峰山高原C〜砥峰高原K  神河町   25000図=「長谷」


スキーでつなぐ二つの高原  map

展望台から見る砥峰高原

 峰山高原から1037.9m峰(点名 峰山)を経て、砥峰高原までスキーで歩いた。

 峰山高原スキー場リフト乗り場の下から、リラクシアの森に入った。大地は深い雪の下。雪に埋もれた橋を渡り、森の中へと進んでいく。
 東屋の屋根から遊歩道の位置がだいたいわかるが、雪の上はどこだって自由に歩ける。
 ミズナラやコナラの枝はどれも雪をのせている。風が吹くとそこから雪が飛ばされ、チラチラと光りながら森の中を斜めに流れた。

リラクシアの森

  立ち止まると樹上から小鳥の声が聞こえてきた。シジュウカラ、コガラ、コゲラ、エナガ、ヒヨドリ・・・。鳥の研究者、Sさんといっしょなのでどんな声でも教えてもらえる。
 フィ、フィ、フィという鳴き声が近くで聞こえた。ゴジュウカラが、ミズナラの木を上へ下へとせわしなく動きながら、幹をつついていた。

ゴジュウカラ

 山野草園のネットをぐるりとまわり、少し登った。スキー場の音楽が、またかすかに聞こえ始めた。野鳥の観察を続けるSさんとここで別れ、私は砥峰高原へと続く夏道をめざした。
 金具のかかとを立て、深い雪の斜面を登る。雪はやわらかく、一歩ごとにキュッキュッと音をたてて沈んだ。雪の上には動物の足跡が交差し、枝から落ちた雪のかたまりが丸い跡をつけていた。
 木々が混み入ってきた。体が枝にぶつかると、雪がシャワーのように降ってきた。ヤマガラが横切った。
 急な坂を登ってたどり着いた夏道には、トレースがあった。

夏道を行く

 トレースをたどった。道が急に狭くなっているのは、丸太の橋の上。橋を渡ってカラマツ林の中に入っていく。
 ときどき雪が静かに降ったが、すぐにまた晴れたりした。立ち止まって空を見上げると、周囲のぼやけた雲が足早に流れっていった。
 雪をのせて道へとたわむアセビをよけながら進む。ウツギの乾いた薄茶色の果実にも雪がのっていた。

 スギ・ヒノキ林に入ると、トレースは夏道を上手にショートカットしていた。そのままトレースをたどり、夏道に戻って先に進むと、防火帯の雪面に出た。
 防火帯の下にはスキー場をのせた峰山高原が広がり、斜面が暁晴山にゆるく上がっている。暗い雲が高原の上にかぶさっていた。

 防火帯から峰山高原を見る

 防火帯を登っていった。アセビは、てっぺんの葉と赤いつぼみだけを出して雪に埋まっていた。
防火帯のいちばん上から林に入った。トレースは、再び夏道からそれて尾根を進んでいた。そのままたどっていくと、1037.9mピーク(点名 峰山)に達した。そこには、一本の細い鉄のポールだけが雪の上に顔を出していた。

 雪に顔を出すアセビ 点名峰山

 トレースは、ここで終わっていた。ここから、だいたいの見当をつけて下ると夏道に出た。その道を進むと林道に達した。
 林道はゆるくて歩きやすかったが、風が吹き抜けるところでは雪面が大きく波打っていた。そこに木の影が映って、複雑な曲線模様を描いていた。

林道の雪面

 林道から再び林の中の夏道へと入った。ときどき激しく吹雪いた。よく知っている道なのに、一度道をはずして元に戻るのにかなり消耗した。
 鳥の声は聞こえなくなった。一歩踏み出すたびに、自分の息づかいと雪の踏みしめられる音とプラスチックブーツのきしむ音だけが聞こえた。
 ようやく砥峰高原のいちばん上に達した。見慣れた三角形の花崗岩が、雪の中に黒く見えた。

吹雪いてきた 砥峰高原の上に出る

 高原の上、向こう側に見える展望台まで歩いた。天気の変化は目まぐるしく、吹雪が止んで陽が射し込んだと思ったら、すぐまた雪が降ったりした。
 スキーをはずして、展望台に登った。ここから高原下の交流センターまで滑る予定だったが、もうここまで登り返すだけの体力と気力が残っていなかった。

砥峰高原展望台

 ストーブをとり出してお湯を沸かしたが、気温が低くて火力がいつまでも大きくならない。 沸騰しないお湯でカップ麺をつくった。麺は少し硬かったがそれでも体が少し温まった。
 相変わらず天気は目まぐるしく変化し、目の前の風景は白くかすんだり、雪面が陽光に照らされてなめらかに輝いたりした。

展望台より砥峰高原を見下ろす

 展望台をあとにして、自分のトレースをたどった。防火帯に出たところで、初めてシールをはがし防火帯を滑り降りた。
 始めは快調に滑ることができたが、途中から急斜面となった。深雪の急斜面を滑るだけの技術がないので、そこはスキー板を横にして一歩ずつ下った。
 谷川の手前は急角度で落ち込んでいた。スキーを担いで、つぼ足で下った。谷を渡り、斜面を登って再びスキーをはいた。
 林の中を歩き、16時の少し前に駐車場へ帰った。そこでは、朝別れたSさんが紅茶を沸かして待っていてくれた。

山行日:2022年2月24日

リラクシアの森入口〜リラクシアの森〜1037.9m峰(点名峰山)〜砥峰高原展望台(往復)
 リラクシアの森を北へ抜けて、夏道を進んだ。トレースが1037.9m峰まで続いていた。そこから、林道をふくむハイキング道を砥峰高原のいちばん上の展望台まで歩いた。
 帰路は、防火帯を滑り、谷川を渡ってホテル前の駐車場へ戻った。

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