石の塔~中村行者山②(555m) 神河町 25000図=「粟賀町」
険しいガレ場を経て石の塔から行者山へ map
石の塔
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石の塔は、神河町中村の行者山(東山)に立っている。
土台もふくめると高さ7~8m。数個の岩がだるま落としのだるまのように縦に積み重なっている。人がほとんど足を踏み入れない険しい山の中にありながらも、石の塔は古くから人々の目を惹いてきた。
「神河町歴史文化基本構想 資料編(2017 神河町教育委員会)」に、次のように記されている。
『安政4年(1775)の絵図に記載のある奇岩。溶結凝灰岩で、神崎郡誌には「粟賀村中村字石塚にあり。高さ1丈5尺、人工を加えずして自ら五重塔の形をなしてゐるので有名になった」と紹介されている。』
神崎工業団地のピジョンの東、車止めチェーンの手前に車を止めて歩き始めた。谷川に沿った土の道。ゼニゴケがびっしりと生えている。ところどころにクズの花が散っていた。
対岸の山に大きな岩が見える。車を止めたところで、イノシシの罠を見に来た猟師さんに「どんが岩」だと教えてもらった。
幾度か大きく曲がって進み、道の背たけを越すタケニグサをくぐると日当たりの良いところに出た。砂防堤の下で、ヘビイチゴが赤い実をまだ残していた。
このあたりに、石の塔への登山口があるはず。砂防堤の手前に、ウラジロの途切れたところがあり、そこから道が上っているように見える。ここから、取りつくことにした。
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登山口?
ウラジロのすき間から取りついた |
ガレ石の積み重なる急な斜面。両側から伸びる木の枝や横たわる倒木が行く手を阻んだが、たしかに道の跡らしきものがある。
拾った木の枝で、クモの巣を払いながら登っていく。ホタルガが目の前を飛んだ。オレンジ色の小さなキノコがスギの落ち葉の間から顔を出していた。
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ガレ石と倒木の登路 |
オレンジ色のきのこ |
崩落した岩が急斜面に広がっていた。もう道跡は、まったく分からなくなった。キガンピが、黄色の筒状の花をつけていた。
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崩落した岩の広がるガレ場 |
ガレ石の広がる斜面をふさぐように大きな岩が立っていた。高さ6、7mの岩がいくつか横に並んで壁をつくっている。
岩の下を、トラバースするように左へ進んだ。
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大岩 |
岩壁が切れたところで、道が現れた。丸太階段が敷かれていて、片側に鉄のポールとチェーンで手すりがつけられている。
道は、少し下から延びてきている。上へと向かったが、道はところどころで樹木に没していた。
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チェーンの手すりと丸太階段の道 |
現れては消える道を探しながら登っていくと、頭上に石の塔が立っていた。標高485m、地形図からは分からないが、両側が切れ落ちた絶壁の上であった。
四角く割れた岩が縦に重なっている。小さめの岩が3つ4つ重なって地面に根を下ろし、その上に大きな岩が3つ乗っている。
岩は、白亜紀後期の火砕流でできた溶結火山礫凝灰岩。節理が縦に2方向、横に1方向走り、周囲がその節理によって割れ落ちて、この石の塔が残った。
目にした瞬間、だるま落としが思い浮かんだ。絶妙のバランス。見事な自然の造形が、こんな険しい山の中にあった。
詳しくは、地質岩石を訪ねて「神河町の石の塔」へ
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石の塔を見上げる |
石の塔の少し上に道が現れた。急な斜面に、斜めに延びている。
大きな岩が積み重なっているところがあった。さらに進むと、岩が節理で割れ動き、奥行き2mほどの洞窟をつくっていた。行者山の山頂は、そのすぐ上にあった。
山頂は階段状にならされ、その一番高いとこに石の祠が築かれていた。祠の中には、二体の石の行者像。どちらも、膝を曲げて座り、薄緑色の地衣類におおわれていた。
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行者山山頂 |
祠に安置された二体の石仏 |
山頂は、ネジキやソヨゴ、ツガなどの樹木に囲まれていた。天頂だけが、丸く開けている。そこから、青い空と雄大積雲の真白い頂部が見えた。
行者山から、尾根を南にたどった。尾根には切り開きがあった。コルから登り返したところで、支尾根を西へ下った。地形図の破線路は、見当たらなかった。途中で谷へ下り、砂防堤まで行くと、その下に広い道が現れた。
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ふもとの中村から望む行者山 |
山行日:2022年9月11日
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スタート地点(車止め)~登山口~石の塔~行者山(555m)~スタート地点 map |
2010年、地元の人たちによって石の塔まで登山道がつくられた。そのときつくられた丸太階段やチェーンの手すりは残されているが、道のかなりの部分が植物の繁茂によって消えていた。
石の塔から行者山山頂までは、踏み跡がある。
行者山山頂から南へ延びる尾根には、切り開きがある。下った支尾根の地形図破線路は判然としない。砂防堤から、広い道となる。 |
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山頂の岩石 白亜紀後期 笠形山層 溶結火山礫凝灰岩
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行者山山頂の岩石(横23mm) 溶結火山礫凝灰岩
赤茶色でガラス光沢を示しているのが石英の結晶片 |
行者山には、白亜紀後期の笠形山層が分布している。火砕流によってできた、溶結火山礫凝灰岩である。石英・長石・黒雲母・角閃石の結晶片をふくんでいる。黒雲母と角閃石は変質していることが多い。石英は破片状で、融食していることが肉眼で観察できる。
強く溶結していて硬い。軽石がレンズ状に伸びた溶結構造は、風化面で観察される。また、黒色頁岩などの異質岩片をふくんでいる。
岩石の赤紫色は、笠形山層の溶結火山礫凝灰岩の特徴的な色である。
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