リングオブサイアス
(Athena)


<ストーリー>

禁断の秘術、生命創造の魔法を完成させた魔女ベアトリス。
その力に魅せられた魔女は、闇より創り出した軍勢を率い、神聖都市ジュールに攻め入る。
ジュールの第二王子サイアス、サイアスの恋人の女戦士ラディア、神聖騎士ガランらの奮戦も空しく、
強大な闇の軍勢によってジュールは陥落してしまう。
そして、三年の月日が流れた…。


ここのところギャルゲーコンテンツ化が著しい「サウンドノベルの鉄人」において、
ようやく久々に正統派サウンドノベルの登場です(^^;
…とは言っても、これは発売されたのが1996年とかなり前の作品です。
現在では「SuperLite 1500シリーズ」として1500円で購入できますので、なかなかお得。
こういう、昔の作品が安価に買えるってのはいいですね。

 

 

さて、この作品の内容ですが、サウンドノベルでは珍しいファンタジー系です。
それも、小僧と小娘がキャアキャア言いながら冒険もどきを繰り広げるような中途半端な内容ではなく、
重厚な「剣と魔法」の世界を扱った内容です。
グラフィックも油彩画風とでも言いましょうか、実に渋めの絵柄で作品の内容によくマッチしてますし、
BGMも「いかにも中世ファンタジー」的な重厚な感じの曲が多くて、すごく雰囲気がいいです。
私は別に懐古主義者ではありませんが、やはりファンタジー系は昔ながらの「剣と魔法とドラゴンの世界」の方が好きです。
もっとも、このサウノベにドラゴンは出てきませんが…。

 

 

懐かしいと言えば、開発スタッフの中に手塚一郎氏の名前があるのを見て、
私は懐かしさのあまり涙がちょちょ切れそうになりました。
手塚一郎氏と言えば、かつて「マイコンBASICマガジン」で数々の辛口RPGレビューや
ファンタジー系の面白い記事を書いており、その内容は非常に読み応えのあるものでした。
この方のレビューに魅せられてファンタジー3を買ってしまったあの頃が懐かしいです。
あの頃のパソコンRPGはホント面白い作品が多かったなぁ…。

 

 

で、このサウンドノベル、一応主人公は滅亡した神聖都市ジュールの第二王子サイアスなのですが、
必ずしも「プレイヤー=サイアス」ではありません。
このサウノベにおいては、プレイヤーはある特定のキャラクターを演じるのではなく、
シナリオの進行そのものを動かす役目を演じるのです。
言いかえれば「登場人物全体の行動をプレイヤーが選択する」となるのでしょうが、
ほとんどのサウノベが、「主人公=プレイヤー」の選択によってシナリオが変化していくのに対し、
この作品では、プレイヤーが「その場面場面における登場人物の行動を選択すること」によってシナリオが変化していくのです。
なかなか面白い手法ですが、これは反面、プレイヤーに「主人公なりきり感」を与えることができないので、
いまひとつ感情移入しづらくなるのが難点と言えば難点でしょう。
もっとも、「演じる」ことよりも「読ませる」ことを念頭に置いた構成になっている以上、やむを得ないのでしょうが…。

 

 

さらに、この作品は「弟切草」と同じくゲームオーバーがないので、実に多彩な展開のシナリオが楽しめます。
あくまで個人的な見解ですが、私は、サウンドノベルにおける第一の評価基準は
「どれだけ変化に富んだストーリー展開が楽しめるか」
という点にあると思っていますので、この作品はその点は完全にクリアしています。
ただ、メッセージスキップ機能がないのが残念です。
最初の選択肢に行くまで、毎回同じオープニングを見なければならないのはさすがに辛い…。

 

 

 

結論としては、この作品、個人的にはかなりオススメです。
ちゃんとしたマルチストーリーになっていますし、何よりも雰囲気がものすごくいいです。
同じ1500円でも、
「SIMPLE1500シリーズvol.31
THEサウンドノベル」
よりは間違いなく元が取れます。

 

おまけ:登場人物紹介


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