HP「兵庫の山々 山頂の岩石」
2 激しい火山噴火の時代(中生代白亜紀〜新生代古第三紀)
 
 白亜紀後期から古第三紀にかけて、西南日本内帯では広域的な火成活動が起こりました。各地で激しい火山活動による大規模な火砕流が発生し、巨大なカルデラが形成されたのです。また、地下深くではマグマが冷え固まって花こう岩類ができました。兵庫には、この時期にできた火砕岩類や花こう岩類が広く分布しています。
 白亜紀後期には、地下深くで三波川変成岩がつくられました。
 さらに白亜紀後期には、陸地の前に広がる海(前弧海盆)に、アンモナイトや二枚貝などの化石を含む泥岩や砂岩が厚く堆積しました。この地層は中央構造線の北側に沿って四国から紀伊半島にかけて分布し、和泉層群と呼ばれています。兵庫では、淡路島の南部で見られます。
 始新世の終わり頃(3800万年前頃)になると、今の神戸あたりに海が進入して古神戸湖と呼ばれる湖ができました。神戸層群は、このときの湖に堆積した地層です。
 このような出来事が起こったころ日本はまだ、ユーラシア大陸の東の縁にあったのです。
   
(1) 篠山層群の地層が堆積した(白亜紀前期)
丹波竜の化石(丹波市「チータンの館」)
  ジュラ紀後半から白亜紀にかけて、兵庫県は全域にわたって陸化が進みました。丹波地方の篠山付近に分布する篠山層群は、白亜紀前期の地殻変動で生じた沈降域に形成された湖成層です。
 篠山層群の地層からは、2006年に丹波竜の化石が発見されて以来、トロオドン類や角竜類の骨格、ティラノザウルス類やテジリノサウルス類の歯などの恐竜の化石が発見されました。また、日本最古級のほ乳類「ササヤマミロス・カワイイ」や、カエル類、トカゲ類、ワニ類、カメ類などの発見が続いています。
 篠山層群の上部層には、火山岩類が多くはさまれるので、このころから火成作用がさかんになり始めたことがわかります。 この火山活動は、次の西日本内帯の大規模な中性〜酸性火成活動のさきがけとなるものでした。
 
(2) 激しいカルデラ噴火が起こった(白亜紀後期)
各地で激しいカルデラ噴火が起こった
(イラスト:田ア正和)
 白亜紀になると、兵庫県の全域は完全に陸域となり、後期になると火成作用がさらに活発になりました。カルデラの形成をともなう大規模な火山活動と花こう岩類の貫入が広範囲に起こり、それらは古第三紀の始めまで断続的に続いたのです。この火成作用は、日本だけではなく東アジア一円に広く起こりました。
 では、このような大規模な火成活動は、どうして起こったのでしょうか。それは海洋プレートが沈み込むことによる熱の発生と、プレートからの水の供給。そして、温度の高い海嶺が沈み込んだために大量のマグマが発生したと考えられています。
 兵庫中央部は、この時の火山噴出物に広く覆われています。これらの地層は、溶結凝灰岩を主体とする酸性火砕岩類からなっています。このような火山活動にやや遅れて、花こう岩類が貫入しました。花こう岩類としては、六甲花こう岩・播磨花こう岩などがあげられます。
 日本有数の金属鉱山であった生野鉱山や明延鉱山は、この時代の火山活動による熱水によってできた鉱床(熱水鉱脈鉱床)です。
 
(3) 領家帯の変成岩ができた(白亜紀後期)
領家帯 志筑花崗閃緑岩
 淡路島北〜中部にかけて、白亜紀に貫入した花こう岩類が広く分布しています。また、これらの花こう岩類には片麻岩や結晶片岩などの変成岩が取り込まれています。このような花崗岩類や変成岩が分布している地帯が領家帯です。
 領家帯の変成岩は、丹波帯の岩石が高温型の変成作用を受けてできました。
(4) 三波川帯の変成岩ができた(白亜紀後期)
紅簾石片岩(沼島)
 淡路島の南端に沿って中央構造線が走っているので、淡路島の南に浮かぶ沼島は兵庫では唯一、中央構造線の南側に位置しています。
 この沼島は、低温高圧型の変成帯「三波川帯」に属し、島全体が美しい結晶片岩でできています。沼島では、世界でも珍しい同心円構造をした鞘型褶曲(さやがたしゅうきょく)が見られます。
 三波川帯の変成岩のもとの岩石は、ジルコン年代の測定によって白亜紀後期の付加体(四万十帯北帯にあたる)であることがわかりました。それが、9000万年前〜6000万年前に変成作用を受けてできたのが三波川帯の変成岩です。
 
(5) 和泉層群の地層が堆積した(白亜紀後期)
アンモナイト(プラビトセラス)の化石(南あわじ市湊)
 論鶴羽山地を中心とした淡路島南部には、砂岩・泥岩互層を主体とする堆積岩が分布しています。これが、和泉層群であり、アンモナイト・三角貝・イノセラムスなどの化石を多産することでも有名です。
 和泉層群の地層は、白亜紀〜古第三紀に前弧海盆に堆積してできた地層だと考えられています。
 
(6) 神戸層群の地層が堆積した(古第三紀始新世〜漸新世)
 
神戸層群の地層が堆積した(イラスト:田ア正和)
 三田盆地、神戸市の西部、淡路島の北部には、神戸層群とよばれる地層が分布しています。これは、中期始新世末〜前期漸新世(3800万年〜3100万年前)、日本がまだ大陸の一部だった頃にできた地層です。
 神戸層群の中でもっとも古い多井畑層(神戸市西部)や岩屋層(淡路北部)は、海で堆積した地層で、貝の化石を産出します。その上位の白川層などの地層は、湖や河川で砂や火山灰などを厚く堆積した地層で、保存の良い植物化石が多く産出することで有名です。このときの湖を古神戸湖と呼んでいます。
 

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