後カルデラ期の湖成堆積物、奥須加院礫岩
 姫路市香寺町奥須加院から暮坂峠に向かう道路沿いに、地層の観察できる崖がある。この地層は、いろいろな種類の礫(れき)を含む礫岩から成り、この礫岩中にはさまれる砂岩・泥岩の薄層が地層面を明瞭に表している。

 兵庫県では、後期白亜紀の激しい火山活動によって形成された火砕岩類が広く分布している。このときの火山活動では、火砕流発生後、マグマ溜まりに蓄えられていたマグマが大量に放出されたため、地域ごとにカルデラが形成された。
 書写山から広峰山塊にかけて、カルデラを埋積させた火砕岩類が分布している。奥須加院の礫岩は、このカルデラ形成後にカルデラ湖に堆積した地層である。
 この露頭は、地層面が明瞭で岩石も新鮮であって、見事な地質景観をつくっている。後期白亜紀の火山活動やカルデラ形成の一断面を示すものとして貴重であり、保存が望まれる。

※ この奥須加院の礫岩は、これまで相生層群の基底礫岩とされていたものである。しかし、最近の研究『 山元孝広・栗本史雄・吉岡敏和(2000) 龍野地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅) 』によって、再定義された「広峰層」の上部に位置するカルデラ湖堆積物とされた。                                         
                            

奥須加院道路のり面の露頭(県道80号線)
露頭の全体写真
上の露頭全体写真に単層名を書き入れたもの
 
@礫岩層
礫は、径数cm〜20cmを主体とする(最大長径60cm)亜円礫から亜角礫である。礫の種類は黒色頁岩と砂岩を主体とし、チャート・流紋岩・石灰岩・石英閃緑岩も含まれている。基質は淘汰の悪い黒色砂岩である。
A細粒砂岩層
@の礫岩中に、層理面に不調和にはさみ込まれている。黒色で、地層中には湾曲した葉理が観察される。
B粗粒砂岩層
@の礫岩中に、断続的にはさみ込まれている。写真中心部で層厚は20〜30cm。中部に数mm〜1,2cmの黒色頁岩の小礫を含んでいる。下部は、厚さ1cm程度の細粒砂岩である。
C細粒砂岩と泥岩の薄層
厚さ5〜20cm。上部の泥岩は黒色で、この露頭では途切れることなくほぼ連続している。下部の砂岩は緑色で、左右で薄くなって消滅している。
D礫岩層
礫は径10〜20cmのものを主体とし、@の礫岩より概ね大きい。礫は、緑色砂岩・黒色砂岩・劈開の発達した頁岩を主体とする亜円礫である。砂岩の礫は、珪質で硬い。基質は、黒色の砂岩である。
E帯緑灰色砂岩層
20cmの層厚で、直線的に連続している。岩石は、帯緑灰色の砂岩で、新鮮な部分は硬い。淘汰が悪く、1〜2mmの黒色頁岩の岩片を含んでいる。
F礫岩層
1〜2,3cmの大きさの砂岩や黒色頁岩から成る亜円礫を含む。基質は細粒砂岩で、表面は風化が進んでいる。
湖成堆積物が固まってできた礫岩
@の礫岩層 礫は黒色や緑色の砂岩と黒色頁岩が多い
@の礫岩層中の流紋岩の礫
流理構造を示す縞模様が見られる
 
@の礫岩層中の石灰岩の礫
堆積構造の乱れ
 礫岩層中にはさまれているBの粗粒砂岩層は、途中で途切れてその位置がとんでいる。また、Aの細粒砂岩層は、この地層の地層面に斜交してはさみこまれている。

 左の写真は、@の礫岩層にはさまれるBの粗粒砂岩層である。Bの粗粒砂岩層の厚さは20〜30cm。その下には、膨縮した淡緑色の中粒砂岩層が、厚さ10〜30cm、長さ80cmで波打つようにしてはさみ込まれている。

 このような堆積構造の乱れは、この地層がまだ固結していないときにすべり動いたことを示している。
@の礫岩層にはさまれるBの粗粒砂岩層
 
細粒砂岩と泥岩の薄層
 Cの細粒砂岩と泥岩の薄層は厚さ5〜20cmで、連続している。下部の細粒砂岩は緑色で、葉理が見られる。上部の泥岩は黒色で、「チリ割れ」する。走行はN40°E、傾斜は15°Nである。

 この礫岩から成る地層は、奥須加院から相坂にかけて広く分布し、田野城山(221m)や石坐の神山(230.7m)でも観察される。また、八葉寺付近には、同じ湖成堆積物と考えられる泥岩層が分布している。

関連ページ 登山記録「石坐の神山」
Cの細粒砂岩(下)と泥岩(上)の薄層


■岩石地質■ 礫岩(白亜紀 広峰層)
■ 場 所 ■ 姫路市香寺町奥須加院 25000図=「姫路北部」
■探訪日時■ 2003年6月22日、他

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