小野アルプス  (200m)            小野市・加古川市      25000図=「三木」「社」
12の小さな峰をつないで歩く

尾根の小径
 安場山の四等三角点標石は、尾根に続く細い小径から5m程離れて立っていた。小径には別の石柱が立っていて、それで足を止めたのだが、この石柱がなければ三角点に気づかなかっただろう。
 リュックを降ろし、ここで一休みした。ポケットから地形図を取り出して、位置を確認した。細かく曲がりくねった尾根に、小さなピークが並んでいる。鉛筆を取り出して、それらのピークに端から番号をつけてみた。ピークの数は全部で12。ほぼ等間隔に並んでいる。その中で、この安場山は5番目にあたった。

 小野市と加古川市の境界に沿ってほぼ東西に延びるこの山並みを、来住(きすみ)山地という。標高は、最高でも惣山(小野富士)の200m。標高150m前後の小さなピークをつないだ稜線には、
ところどころに岩盤が大きく露出している。この山容から、来住山地は小野アルプスと呼ばれている。今朝、鍬渓神社の裏手からこの山地に取り付き、ここまで歩いてきたのだった。

小野アルプス最高峰、惣山(左が山頂)
 歩き出してからずっと、コナラ、ソヨゴ、ヒサカキ、イヌツゲ、ネズなどの雑木とシダやササが続いていたが、7つめのピーク総山の先の鞍部あたりから、岩盤の露出が始まった。赤褐色の岩肌がむき出しになった通称アンテナ山を越えて、この山地の最高峰、惣山に達した。惣山の山頂から北へ、ほぼ水平に支尾根が派生している。その先に、新しい展望台が建てられていた。
 その展望台の上に立った。見下ろせば、加古川といくつかのその支流が悠々と流れている。川の両側の段丘面や沖積面の上には、加西市や小野市の市街地や田園地帯が広がっている。手前には、今朝その畔に車を止めた鴨池が小さく光り、その右には通り抜けてきた林が続いている。そこから山に入った鍬渓神社は、山の陰になって見えない。東には越えてきた総山の小さいながら端正な姿が立ち、西にはこれから向かう紅山の南陵が放物線を描いている。時計を見ると、午後1時を少し過ぎている。遠くは北に笠形山や千ケ峰、あるいは南に淡路島までが見えるこの日だまりの展望台にも、少し冷たい風が吹いてきた。

紅山南稜を振り返る
 惣山からの急坂をつづらに下りる。木の間越しにときどき見える紅山が、だんだん高くなる。岩倉峠には、葉をすっかり落とした木々の中に感じのよい落ち葉の小径がついていた。
 ここから、小野アルプスの核心部、紅山の南陵にとりつく。大きな一枚岩の岩盤がむき出しになった稜線である。岩盤の表面はまだらに黒ずんでいる。これに、灰色、淡緑色、オレンジ色の地衣類がついている。その中でも、オレンジ色が浮かび上がるように目立ち、山稜から両側へ流れ落ちるような模様をつくっている。
 岩石は、自破砕構造と球顆構造が発達した流紋岩。丸いソフトボール大の球顆が突出したり、抜け落ちたりしているので、表面は凹凸に富んでいる。傾斜は急であるが、この凹凸のおかげで危なげなく登ることができる。ハンマーを片手に、岩石を観察しながらうろうろと登っていった。
 残された岩山と宮山を超えて、福甸峠にようやく下り着いたのが午後3時を少し過ぎていた。低い山々をつなぎ歩いた今日の山旅。帰ってから、地形図で12のピークの上りの高さをたしてみた。740m……なんだ、やっぱり、たいしたことはない。とはいえ、よく上り、よく下り、よく歩いた一日であった。


山行日:2001年12月24日

山 歩 き の 記 録
鴨池(男池)第2キャンプ場前駐車場〜来住町集落〜下来住町集落〜鍬渓神社〜採石場上〜@110m+ピークA140m+ピークB138mピーク(NTTドコモ関西白沢無線中継所〜C愛宕山(150m+)〜D安場山(156.3m)〜E160m+ピーク〜アダメ峠〜F総山(168.3m)〜G通称アンテナ山(170m+)〜H惣山(小野富士 200m+)〜岩倉峠〜I紅山(184m)〜J岩山(163.8m)〜K宮山(90m+)〜福甸峠〜皿池・女池〜鴨池(男池)第2キャンプ場前駐車場
安場山の三角点標石
 小野市来住町の鴨池(地形図では男池)の畔にある駐車場に車を止める。そこから、東に林を抜け、来住町、下来住町の市街地を通って鍬渓神社(採石場に隣接 地形図に神社の記号あり)まで歩いた。鍬渓神社の裏手から山の斜面をそのまま登る。尾根まで道はないが、雑木が疎らなので楽に歩ける。尾根には、かすかな踏み跡があった。尾根を南に歩くと、採石場の最頂部に出る。採石場内は歩けないので(平日なら発破も行われている)、尾根をはずして雑木の中を進み、最初のピーク(110m+)峰に達した。
 ここから、来住山地の主尾根を西へ進む。6つ目のピーク(160m+)からは、尾根をはずし、浅い谷沿いを下った。下りた鞍部には、車道が南北に通っている。この車道を少し南に登るとアダメ峠の地蔵さんが立っている。この地蔵さんの向かい側に、総山への登山口があった。
 総山、アンテナ山、惣山(小野富士)と越えて、岩倉峠へ。岩倉峠には、地形図破線路の峠道がついている。ハイカーのためのベンチとテーブルも設置されていて、気持ちのよい美しい峠であった。
 さらに、紅山、岩山、宮山と歩き福甸峠へと下り着いた。
   ■山頂の岩石■ 白亜紀  相生層群伊勢累層  流紋岩

 小野アルプス全域に、白亜紀の相生層群伊勢累層(『北条図幅(地質調査所 1995)』では有馬層群鴨川層とされている)の流紋岩が分布している。
 流紋岩の岩相は、大きく2つに分けられる。一つは流理構造が発達したものであり、もう一つは自破砕構造と球顆構造が発達したものである。
 このコースの核心部である紅山の南陵は、急な一枚岩の岩盤であるが、流紋岩に見られる粗粒な球顆構造による凹凸のため歩きやすくなっている。
 詳しくは、地質岩石探訪『小野アルプスの流紋岩』

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