銀色(完全版)
(ねこねこソフト)


<ストーリー>

ただ祈りさえすれば、どんな願いでもかなうという奇跡の宝物「銀糸」。
だが、それは、あまりにも安易に願いをかなえてしまうために、
必ずしも願いがかなうことによって幸福が与えられるとは限らなかった。
様々な時代の様々な人々に「銀糸」は悲劇をもたらす。
無造作に願いをかなえながら…。


さて、以前から「悲しい」「シナリオ痛過ぎ」「名作とは言えないが佳作」などと
けっこう話題にはなっていたものの、別に購入意欲までは喚起させられなかったこの作品、
DVD版が2980円で売っていたので即買いしました。

 


上のストーリー紹介にあるように、この作品は、奇跡の宝物「銀糸」にまつわる物語を
時代別にオムニバス形式で綴っていく形式をとっています。
内容は全4章+αからなり、古代から現代へと時代順に並んでいますが、「久遠の絆」のような転生モノではありません。
あーよかった。
私、ホント転生モノって苦手なんです。
また、第1章から順に読み進めていく構成ではあるものの、1〜3章までは、各章の関連性は薄く、
それぞれ独立した内容となっています。
そして、各章の間に幕間劇とも言うべき一連のエピソードが挿入されており、
それは本編第4章終了後に登場する追加シナリオへと繋がっています。
さらに、1章を補完する隠しシナリオ的な5章も存在する…など、シナリオのつながりは結構複雑です。
それゆえに、全シナリオをクリアした後に、すべてのエピソードがジグソーパズルのように
カチリと頭の中で結合する感触を味わうことができます。
もっとも、別の見方をすれば、クリアするまでイライラしっぱなしとも言えますが。

 


で、物語の内容ですが、銀糸とそれに関った人々の数奇な運命というテーマに沿って語られ、
その結末は決して主人公達にとって幸福なものとは言えません。
つーかスゲエ不幸です。
身もフタもない言い方ですが、第4章現代編の主人公&ヒロインを除いては誰一人幸せになれません。
さらに、ただでさえ不幸全開のシナリオに、悲しくも美しいBGM&挿入歌がそれに拍車をかけてくれます。
各章とも、結末に至る過程が丁寧に描かれているため、
ある程度読み進めていくと、おそらく幸福な結末などないだろうということがわかってきます。
ですが、わかっているからこそ読み進めてしまう、というところがこの作品のシナリオの面白さでもあります。
特に第3章なんかどう収拾をつけるつもりなんだと本気で考え込む程の泥沼っぷりでした。

 



そして、この物語の根幹となるアイテム「銀糸」の扱いについてですが、
幕間劇を例外とすれば、必ずしも直接的な奇跡の力を起こすわけではありません。
銀糸の力かもしれないが、あるいはただの偶然だったのかもしれない…という程度です。
「どんな願いも祈るだけで叶えてしまう宝物」なのに、シナリオの中では、
あまりその効力が派手に描写されていない点については賛否両論あるかもしれません。
私はこういう描写でよかったと思いますが。

 

 

…ただ、どうしても気になった点がひとつ。
このゲーム、各章ごとそれぞれ別のシナリオライターがシナリオを書いているのですが、
それゆえにモロに各章のレベルの差が感じられるのが気になります。
まあシナリオの内容に対する印象なんてのは、そもそも客観的に評価を下せるものではないので
「レベルの差」などという表現は適当ではありません。
ですが、第1章「逢津の峠」と第3章「朝奈夕奈」に比べて、第2章「踏鞴の社」と第4章「銀色」は
どうもいまひとつな感じがしてなりませんでした。
特に、事実上の完結編と言うべき第4章が今ひとつパンチ力に欠けていたのは残念でした。
もっとも、第1章「逢津の峠」は純粋にシナリオの内容に感動したのですが、
第3章「朝奈夕奈」については
ダークサイド全開な内容にド肝を抜かれた
と言ったほうが正しいですが。
個人的には、あの家庭用ゲーム機史上最悪のシナリオ「羽音」に匹敵するのではとさえ思われます。
ま、その辺については下のシナリオ紹介で。

 



…とまあ、長々と感想を述べてきましたが、結論としてはハッキリ言っておすすめです。
何だかんだ言って、どのシナリオでも、きちんと「銀糸に関わってしまった人々の悲しい物語」が語られていますし、
定価3600円にしては、かなり楽しめる内容だと思います。

 


…あ、もうひとつ肝心なことを忘れてました。
このゲーム、全シナリオクリアすると、ギャグ全開のおまけシナリオがプレイできるんですが、
「荒木飛呂彦」とか「先行者」という単語に
反応できる人には爆笑モンです。
よくもまあ、これだけ悲しいストーリーの作品にこんなブッ飛んだ内容のおまけシナリオ入れたものです。
私はこういう悪ノリ大好きですが、冗談の通じない人には不快に感じるかもしれません。
確かに様々な意味で佳作と言える作品です(笑)。


おまけ:銀色シナリオ紹介
(重ねて注意!何の遠慮もなく激しくネタバレです)


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