氷 ノ 山 (1509.8m) 養父市・若桜町 25000図=「氷ノ山」
秋に染まる氷ノ山
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| 氷ノ山北面 |
『氷ノ山、黄葉のブナ林に立つホードー杉』からの続き
ホードー杉から1171.5m三角点に戻り、尾根の登山道を先に進んだ。ひと登りしたところが、大平頭の南肩で、そこには避難小屋がひとつポツンと建っていた。
避難小屋を過ぎて方向を南に変えると、正面に氷ノ山が姿を現した。氷ノ山を見ながら、しばらくはササの中のなだらかな道を歩く。
天気はめまぐるしく変った。布滝頭から赤倉山へと続く稜線を、雲が西から東へと越えていく。日がかげると、紅葉も山肌に暗く沈み、氷ノ山も色が消えて山影だけになった。
布滝頭に登る急斜面には、ブナの純林が広がっていた。登山道には、ブナの落ち葉が重なっている。褐色の落ち葉の中に、黄色い葉や、まだ緑色の残った葉が混じっていて、それらの色合いが楽しめた。
布滝頭を下ったコルは、東に開けた展望所になっていた。八木川の流れが、この下からほとんど真っ直ぐに東へ向かっていた。
西に陣鉢山の鋭鋒を見ながら、1290mピークに登ると「赤倉頭」の標識が立っていた。ここを超えると、赤倉山の険しい山容が迫ってきた。
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| 布滝頭から赤倉山への稜線 |
陣鉢山 |
少し下ったところに、「天狗岩」の標識が立っていた。ここから、谷のすぐ向こうの赤倉山北面に飛び出した天狗岩がよく見えた。天狗岩は、ほとんど垂直に切れ落ちた大きな露岩。黒い安山岩からできているが、表面が蘚苔類におおわれて白く見えた。
氷ノ山の中腹から山頂部は約250万年前の安山岩溶岩でできている。ここで安山岩のおもしろい産状が見られた。普通、溶岩の露頭の表面はなめらかなのだが、ここはコブのようにぼこぼこと飛び出しているのである。これは、アア溶岩のクリンカーと呼ばれるもの。溶岩が流れるとき、その表面が砕けてできた岩片である。
そのコブだらけの岩を回り込んでみると、そこから東は絶壁になって切れ落ち、その先に氷ノ山が見事な形でそびえていた。山頂からほとんど直線的に急角度で下りる稜線。山体に刻まれた深く険しい谷。そして、山全体が紅葉に染まっていた。
赤倉山の山頂はササにおおわれていた。山頂の東斜面に広がるササの中を歩き、そこから下ると氷ノ山越に達した。
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| クリンカーと氷ノ山 |
氷ノ山 |
ここからは、氷ノ山への一般ルート。道は広く、黒い土は多くの足跡でぬかるんでいた。ブナの木の根道を登っていく。このあたりのブナは、もうほとんど葉を落としていた。道沿いでは、コミネカエデの葉が真っ赤に染まっていた。
1390mピークまで登ると、山頂がすぐ近くに迫ってきた。山頂の下にはコシキ岩が飛び出し、その脇のササ原の中を登山道が九十九折れについていた。そのあたりから、登山者の背で成る鈴の音が、チンチンと聞こえてきた。
最後のコルからコシキ岩の下を抜けて山頂に達した。山頂の避難小屋の前には、先客が何人か弁当などを広げて憩っていた。そのうち、大学生らしい男女のパーティが大きなザックを担いで登ってきた。この避難小屋が今夜の宿のようである。懐かしい思いで、彼らの姿を見ていた。また別のパーティが登ってきて、山頂はますますにぎやかになってきた。
双眼鏡を取り出して、周囲の山々を眺めた。山頂から北に、ここまで歩いてきたコースをたどってみた。赤倉山の非対称の特異な山形の上に、扇ノ山が大きくかぶさっていた。西のずっと遠くに、大山の山影が白く薄く見えた。
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| 氷ノ山山頂 |
赤倉山(手前)と扇ノ山(奥) |
山行日:2008年11月1日