い始めた。

「ハハハハ」
マナブもそれにつられて少し笑った。

その時、廊下の向こうから、誰かが走ってくる音がする。

 

 

「マナブ!!」

その声にマナブは肩をすくめると、ゆっくり振り返った。

 

そこには、全力で走ったとしか思えないほど、息を切らせている少女。

前屈みになって、手で胸を押さえている。
背中が上下する度に、大きな翼のような髪がぴょこぴょこ踊っている。

 

 

「フィーア・・・おまえ何してるんだ?」
息も絶え絶えの妹に、あっさりめの言葉をかける。

彼にとっては日常茶飯事の事なのだろう、一片の動揺も、同情も無い。

「・・うん?・・・・・マナブに・・・・・・会いに・・・・来たんだよ・・・・・・・・悪い?」
まだ苦しいのか、無理に笑顔を作りながら答えるフィーア。

上げられた顔の額に付けられた小さな逆三角形の物体が汗に濡れている。
それは翡翠のような綺麗な翠色。

 

 

「悪くはないけど・・・・大丈夫か?本当に、そんなに走って何か良いことでもあるのか?
まったく・・・・仕方ない奴だな。」
マナブは訳がわからんといった表情で、フィーアの背中をさすってやる。

 

「!」

マナブの手がフィーアの背中に触れた瞬間、体をビクッと震えさせる。

 

「マナブ!大丈夫!もう大丈夫だよ!!」
慌ててフィーアは体を離そうとする。
しかし、ほとんどマナブからは離れない。

「フィーア?おまえ、まだ顔赤いぞ。そんなに全力で走ったのか?」
マナブはそう言うと、背中をさすり続けた。

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

「・・うん、たぶん・・・・そう・・・・」
フィーアは、顔を下に向けながら、そうマナブに聞こえるぎりぎりの範囲で返事をした。

マナブはそんなフィーアの変化にも気づかずにただ、背中をさすり続けていた。

ヨハネは、そんな様子をただニヤニヤしながら見ていた。

 

 

「マナブ様。」
ふと、マナブが呼ばれた方に目を向ける。

 

マナブはその人物を認めると動かしていた手を止め、名を呼んだ。

「サライ。」

 

 

「体の調子は如何ですか?」

「悪くないよ。」

「そうですか・・・それはよろしいですね。」

「心配性だな。戦いの怪我なら大丈夫だ。なにせ・・

マナブはちらっとヨハネを見ると、

 

ヨハネ自慢のL−seedがあるからな!」

L−seedを指して言った。

 

 

「よく言うのぉ。」

 

 

「フフフ、そうでしたね。
でも、怪我は体だけに現れる物ではありませんよ。」
サライはマナブの言葉に微笑みを浮かべながらゆっくり言った。

「何?それって??」
息を整えたフィーアが不思議そうに尋ねる。

「心の傷と言う物よ。」

「トラウマとか?」

「よく知っているな、フィーア。」
予想もしていなかったマナブは、フィーアの言葉に驚いていた。

「そう?結構有名じゃない?」
にっこり笑いながら、フィーアはさらりと言った。

「・・・・・そう、そうかぁ?って、言うより、おまえが知っていることが俺には不思議だがな・・・・」

「マナブ、それどういう意味?」
じと目になって言うフィーアに、マナブは言葉を失い、ようやく言えたのが、

「・・・・・・・・・・・別に・・・・・・・・・・」

だけだった。

 

そんな二人のやりとりを、ヨハネとサライは笑っている。

「良いかしら?マナブ様、フィーア。」

「あ、ああ、ごめん。」

「心の傷は、体の傷と違って非常に治りにくいのです。
結局は他人には見えないと言うことがその原因ですが・・・・・

戦闘による生死の危険に長時間さらされたり、一瞬でも強烈な死の危険を受けた場合、
その後、日常生活でもその時の、恐怖や痛みがフィードバックしてきたりするのです。

だから、マナブ様・・・何かあったら必ず教えてくださいね。」

サライは笑顔でマナブに言った。
その笑顔はとても優しく、綺麗であったために、マナブは訳もなく赤面してしまう。

 

サライは顔を若干、引き締めると、マナブと目を合わせて言う。
「それと薬はきちんと飲んでください。
あの薬はマナブ様にとって、命に関わるものですから。」

マナブの方は、もう耳にタコができているといった風で、ため息混じりに言った。
「わかっているって、サライ。
そうじゃなくても、フィーアにいつもいつも無理矢理にでも飲まされているんだから。」

「フフフフフフ、そうですか・・・・フィーア、偉いわね。」

「そうでしょう?マナブって、絶対、フィーアいないと薬飲まないんだもの。」
自己主張の強い胸を張って言うフィーア、やけに得意満面な笑み。

「飲むって!」

「良いの、良いの。フィーアがちゃんと側にいるから、マナブは安心して、ね?」
フィーアは顔いっぱいの笑顔で、マナブに言う。

「はぁ・・・おまえ、俺の何なのよ?」
今度は本当にため息が混じりながら、マナブはフィーアに向かって投げやりに尋ねた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いもうと・・・」
フィーアは、少し俯きながらぼそりと言った。

「だろう?そんなんで全く、俺に彼女ができたらどうすんだ。」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

少しの沈黙が、辺りに流れる。

 

 

 

 

「マナブ、そろそろ時間じゃ無いかの?」
ヨハネは時計を指して促した。

「!あっと、まずいな。サライ、後何時だっけ?」
弾かれたようにして、マナブが動き出す。

それとともに、弛緩した雰囲気が辺りを支配する。

 

「あと三十分です。」
マナブの問いに、サライは冷静に答える。

それがより一層、マナブを焦らせたのか?
「まずい!薬も飲んでない!!フィーア、行くぞ!!」
慌てて、駆け出した。

「え?!」
フィーアは俯いていた顔を上げる、驚いたような顔でマナブを見入ってしまう。

そんなフィーアにマナブは急ぎながら促す。
「早く行くぞ、一日に二度も遅刻したくない!!」

「うん!!」

笑顔でフィーアは答えると、
既に走り出しているマナブの後を追った。

 

走り去る二人。

フィーアは楽しそうに、廊下の先に消えていった。

マナブの「何言ってんだ!?」と言う声が、見えなくなった廊下の先から聞こえてくる。

二人は、その声を聞くと顔を合わせた、そして笑い始める。

 

 

ひとしきりの笑いの後、

ヨハネはL−seedを見上げて言った。

「心の傷のぉ・・・確かにこれに乗るなら、そっちの方が問題かもしれん。」

 

 

「でも・・・・・・

 

 

 

私たちは、マナブ様にそれを望んでいます。」

サライは、顔を鉄仮面のように無表情にして言う。

 

 

「おまえは強い女じゃ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ヨハネが言う言葉にも、サライは顔を動かさなかった。

 

ただ、同じようにして、L−seedを見上げただけだった。

 

**********

 

「システム、問題ありません。」

「リンクシステム作動、CHANCE・LINK%突破しました。」

二人の男女がパソコンに向かい、何かを言っている。
それは後ろに立つ者への、報告のように見える。

パソコンには、流れるように数値と画像が入ってくる。

その画像は間違いなく、あのL−seed。

 

二人の座っている、前方には巨大なスクリーンが二枚ある。

右側には、あのヨハネやマナブがいたと思われる、L−seedの格納庫が写っている。

そして、

左側にはマナブが写っている。

その顔は、緊張しているのか強ばってはいたが、その瞳は静かな光をたたえていた。

 

「α−LINK−Sに移行しました、リンクパーセンテージ上昇中です。」

「αよりβ−LINK−Sに移行しました。」

オペレーター達は、流れるようにして発進の準備を整えていく。
その作業にはよどみは無い。

マナブはモニターから、その様子を見守っている。

ふと外の様子を外部カメラで見る。

 

フィーアの唇が微かに動く・・・・・

(・・・フィーア・・・・・・・)

 

 

**********

 

 

「・・・・気を付けてね・・・・」

 

 

**********

 

オペレーター達のパソコンが全てが正常に動いていることを示す。

 

「β−LINK−Sで安定しました。」

「マニュアル補正中・・・・・・完了。」

「L−seed、パイロット完全にリンクしました。」

「レヴァンティーン、デッド・オア・アライヴ装備完了。」

二人のオペレーターが発進の準備が完了したことを伝えた。

 

男性のオペレーターが、モニターから目を離さずに背後に向かって報告する。
「Dr.サライ。L−seed発進準備完了しました。」

 

 

「禍印は安定している?」

「はい、微弱なエネルギー反応が一定して続いています。」

背後の声に、女はモニターにL−seedの右手を出す。

その右甲部は、堅い長方形の板で幾重にも打ち付けられていた。
まるで中から出てくる何かを、閉じこめるために慌てて釘で打ったよう。

何なのだろう?

淡い光は、そのうち付けられた隙間から漏れているものだった。

 

ある種洗練された美しさを誇るL−seedにおいて、
その場所だけは、何故か異質な感じがしていた。

 

 

 

まるで、秩序の相対を成すもの。

そんな感じがした。

 

「そう・・・・・・ありがとう。」

静かにサライは答える。
白衣を翻し、きちんと横に向くと、横に立つ者に話しかける。

 

「Prof.ヨハネ、L−seedの整備は完全ですか?」

「なんじゃ、ワシを信用しとらんのか?
大丈夫、だいじょーぶじゃ!!
問題ない!まぁったく問題ないぞ!!!
マナブ!行って来い!!ハッハッハッハッハッハ!!!」

サライはヨハネの笑い声にも静かに頷き、モニターの向こうのマナブに問いかける。

「そうですか・・・・マナブ様準備はよろしいですか?」

 

「ああ、大丈夫だ。」

 

マナブの返事を確認すると、サライは後ろを向いた。

そして、上を見上げる。

 

一段高くなった所に男が立っている。
前髪で瞳は隠され、その心を伺い知ることは出来ない。

 

「よろしいでしょうか?御当主様。」
サライは静かに尋ねた。

「・・・・・・・目標は?」
「目標は、中東における内戦地の武器を破壊します。」

「そうか・・・・・・Dr.サライ。」
「はい。」

前髪の中から、黒い瞳が見える。
鋭い瞳の奥に不思議な色が浮かんでいた。

あの最初の時と同じ瞳、様々な感情が混じる瞳。

「成功を任せる。」
「はい。」

男はそう言うと、奥に消えていった。
彼にとって、作戦の失敗は考えられないのだろう。

彼は確かに「成功を任せる。」と言った。

 

「マナブ様、発進してください。」

「ああ、わかった。」

「お気をつけて。」

「・・・・・・・・・・・・・」
マナブはそれを聞くと、一瞬、何かの嫌みなのかとも思ったが、
サライの顔には何の悪意も感じられないことに気づくと、

「ありがとう。」

そう言い、レバーを握った。

**********

 

ブワァアアアアアアアアア

背中の飛行翼が開いていく。

 

すさまじい風が起きる中、フィーアは瞬きもせずに、L−seedを見ていた。

その目は、心からの気遣いと不安にあふれていた。

 

L−seedの目が光り輝き、全身に力がみなぎっているのがわかる。

淡い光を出している右甲部。

左の甲が一瞬の光を放つ、それが全身に広がり、
青い薄い膜で覆われたような感じが見え、消えた。

 

**********

 

「左甲部、「三現魔方陣(サンゲンマホウジン)」発動を確認!」

「L−seed、以後探知不能になります。」

「Justice基地、ステルス化異常なし。」

 

**********

 

一瞬、L−seedの顔がフィーアに向いたかと思うと、飛翔した。

誰もいなくなり、L−seedが空に消えても、

フィーアは、そこにいることを止めはしなかった。

 


 

「イヤな感じだな・・・・」
警備兵は夜の寒さに、体をすくめながら、
先ほどから繰り返し妙な悪寒に襲われていた。

 

何となく嫌な晩だった。

天空では、何の邪魔もいない場所で、月が狂ったように光り輝いていた。

全ての星をかき消すほど、月は光っていた。

 

 

「ん?」
唐突に彼を影が照らす。

一瞬、驚いたが、兵士は月が雲に隠れたのだろう、別に気にもとめなかった。

 

「うう・・・寒い!」
影が彼を覆ったことによって、体温が下がってしまい震える。

 

その瞬間、彼の背筋が先ほどの比ではない悪寒が走る。

背骨を冷たい手で捕まれたかのような、吐き気を伴う悪寒。

 

そして、彼の脳裏に浮かぶ、

今日は雲一つない、良い天気であることに・・・・・・・・

 

 

「!!」

彼が目を天空に向けたとき、そこには・・・・・・

 

 

「十字架?」

彼の瞳に、空中の十字架が写っている。

 

 

しかし、それは十字の横の棒が下の方にある。

十字架を逆さにした状態。

 

 

それはまさに・・・

・・・逆十字架

 

 

横の棒よりも上の方から、二つの棒が生えてくる

それは腕

両手を拡げて、左右にゆっくりとのびていく

 

兵士は声も立てずに、それに見入っていた。
月を背にしたそれは、とてつもなく美しかった。

危険を知らせる無線もせずに、兵士は何物も見逃すまいと瞬きを止めていた。

 

あまりにすばらしい芸術品を見たときのショック、それに似ていた。

題名は「楽園を人間から護る天使」がふさわしい。

 

 

腕が最大まで伸ばされ止まる

 

一瞬の静寂

 

 

 

 

 

バワサァァァァァァァ

そんな音がするかのように

それは翼を羽ばたかせた

 

 

実際は、シオンで出来た羽の一枚一枚がふれ合った音

それは不思議な音色を奏でた

 

 

 

 

スーッと右手が下の方の棒を掴む

何の摩擦も感じさせずそれを抜いた

 

 

 

 

それは月の光を反射する

その印象は・・・・・・・・

 

(けん)ではなく

(つるぎ)だった。

 

 

 

「おい!定期連絡はどうした?何かあったのか!!」

彼の持つ無線から、苛立った声が聞こえる。

どうやら随分前から呼んでいたらしい。

 

その時、嘘のようだが、

その時初めて、

兵士は理解した。

 

 

 

これが天使ではないことに・・・・・・

 

 

しかも、

 

 

敵であることに。

 

 

 

 

「敵です!!上空に謎のアル・・・」

 

 



 

「えっと・・・エメラルドさん。」

「はい、何ですか?」

 

 

ありふれた喫茶店。

そこに二人はいた。

二つの紅茶がまだ少し湯気を出している。

 

 

「今度、これ、見に行かない?」

そう言い、マナブはエメラルドに一枚の紙を渡した。

その顔は、少しはにかんでいる。

 

(目がとても優しい・・・)

 

そんな風に思いながら、エメラルドはその紙を手に取った。

 

紙には、「EPM軍慰問部隊「月読」特別公演」と書かれてあった。
EPMと言う言葉に少し顔を曇らせたエメラルドを見て、
マナブは察したのだろう、慌てたようにフォローをし始めた。

 

「ああ・・EPMと言っても、彼らは兵士達を励ますために、
各地で歌を披露しているらしいんだ。
それ専門の部隊で、何でも女の子ばかりだそうだよ。
とても歌が上手いって評判なんだって、時々こうやって一般の人にも公開しているらしいよ。」

「歌・・ですか?」

「うん、何でも一人一人十分に、歌手になれそうなくらい上手いらしいよ。」

「それは聞いてみたいですね。」

「そう?!じゃあさ、一緒に行こうか?」

「そうですね・・・」

「何か用事ありそう?」

「・・・・いいえ、大丈夫です、行きましょう!それに・・・」

そう言いながら、マナブにチラシの下の段を示す。

 

 

 

「この収益金はテロ活動によって傷ついた人々に送られます。」

そう書いてあった。

 

 

 

 

「人のためにもなりますしね。」

ニコッと笑いながら、エメラルドはチラシからマナブに目をやった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

マナブはその顔を若干強ばらせて、その一文を凝視していた。

 

 

 

「・・・・カスガさん?」

「!」

 

エメラルドの怪訝そうな声に、我に返ったマナブは少し声のトーンを落としたものの、
先ほどとは変わらない、笑顔で答えた。

「あ、ああ・・・そうだね。だから、一緒に行こう。」

 

「はい、約束ですね!」

エメラルドは、マナブの変化を気づきながらも、

デートという事実から来る喜びで、心は満たされてしまっていた。
そして丁寧だが、はっきりと笑顔で返事をした。

 

 

 

マナブもその笑顔を見て、心から微笑む。

微笑むことが出来た。

 

 

 

 

二人はとても幸せです。

 


 

 

「・・地域において、戦闘があった模様です。

最近発生した、中国大陸におけるArf無差別攻撃と同じような状況と伝えられております。

救助信号を探知した、EPM所属特別防衛機関「φ」が駆けつけましたが、

それらも全滅した模様です。

詳しいことはわかりませんが、残った無線からは敵は一機であったことが確認されております。

また、兵士の最後の無線が、「天使が来る!」と言う物であったことから、

前回の無差別テロのArfと同じと考えられております。

そして・・・・・・・・・・」

 

ブッ

 

「これはどういうことだ!!」

口髭、そして顎髭が見事な男がテレビを消した瞬間に、怒りも露わに怒鳴り散らした。

顔の印象は、まさに歳を経た軍人、生粋の軍人を思わせる厳つい顔。

白髪が大半をしめる髪が、その歳を感じさせる。
彼の服装は、幾つもの勲章が飾られた豪華な軍服。

そして、彼はその勲章のついた胸を反らしながら、目の前にいる男に食ってかかっていた。

「もう一度聞くぞ、これはどういうことだ!!」

 

 

 

 

「ルシターン!!!!」

 

そこに控えていたのは、あのルシターン。

「φ」の総帥、ルシターン=シャト。

 

「おそらくは月衛星都市のテロリストかと思われます。」

「そんなことを聞いておるのではない!!!私が聞きたいのは・・・・・・・・・

 

・・・・・・何故!!「φ」が破れる!!!」

顔を赤くして、烈火のごとく怒り続ける男。
彼が話す度に、勲章がチャラチャラ音がする。

 

 

「あのArfの力、そしてパイロットの力が計り知れない物だったからです。」

「そんな答えは聞きたくないわ!!

おまえ達「φ」は、私のEPMの中でも、最強と呼ばれてもおかしくない程の力を持っている!!

それが何故、たった、たった一機のArfに全滅するのだ!!!

しかも、二度も!!二度もだぞ!!!!」

息を荒げて、とにかく声を張り上げて怒る。
部屋中に、響きわたる怒声。
ルシターンは、ただほとんど中傷ともとれるその叱責を、ただ聞いていた。

 

「これでは、おちおち、バベルの建造も進めることが出来ぬではないか!!」

 

数分後、幾分落ち着いた感のある男に対して、
始めてルシターンは口を開いた。

 

金色の髪の間で揺れる、蒼い瞳が鋭く光る。
「・・・・ご安心を、フィック様。既にこのArfの件に関しては、部下を1人任務に就かせております。」

「1人?!そんなことであの化け物みたいなArfが倒せるのか?!!貴様!!」

ルシターンの言葉に、再び怒りが再燃しようとしたとき、

 

彼は、

EPM軍事最高顧問ゴート=フィックは見た。

 

ルシターンの瞳を、凄まじい鋭さを持つ光を・・・・

 

 

「・・・・・その者の名は?」
先ほどの怒りを忘れたように、静かにゴートは尋ねた。

 

 

ルシターンは、親友であるその男の名を呼んだ。

 

 

 

 

「レルネ=ルインズ。」

 

NEXT STORY


次回予告

マナブ、L−seedに乗る者。

その戦いは、凄まじく、素晴らしく、悲しく。


後書き

これから、隔週で行きたいな・・・・・なんて希望を持っています。

ご意見、ご感想は掲示板か、

こちらまで。l-seed@mti.biglobe.ne.jp

TOP NEXT Back Index