ビシャゴ岩②(295m)    赤穂市     25000図=「日生」


ビシャゴ岩の秋、草花と展望を楽しむ
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福浦より望むビシャゴ岩

 ビシャゴ岩のふもとの町から葉書が届いた。
 「今年はミミカキグサがたくさん咲いて、今はリンドウやセンブリも見頃。また、ぜひお越しください。」と。
 
 昨年の夏以来のビシャゴ岩。秋は初めてだった。

 駐在所横の駐車場に車を止めて歩き出す。見上げると、山頂直下に堂々と立つビシャゴ岩。周辺の樹木が切られて、はっきりと大きく見えるようになった。

 登山口から、斜めにゆるく登っていく。道にも道の上の斜面にも角張った岩がたくさん落ちている。道の横を見ると、地中にもこれらの岩が積み重なっている。上から崩れ落ちた岩が積み重なって、山すそのゆるやかな地形がつくられた。
 クリの実がたくさん落ちていた。

 のり面の岩が花崗岩ばかりになった。花崗岩の周りは、花崗岩が風化してできた真砂。ビシャゴ岩の山すそは、この花崗岩からできている。

 花崗岩のコアストーン

 愛宕神社からの道と合流し、左へ大きく曲がる。道へせり出すウラジロの葉の間を進んだ。
 山の紅葉が進んでいた。
 一本の木が、オレンジ色から黄色に染まった葉を陽光に透かしていた。その木に近づくと、カキノキだった。風が吹くと、葉がざわざわと音を立ててそよぎ、枝から舞い落ちた。
 シジュウカラが近くで鳴いていた。

カキノキ

 四合目の標識の下には「シシの湯」。登山者がふえて、イノシシもおちおち湯につかれないのか、穴の土は乾いていた。土は、真砂が細かくなった砂や泥。鉄分が酸化して赤い。
 山側の斜面は、上から崩落した岩が重なっている。その中でひときわ大きいのが「シシ岩」。
 このあたりから、地質は花崗岩からホルンフェルスに変わった。
 このホルンフェルスは、もともと溶結凝灰岩だったものが花崗岩の貫入によって熱変成を受けてできた。

 シシの湯  シシ岩

 道の両側から迫るウラジロの間を登っていく。
 ヤブの中で、ウグイスが鳴いていた。ジョウビタキが、目の前の木の枝に止まった。
 大きく曲がったところに、「マムシ注意」の看板。看板は木でできていて蛇の形をしている。「意」の字が横向きで可愛い。

ウラジロの道  マムシ注意

 そこから少し登ると、地形がゆるやかになった。登山道の周辺には、明るい湿地が広がっていた。
 リンドウが咲いている。サワヒヨドリやワレモコウは枯れかけていたが、なんとか花を残しているものがあった。
 スイランの黄色い花は、大きくよく目立った。

 リンドウ  サワヒヨドリ
   
ワレモコウ  スイラン 

 五合目が湿地の中心。「ミミカキグサ自生地」の標識が立っている。
 ミミカキグサは、湿地のあちこちにかたまって咲いていた。紫色のホザキノミミカキグサが交じっている。
 白い星型の頭花はシロイヌノヒゲ。イヌノハナヒゲは、小穂を一つ持ち帰って果実を観察した。
 アリノトウグサの葉が鮮やかに赤く染まっていた。
 
 湿地にはヒメアカネが飛び、岩や草花にときどき止まった。

 ミミカキグサ(黄)とホザキノミミカキグサ(紫) イヌノハナヒゲ 
シロイヌノヒゲ アリノトウグサ 

 湿地を過ぎるとコシダの道が続いた。
 六合目の手前から道が急になった。ここから、ずっと木の階段がつけられていた。
 この階段は、よく見る丸太階段ではなく、まわりのウバメガシやヒサカキの細い幹や枝でつくられている。

木の階段

 七合目には、腰かけるのにちょうどいい岩が一つ。
 眼下に福浦の街並みが広がり、その向こうに赤穂の市街地と播磨灘が見えた。
 
 ウバメガシがふえてきた。細木の階段が続く。白いロープが張られていて、下山が楽そう。

 八合目周辺にも、秋の花が咲いていた。
 ヤマハギがピンクの花をつけている。
 センブリは、少し前からちらほら見られた。
 アキノキリンソウやコウヤボウキが咲いていた。

ヤマハギ センブリ
アキノキリンソウ コウヤボウキ

 九合目の分岐を左にとって、ゆるく下るとビシャゴ岩の下に出た。
 岩は大きく二段になっていて、上の方がたてに三つに分かれて飛び出している。
 溶結凝灰岩の節理によってたてやよこに大きく割れ、このような姿となった。割れ落ちた部分は、岩の真下や下の斜面に崩落した。

 ビシャゴ岩を見上げる

 岩の左手を回り込むと、ビシャゴ岩の上に出た。そこには、今日も爽快な眺めが広がっていた。
 青い海と青い空。
 海と空の間は白くかすみ、家島の島々を浮かび上がらせている。空には、輪郭のぼやけた積雲が列をつくってゆっくりと動いていた。
 岩のすき間に根を張ったウバメガシが、いくつもの実を岩の上に落としていた。

ビシャゴ岩から播磨灘を見る

 東には播磨の山並みが低く連なっていた。
 遠くに大蔵山。天下台山から野瀬奥山、雄鷹台山と続く稜線。
 その雄鷹台山(310.6m)の前に、同名の雄鷹台山(赤穂 253m)がピタリと重なっているのがおもしろかった。

ビシャゴ岩から東の展望

 ビシャゴ岩の北の分岐から、山頂(311m)に足を伸ばした。木々の中の広い山頂で、GPSでやっと山頂付近にいることがわかった。

 分岐に戻って、毘沙門山に向かった。ウバメガシやヒサカキ、ソヨゴなどの木々が刈られて道ができている。毘沙門山の山頂も、この一年できれいに整備された。
 南方向が切り開かれ、海がよく見えた。新しい山頂プレートに、木を組み上げてつくられたベンチ。横に渡された木には、赤のペンキで「♡ベンチ」と書かれていた。

毘沙門山山頂

 愛宕神社を通るコースで下山した。

 細い木でつくられた階段、「〇合目」の標識、「赤穂コールドロン」や「ミキカキグサ自生地」の標示、「マムシ注意」や「転びやすい所 気をつけて!」の看板、岩の周りや山頂の切り開きなど、山は登山者のためにていねいに整備されていた。登山道のどこにいても、整備した人たちの地元愛や仲間愛が感じられた。

 今回は、湿地やその周辺でたくさんの植物が見られた。小さな湿地であるが、登山道が湿地の中を通っている。
 ここでは、登山道を歩くだけで湿原性の植物を見ることができる。このようなところは、あまり例がない。ビシャゴ岩は、展望とともに、地質や植物、自然環境を楽しめる貴重な山である。

山行日:2022年11月4日

スタート地点~ビシャゴ岩~山頂(311m)~毘沙門山(312.8m)~愛宕神社~ゴール地点 map
 福浦駐在所の右に駐車場がある。
 登山道は、道の整備や標識など、地元の人たちによってていねいにつくられている。

山頂の岩石 白亜紀後期 赤穂層 溶結凝灰岩
 ビシャゴ岩の岩石や地質については、「ビシャゴ岩① 播磨灘の展望広がる山上の岩」を参考にして下さい。

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