算額の意義
千葉市中央区都町の延命寺に算額(さんがく)があります。 千葉市に残存しているたった1枚の算額です。 現在は小さな寺ですが、 江戸時代〜明治時代は、算額を見ながら子供達が勉強する志があふれる場所でした。 そして、この地は「算額」の大切さを知っている人が住む土地でした。 クリックで 地図 |
延命寺沿革
円は縄文人が一番好きだった図形です。縄文人は、四角い家を作るより、丸い家(円錐)が好きでした。縄文人はパイ(π:円周率)という数字に悩まされたでしょうか(註1)。多分縄文人はヒモの片方をクイに結び、他方に短い棒を結んで、ぐるっと円を描いて家を作ったと思います。縄文人は、夥しい数の土器を製造しました。粘土のヒモを輪状(円)にして積み重ねていき、縄文土器を作成しました。細長いヒモを丸くすると、どれくらいの大きさの円になるか、縄文人は考えたに違いないと、小輩は思っています。
昔から、世界中の人が円周率のことを考えました。エジプトの人は、だいたい3だとか、だいたい3.1だとか言っていたようです。ギリシア時代にアルキメデスは円の内側に接する(内接)正多角形と、円の外側に接する(外接)正多角形の辺の長さを、アルキメデスの定理を使って計算して、円周率は内接多角形の辺の長さと外接多角形の辺の長さの間にあるとして、3.14という数字を見つけました。このアルキメデスのやり方で、ヨーロッパの数学者は円周率を計算し、長いケタ数の円周率を出しました。
これに近いやり方ですが、ちょっと違うやり方を考えて、世界一長いケタ数の円周率を計算した日本人が江戸時代にいました。「関孝和」です。「鎖国でも蘭学があったから、そのマネをしたんじゃないの」と簡単に言う人がいるかもしれません(註2)が、違います。関孝和は、内接する正方形の辺の数を2倍、4倍・・・・と増やすと、ある式(漸化式)で円周率の近似値が計算できることを見つけました。18、19世紀はヨーロッパで科学がすごいスピードで進歩しました。関孝和の円周率の世界記録は短い間だったようです。
しかし、数学で世界記録を日本人が持っていたことはすごいことです。日本の数学のレベルが高かったのは、関孝和1人が天才だったからではありません。和算という数学が発展していました。同時期に、全ヨーロッパでいろんな国の人が競い合って発展させた数学と同じようなレベルの数学が、鎖国の日本で発展していました。現在、コンピュータの性能を調べるためにパイの計算をしますが、関孝和の弟子は、コンピュータで使われているような計算方法を見つけました。
鎖国という環境の中で、日本には、数学で競争をする風土がありました。むずしい数学の問題を解くと、その内容を書いたものを額に入れて、神社とか、お寺に飾って、誰でも見れるようにしました。これを「算額」と言います。親に連れられて神社やお寺に行った子供が、「算額」を見せられ、知らないうちに和算を勉強するはめになったのかもしれません。 また、数学の本を出版すると、その本の最後には、誰も解けないだろうという、むずかしい問題が書かれていました。その問題を解く人が出てくることによって、数学は進歩しました。
明治維新になり、世界に追いつけということで、西洋の数学を勉強することが義務付けられ、和算はほろびました。しかし、高いレベルの和算が日本にあったから、日本は早く西洋の科学を吸収することが出来ました。日本人の民族性を高水準にさせた1つに和算があります。その象徴が算額です。こんな歴史を、当HPを通じて、子供達に教えたいと思います。
註1 : 縄文時代の出土品である丸木舟を作るのに、直径80〜100cmの木が必要でした。縄文人は、次はこの木で舟を作ろうと、時間をかけて選び、決めていたと考えます。直径100cmの木は、身長160cmの人間2人が木の周りに腕を伸ばし、ようやっと手を繋ぐできる大木です。ここに、πの概念があります。縄文人のきこりが160cmの人が2人いたと考えます。身長160cmの人が腕を伸ばすと、160cm前後になります。2人が木の周りに腕を伸ばして、ようやく手を繋げる木だとすると、外周は約320cmになります。320cm÷3.14≒100cm
で、直径約100cmの木であることがわかります。 木をたたいて、歪が入っていないか試したはずです。北側が密であり、南側が加工しやすい内部構造を持っている木と判断したはずです。何年も使おうとした舟です。その舟で、千葉市/船橋市から館山市まで航海してイモ貝などの装飾品にした貝を採取したようです。場合によったら、神津島まで行って黒曜石を採って来たかもしれません。 縄文人はそんなことをしていたのじゃないかと想像します。
註2 : 日本が発展してきた根本には、創造する文化と真似する文化があったと思います。前者は縄文時代に培われてきた文化、後者は弥生時代に広がった文化と考えています。・・・