石戸山の「丹波鉄平石」

丹波鉄平石(流紋岩質溶結凝灰岩)
 
 丹波市の石戸山山頂付近には、「丹波鉄平石」の採石跡が広がっています。地面には平たく割れたあずき色の岩石が積み重なり、尾根上の露頭ではその産出状況も見ることができます。

 この岩石は、今からおよそ7000万年前の火砕流によってできた溶結凝灰岩です。石の中には、石英の結晶がキラキラと光り、斜長石やカリ長石の結晶も多く含まれています。

 「丹波鉄平石」は、その品のある色調が好まれ、園路の張り石や建物の床石・壁石として広く利用されています。
 石戸山の近くには、ろう石を採っていた金屋鉱山跡もあり、石を巡るハイキングが楽しめます。

1、石戸山の「丹波鉄平石」

 石戸山の山頂から主尾根を北へ200m〜300mほど歩くと、「丹波鉄平石」の採石跡があります。採石跡の地面には、平らに割れた板状の岩石がいくつも重なっています。ここはハイカーもよく訪れるコースで、誰かがこの石を積み重ねてケルンをつくっていました。
 石の厚さは1cm〜20cmと変化がありますが、多くは2〜3cm程度です。大きさは、採石のときの割り方によってさまざまで、1m以上のものもあります。表面の色はあずき色ですが、ハンマーでパリンと割ると中からベージュ色の新鮮な部分が現れます。

 「鉄平石」というのは石材の名前です。もともとは、長野県の諏訪地方・佐久地方に産出する鮮新世の板状節理の発達した両輝石安山岩をいいます。鉄のように硬く平らな板石というところから、「鉄平石」と名づけられました。

丹波鉄平石の採石跡 丹波鉄平石の露頭
板状節理が発達している
2、丹波鉄平石とはどんな石?

丹波鉄平石の表面
 では、「丹波鉄平石」は、どのような岩石でしょう。岩石を手に取って観察してみましょう。

 板状に割れた石の表面には、ブツブツと小さな粒が飛び出しています。そのため、手でさわってみるとざらざらした感じがします。この飛び出した粒は、石英や斜長石・カリ長石の結晶です。

 石を割って新鮮な面を出すと、もっと詳しくこの石のつくりを観察することができます。
 中には1〜2mm程度の結晶がたくさん含まれています。透明でガラスのような光沢を持つ鉱物が石英、白い鉱物が長石、淡いピンク色の鉱物がカリ長石です。
 変質していることが多いのですが黒雲母の結晶も含まれています。また、これらと同じ大きさほどのシルト岩などの岩石片も含まれています。
 それらの鉱物の結晶や岩石片の間を、ベージュ色の基質が埋めています。その基質の中に、厚さ1mm・長さ10mm程度の細長く伸びたレンズ状の模様が見られることがあります。
 これは、溶結構造と呼ばれているつくりで(顕微鏡下では、ユータキシティック組織という)、このことから「丹波鉄平石」が溶結凝灰岩であることが分かります。

 溶結凝灰岩とは、火山の噴火によって火山灰や火山礫が噴出し、それが火砕流となって流れたあと堆積してできた岩石です。火砕流の堆積物は、内部にこもった熱で融け、軽石は重みでつぶされてレンズ状に伸びて溶結構造をつくります。やがて、この堆積物は冷えて硬くなり、緻密な溶結凝灰岩となります。「丹波鉄平石」は、このときの冷却によって板状節理が発達したのです。

3、丹波鉄平石の産地、石戸山

 「丹波鉄平石」は、今からおよそ7000万年前、白亜紀後期にできた岩石です。地層としては、有馬層群平木溶結凝灰岩上部層にあたります。
 あずき色からベージュ色の色合いは独特の品があり、それが好まれて園路の張り石や建物の床や壁に使われています。「丹波鉄平石」の産地は、石戸山山頂付近以外に丹波市柏原町石戸付近にもあります。

 石戸山へは、丹波市山南町岩屋から石龕寺・金屋鉱山跡を経て行くコース、山南町金屋から十三塚を経て行くコース、「丹波悠遊の森」から高見城山を経て行くコースなどがあります。どのコースも、登山道が整備され気持ちのよい山歩きが楽しめます。

山歩きについては、「丹波の秋の縦走路、石龕寺から石戸山を経て高見城山へ」を参考にしてください。

石戸山(右)
左は岩屋山と金屋鉱山跡

■岩石地質■ 白亜紀後期 有馬層群平木溶結凝灰岩上部層
■ 場 所 ■ 石戸山山頂北(丹波市柏原町・氷上町境界付近)  25000図=「柏原」
■ 交 通 ■ 山南町岩屋から石龕寺経由の場合 JR福知山線「船町口」駅、あるいは「久下村」下車 
          山南町金屋から十三塚経由の場合 JR福知山線「谷川」駅下車
■探訪日時■ 2007年11月17日 

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