神の座した峰に春の新雪
公文川より望む高峰(左奥の最高所が頂上)
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御形(みかた)神社を下り、公文川のほとりに立つと高峰が見えた。雪を纏った山頂には、強い風にあおられた雲がからみつき、東西に伸びた稜線のすぐ上をおおっている。白い山と白い雲は、逆光線の光によってまばゆく輝いていた。
一宮町の高峰は、風土記の山である。播磨国風土記の中の「志尓嵩(しにたけ)」が、この高峰に比定されているのである。各地で戦いを繰り広げた葦原志許乎命(あしはらのしこをのみこと)と天日槍命(あめのひぼこのみこと)の最後の決戦の地が、この山である(『播磨国風土記の山々』へ)。御形神社には、「夜の間杉(よのますぎ)」の伝説が残っている。奈良朝の772年、里人数人が、一夜のうちに3本の大杉が山神社の森に鼎立(ていりつ)するという霊夢を見、これは高峰の山頂に居た神の遷座の所望であろうということで、社殿を造営し、神を祀ったという伝説である。御形神社の本殿裏には、樹齢600年の大木「夜の間杉(よのますぎ)」が立っていた。
麓から西尾根に取りつくまでの急な斜面には、曲がりくねった広い道がついている。終点には、NHKの中継放送所のアンテナが立ち、ここから尾根に沿って雑木の切り開きがある。昨日、近畿地方では春一番が吹いたが、このあたりは雪が降っていた。真っ白な春の新雪である。今日も、ぼたん雪がふわふわと降っている。風に揺られた木の枝が、昨夜のせた雪を、時折はらはらと落とす。時々、木立の間に視界が開けることがある。北には、深い谷を隔てて峰山高原が迫っている。雪化粧をしてはいるが、日が陰っているためか、峰山の大きな山体はどっしりと暗く横たわっていた。
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高峰山稜からの峰山高原(中央が暁晴山) |
高峰山頂の三角点 |
雪は30cmも積もってはいないのだが、初めてスノーシューを足につけて歩いてみた。斜面を歩くものいいが、平坦に近いところでのスノーシューは快適だった。
いくつかのピークを越えて、山頂に辿り着いた。マジックで簡単に「高峰山頂」と書かれた杭が立ち、登頂記念の小さなプレートが3枚、木の枝に掛かっていた。雪面の少し盛り上がったところの雪を手で払いのけると、三角点の上面が出てきた。山頂のアセビは、雪をのせてじっとうなだれているが、小さなつぼみの先はかすかに開きかけている。神の座した山に、春はもうそこまで来ている。
山行日:2001年3月11日 |