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頭光嶽(439m)鉄塔下より見る金屋鉱山跡 |
丹波市山南町の岩屋から岩屋川に沿って上っていくと、正面に山頂部が大きく削り取られた山が見えます。
この山は岩屋山(または権現山)と呼ばれ、削り取られたところはろう石鉱山の跡です。この鉱山を金屋鉱山(または岩屋鉱山)といいます。
岩屋川をさらにさかのぼると、紅葉の名勝、石龕寺がありますが、ここから鉱山跡まで登山道が通じています。鉱山は大きく露天掘りされていて、その底でいろいろな色のろう石を採集することができました。
※がけの上から石が崩落してくる可能性がありますので、ろう石の採集にあたっては十分に注意してください。
露天掘りされた鉱山の底は東西に長い広場になっていて、そこには大小の石が転がっています。その中で、ろうそくのろうのような光沢と感触(ろう感)のある石がろう石です。表面が粉っぽかったり、ざらざらした感じの石は、ろう石になり切っていなかったり、風化によって変質してしまった岩石です。
品質の良いろう石ほど軟らかく、つめでも傷がつくので、それがろう石かどうかを見分けるポイントとなります。色は、白や淡い灰色のものが多く、その他、黒・淡ピンク・淡緑のものなどがあります。また、部分的に紫色のこともあります。
金屋鉱山のろう石は、主にカオリナイトと石英から成っています。採集したろう石を、いくつか観察しました。
ろう石(写真1)
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写真1は、全体的にうすみどり色で、そこに黒〜濃い紫色の部分がまだらに入っています。表面が小さくはがれるように割れ、浮き上がったところは白くみえます。ちょうど、せっけんかろうそくを割った面のような感じです。
軟らかく、つめで引っかくと削り取れた粉が浮き上がって白い線を描きます。
光を当ててよく見ると、丸くて小さな(0.5mm程度、最大1mm)粒がところどころに光っています。ルーペで見ると、この粒は無色透明、割れ口は貝殻状、ガラス光沢……などの特徴があり、石英であることが分かります。
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ろう石(写真2) |
ろう石(写真3) |
凝灰岩(一部ろう石)(写真4) |
写真2は、黒色のろう石で、ろう感に富んでいます。石は黒くても、つめで引っかくと白い線が浮かび上がります。
写真3は、紫色の部分をもつろう石です。紫色の原因は分かりません。
写真4は、ろう石化の不十分な凝灰岩です。この中に、ろう石となった部分がレンズ状に含まれています(暗灰色の部分)。レンズの入り方が溶結凝灰岩に似ているので、その原岩の構造を反映しているのかも知れません。
ろう石とは、ろうのような光沢と感触をもつ石をいいます。昔は、駄菓子屋さんで売られていて、子供たちがそれを使って道に落書きをして遊んでいました。
ろう石には、@パイロフィライト(葉ろう石)を主とするもの、Aカオリンを主とするもの、Bセリサイト(絹雲母)を主とするものなどがあります。
このうち、金屋鉱山のろう石はAのカオリンを主とするものにあたり、カオリン質ろう石と呼ばれます。(カオリンは、一つの鉱物ではなく、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、ディッカイトなどの総称です。)
金屋鉱山跡
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鉱山跡では、ろう石を産出する地層を観察することができます。
岩の表面は長年の風化によって茶色に染まっています。多くの割れ目が入っていますが、その中で東に傾斜する一本の断層が目立ちます。断層に沿って粘土化し、その近くは岩石が細かく壊れています。また、露頭全体に、多くのすべり面を観察することができます。
この地層は、いわゆる有馬層群の鴨川層にあたる流紋岩質凝灰岩です。白亜紀後期の火山活動による火砕流が堆積してできた地層ですが、その後の熱水作用によってろう石ができました。
また、このがけの右の方には、一本の黒い岩脈が急傾斜で伸びています。厚さは下の方で約2m、ほぼ直線的にがけの上まで続いています。
岩脈は、マグマが割れ目に貫入し、冷え固まってできたものです。岩石は暗灰色のひん岩で、斜長石と輝石(変質している)の斑晶が含まれています。(現地の説明板には輝緑岩とありますが、これはひん岩です。また、輝緑岩はサヌカイトの一種とありますが、これも間違っています。)
岩脈の伸びと直交する方向に、冷却節理が発達しています。岩脈の岩石は周囲の岩より硬いので、この部分だけ飛び出しているのです。
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ひん岩の岩脈 |
金屋鉱山跡の光景 |
金屋鉱山は、大正時代より稼行され、昭和50年代に廃山となりました。採掘されたろう石は、耐火レンガ、タイル、陶磁器などの原料として利用されました。
鉱山には、火薬庫や休憩所の跡が残されていました。崩れかかった火薬庫に入ってみると、さびた滑車が5つ6つ地面に転がり、壁には「導火線燃焼速度一米四十秒」とやっと読める木の札が掛かっていました。
露天掘りの底には選鉱所の跡が木々にうずもれ、がけの下に残されたブルドーザーやトラックとともに、稼行当時の様子が偲ばれます。
※ このレポートは、2007年10月21日に行われた「兵庫県立人と自然の博物館」のセミナー「秋の石めぐりハイキング」を参考にしています。案内していただいた、先山徹氏・加藤茂氏に感謝いたします。
※ 山歩きについては、「丹波の秋の縦走路、石龕寺から石戸山を経て高見城山へ」を参考にしてください。
■岩石地質■ 白亜紀後期 有馬層群鴨川層
■ 場 所 ■ 丹波市山南町 岩屋山山頂付近 25000図=「柏原」
■ 交 通 ■ 山南町岩屋から石龕寺経由の場合 JR福知山線「船町口」駅、あるいは「久下村」下車
山南町金屋から十三塚経由の場合 JR福知山線「谷川」駅下車
■探訪日時■ 2007年11月17日
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