「銀色」シナリオ一部紹介


あまりにも痛いシナリオが勢ぞろいの作品「銀色」。
ここでは、そんなシナリオの中でも、個人的にお気に入りの2つを挙げてみました。
そのうち、全シナリオ紹介にしたいと思いますが(^^;


第1章:「逢津の峠(おうつのたわ)」
(古代編:平安時代?)

(あらすじ)

…猛暑の夏。
逢津の峠でひとり野盗をし、「なんとなく」人を殺す毎日の「名前を捨てた」主人公。
ある日、いつものように峠で獲物を狙う主人公のもとにひとりの少女がやって来る。
色街から、「なんとなく」逃げ出してきたという、感情の乏しい「名前のない」少女。
なぜか主人公の側を離れようとしない少女を疎ましく思い、殺そうとする主人公だが、
己の死にすら関心を持たない少女に対し、なぜか刀を振り下ろすことができなかった。
「なんとなく」共に日々を過ごしていくうちに、今まで生きている実感を持たなかった
二人の心に、少しずつ変化が起こっていく。
…そんなある夜、峠を通りかかった商人を襲った主人公は、奇妙な品物を手に入れる。
朱色に染まった、糸のようで糸でない不思議な物。
普段は食い物以外の品には目もくれない主人公だが、なぜかその不思議な「糸」には
関心を抱き、少女の髪をその「糸」で結ってやる。
いつしか、主人公と少女は少しずつ惹かれあっていた…。

…だが、殺し奪うだけの日々を送る人間に、幸福など訪れるはずもない。
やがて二人は、避けられない悲劇に見舞われることになる。
銀糸が光を放つ時、少女が願う願いとは…?
そして、二人は…?


< コメント >

たぶん、人によって評価が真っ二つに分かれるシナリオでしょう。
生きるためになんとなく人を殺す主人公と、色街からなんとなく逃げ出した少女。
生きている実感を持たない二人が出会い、日々を過ごす様が淡々と綴られていきます。
格別劇的な出来事が起こるわけでも、二人が激しく愛し合うわけでもなく、本当に淡々とシナリオは進んでいきます。
でも、それゆえにラストシーンで少女が言った「生きた証が欲しい…」という台詞と、
二人が雪に埋もれていく様が重みを持ってくるのです。
これを「沁みるなぁ…」と感じるか「なんか退屈だなぁ…」と感じるか、それは人それぞれでしょうね。
もっとも、シナリオ開始早々容赦なくぶった斬りまくる主人公の姿は、
劇的といえば劇的かもしれませんが(笑)。


第3章:「朝奈夕奈(あさなゆうな)」
(近代編:大正時代)

(あらすじ)

両親の遺したレストラン、「佐々井亭」を切り盛りする佐々井夕奈、朝奈の姉妹。
苦労も多かったが、たくさんのお客に囲まれ、二人は幸せと呼べる日常を送っていた。
そんな中、大好きな姉の負担を少しでも軽くしてあげたいと思う朝奈は、母から形見としてもらった
「何でも願いがかなう」銀の首飾りに「お姉ちゃんに素敵な男性が見つかりますように」と願う。
その願いがかなったのか、ある日佐々井亭に一人の青年将校が訪れる。
鍋島志朗というその青年は、優しさと果断さを兼ね備え、まさに理想の人と朝奈には思われた。
何とか志朗と夕奈をくっつけようと考える朝奈は日々奮闘し、
また、毎日首飾りに無邪気でささいな願いを語り続けた。
それが本当に「無造作に願いをかなえてしまう」宝物であるとも知らずに…。

…それらのささいな願いは、確かにすべて現実となった。
しかし、それらはことごとく朝奈の思惑とは異なる結果を招いた。
夕奈は志朗を本気で愛し始めていたが、志朗は朝奈に惹かれ始めていた。
朝奈は何とかそれを修正しようとするが、朝奈の行動はすべて裏目に出てしまった。
そればかりか、朝奈自身、自分も志朗を愛し始めていることに気づく。
しだいに朝奈に対して嫉妬心を募らせていく夕奈。
少しずつ狂い始める姉妹の絆。
そして、ある日の何気ない志朗の一言をきっかけにして、夕奈は朝奈に対し蓄積された憎悪を
爆発させ、以来、人が変わったかのように毎日朝奈を罵倒し続けた。
自分の軽率な行動が姉を傷つけ、また自分まで志朗を愛してしまった負い目もある朝奈は、
黙って姉の罵倒を受けながらも、何とか元の仲の良い姉妹に戻れるよう必死で行動する。

…そして、そんな朝奈の必死の行動が功を奏したのか、ある事件をきっかけにして、
姉が今まで店と妹のためにどれだけ多くのことに耐え、一人で重荷を背負いこんでいたかを
知った朝奈は、自分の内心すべてをさらけ出して夕奈に姉に対する自分の想いを語る。
ついに夕奈は心を開き、姉妹はかつての絆を取り戻した。

…だが、ここでも銀糸は関わる者を悲劇に導く。
朝奈が犯したたったひとつのささいな間違いが、すべてを破局の淵へと叩き込む。
今度こそ完全に断ち切られた姉妹の絆、そして完全に壊れた夕奈の心。
もはや絆を取り戻すことはできないと悟った朝奈は…?


< コメント >

怖ぇ!アンタ怖すぎるよ夕奈さん!
シャレになりません。
ていうか心臓の弱い人は見ない方がいいんじゃないかとマジで思います。
なんと言っても、このシナリオの最大の魅力(?)は、
夕奈が朝奈に対して叩きつける圧倒的な悪口雑言罵詈雑言です。
なんつーか人間の嫉妬の醜さが過剰に表現されてます。
加えて、夕奈役の声優さんの演技があまりにも真に迫っているので恐怖倍増。
まったく、序盤のあんなに仲むつまじい姉妹がどうしてここまで…と思わずにはいられないほど、
泥沼にはまりボロボロになっていく佐々井姉妹の姿は悲惨の一言。
ただ、このシナリオでは夕奈さんだけが悪役みたいに見えますが、
ハッキリ言って、私のような少しばかりひねた者から見れば、朝奈ちゃんもかなりアレです。
善意で無意識に他人を傷つける人って、悪意で人を傷つける人よりよっぽどタチが悪いと思うもので。
それにしても、このシナリオの本当に恐ろしくとんでもない点は、
単なる「姉妹が同じ男性を愛してしまったことによる悲劇」という話では済まず、
クライマックスで、もはや修復不可能かと思われた姉妹の絆が再び修復された…と思わせておいて、
一気に大どんでん返しで
地獄の底へ叩き落してくれたこと
でした。
もう脱帽。なーんの救いようもなし。
勢いに任せて「ねーちん名言集」まで作ってしまいました。
(↑ファンの間では夕奈の愛称が「ねーちん」なのです)
どうぞ。

おまけ2「ねーちん名言集」


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