神鍋山(469m)       豊岡市     25000図=「神鍋山」「栃本」


夏の神鍋高原を家族で歩く

神鍋山火口縁で

 夏だ!さあ、家族でアウトドアだ!と父は思う。しかし、家族の警戒心は強い。今度は、どんな目に遭うのかと恐れているのがよく分かる。
 昨年は黒田庄町の白山で道に迷い、遭難騒ぎ(?)。「今度は、下見をしてから連れて行ってよ。」と、妻には言われた。
 しかも、父はところかまわず立ち止まり、家族そっちのけで岩に向かってハンマーを振る。そういえばその前は、市島町のキャンプ場で大雨にあい、全員どぶねずみのような惨めな姿に。おまけに雨でバーベキューの火が消え、半生の肉を食べて激しい下痢。
 そこで父は考えた。今回は、あまり苦情の出ないところを歩こう。神鍋山なら、低くてすぐに登れるし、「夏の高原ハイキング」などと言ってみると、なんかいい感じがする。
 台風6号の接近で良からぬ胸騒ぎもするが、なんとか家族4人そろっての出発までこぎ着けた。

 神鍋山は、約1万年前の火山活動でできたスコリア丘。麓からの高さが約120mという小さな円形の丘である(標高469m)。
 南から東の斜面はスキー場で、ゲレンデには夏草が生い茂っていた。夏は、パラグライダーやグラススキーで賑わうということだが、強風のためかそれらは見られなかった。
 麓から、ゲレンデの草の上を歩いて登れば、すぐに火口縁に着いた。ぽっかりと口を開けた火口は、よく見ると繭形をしていて2つの噴火口が重なってできたのが分かった。火口の周囲は750m、深さは40mである。

神鍋火山の火口

 火口縁の周遊路を家族で歩いた。小2の娘は、元気に先頭を歩いている。中2の息子は、ビデオカメラで景色を撮っている。その横で、妻が「さながら、緑のアリ地獄のようです。」と解説している。うん、いい調子でいっている。

 雲の流れが速い。上空高く巻雲が筋を描き、その下を底が暗く乱れた積雲が南から北へ流れている。火口を埋め尽くした草が風になびき、銀色に光っていた。
 火口縁の北には雑木林が広がり、周遊路から道が入り込んでいる。ミズナラやクリなどの木に覆われた木陰の涼しい道であった。

火口縁北側の雑木林

 小径の石は、全部、焦げ茶色で穴ぼこだらけのスコリアだ。
 発泡著しい玄武岩でつくられた神鍋神社のピラミッド、道の傍らに立つお地蔵さん、早くも咲いているヤマハギのピンクの花、展望台の屋根の下にあった本当のアリ地獄……。
 短い山歩きとはいえ、いろいろな発見があった。

火口縁の周遊道

 無事に終わり、ホッとしながらも、息子はもう中2。あと何回、こうして家族で歩けるだろうかとふと思った。
 
山行日:2000年7月29日

行き:山頂第1リフト乗り場付近〜ゲレンデを登る〜火口縁東〜左回りに火口縁を歩く(一部雑木林)〜展望台
帰り:展望台〜アスファルト道(地形図実線路)〜山頂第1リフト乗り場付近
 どこからでも登れそうである。かんなべ湯の森「ゆとろぎ」の東の道を北へ登ると、神鍋山の真南・山頂第1リフト乗り場に着く。ここに車を置いて、ゲレンデをやや左に回り込みながら登っていった。
 すぐに火口縁の東端に着いた。ここから、火口縁に沿った周遊路を左回りに歩いた。火口の北では、周遊路を離れ雑木林の中を歩いた。雑木林の中、あたりで一番の高みと思われる地点に立ったが、そこが神鍋山の最高所である標高469mの地点であるかは確認できなかった。
 火口縁の北西に、ピラミッド型の神鍋神社が建っていた。そこから、ぐるりとまた火口縁を歩いて南の展望台へ。ここで休憩、アリ地獄で遊んだ後、地形図実線路のアスファルトの細い道を下った。

山頂の岩石 第四紀 更新世〜完新世  神鍋火山スコリア
火口縁小径のスコリア
 神鍋火山群は、日高町稲葉川の北に並ぶ7つの火山から成る。
 この中で、神鍋山は大机山やブリ山と同じように、お椀をかぶせたような形をしたスコリア丘である。
 スコリアとは、火山放出物の一種。マグマが空中に飛ばされた際に、急激な圧力の減少によってマグマ中のガスが放出され、多数の気孔が生じる。
 マグマのSiO成分が多い(流紋岩〜安山岩質マグマ)と白っぽい「軽石」になるが、SiO成分が乏しい(玄武岩質マグマ)と黒っぽくなって「スコリア」と呼ばれる。
 スコリアが放出されると、火口の周囲にこれが堆積して円錐丘をつくる。これがスコリア丘である。
 神鍋火山の噴火では、スコリアの放出の他、溶岩が流出した。この神鍋溶岩は、神鍋山から約13km稲葉川に沿って流れ下り、その先端は円山川の左岸まで達している。

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